第18話:戦闘科②
(一体、なんなんだ……この状況は)
スズシロに抱えられていた私は、意識を失って見知らぬ施設の中へと運ばれていた。
(……まさか、ここは……敵国の……)
スズシロはかなりの実力者だった。そして、スズシロの上司であろうあの男……ありえないくらいの強者だ。私は、人質にされたのだろうか?私のせいで王国に何かあっては……。
現に私は剣を奪われたようだ。白い良く分からない服も着せられている。
しかも、腕に見たこともない管のようなものを刺されていた。
私は管のようなものを引きちぎった。
(……見たところ、ただの寝室のようだが……)
スズシロたちは一体どこの国の者だ?
この部屋には窓がないから、外がどうなっているかも確認できない。
(…………少し、探ってみるか『探知』)
私は騎士だが、魔法が全く使えないわけではない。敵を見つけるための魔法は得意だ。
(なん……だと……?)
私は、内心『探知』をしたことを後悔しそうになった。それくらい『探知』の結果が残酷なものであったためだ。
(『探知』で測定できるレベルの限界値を超えている者が……少なくとも……30人……だと)
私の『探知』で測定できるのはレベル100までだが、通常これで足りないということはない。他国の最高戦力を相手にしたときなら話は別だが。
(本拠地……か)
どうやら、敵国の軍の本拠地であることは疑いようがない。まずいのは、未だどの国の軍なのか全くわからない点だが……。
(………?)
私は監禁されている部屋のドアに手を当てた。
すると、驚くことに鍵すらかかっていなかった。
特に力を込めずとも、ドアはまるで家のドアと同じものを使っているかのように開いた。
(ここまで舐め腐っているというのか……?いや、まて……まさか、誘い出しているのか?)
こちらから手を出すのを待っている?
……だとすれば迂闊なことはできない。
『探知』の結果だとドア付近に人は一人しかいない。私は気配を消してそっとドアを開ける。
(……よし)
幸いにも、ドアの前にいた(恐らく監視者であろう)女は大した強さではない。気配を消した私には気付かずにただ立ちつくしていた。
(『探知』で強者であることが確認できた30人のうち……25人くらいは同じ場所にいる……?戦力を1箇所に集めているのか……)
私は少しでも情報を得るべく、その場所へと近づいていく。距離は思ったよりも遠くない。
いやそもそも、この建物がかなり特殊な構造をしているというか……敵の本拠地にしてはあまり広くはない。
そのまま近づいていくと、さらに不可解な光景が広がっていた。壁に囲まれ、1箇所のみのドアが設置された謎の部屋があったのだ。
しかも、建物の形状的に、恐らくその部屋はこの建物のかなりの面積を占めている。
(……よりにもよって、ここか)
どうやらこの謎の部屋に、例の25人はいるらしい。 まるで迎え撃とうとしているようじゃないか。
「………」
私は集中力を高めた。
剣がなくとも、私は問題なく戦える。
「──あれ?どーしたの?」
「……っ!?」
「患者さんだよね?もしかして迷子かな。お姉さんに頼ってくれても良いよ」
「……」
「なんでそんな目で睨んでるのかな?別に君に危害を加えるつもりはないんだけどー」
最悪だ。
26人目だ。
「私は石山病院戦闘科長の
「……っぁ」
思わず変な息が漏れた。目の前にいる女性は、身長は160cmくらいで特別大きいわけではないのだが、存在感は先ほど確認した25人よりも遥かに大きい。戦場を何度も経験した戦士の持つ覚悟のようなものをひしひしと感じる。
それに、彼女の言葉はほとんど理解できなかったが、『戦闘』という単語は聞き取れた。危害を加える気はない、と言われても信用などできるはずもない。
「……あ!もしかして君、
「っ!」
「もしかしてここにある程度強い人が集まってるから来ちゃったのかな?騎士様は」
私はすぐに戦うことができるよう、構えを取った。
「
「……タビラコと言ったな、珍しい名だが、貴様、どこの国の者だ!」
「は?国?」
「とぼけるな!騎士団長である私を攫い、母国に何か要求しようとしているのではないか?それとも単に戦力を削ぎたいのかは知らないが、敵国に捕まるということはそういうことではないか!」
「何言ってるの?」
「名乗れ!貴様はどこの国の者だ!」
「うわぁ、めんどくさいわねー。どうしようかしら」
相変わらずこの女はとぼけたように会話を流そうとしている。卑劣だ。
「……言わないというのなら、ここまでくれば戦う他ない!」
私は剣はなくとも自らの拳で戦うことを決心し、渾身の一撃を放った。恐らくこの一撃だけでは仕留められないだろうが、一気にこちら側の………
「あら……?何、お姉さんと戦いたいの?」
「……っ!?そんな馬鹿な……この拳を、受け止めた?」
目の前の女は、強いのだろうが体は細く、とても近接戦闘を得意とするタイプには見えない。
だがこの女は全く力など必要ないかのように私の拳をその細い左手で受け止めた。
「あらら〜、もしかして君、自分より強い人間と戦ったことないのかな〜」
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