第2話
「……」
仕事漬けになってしまっていた自覚はある。それでもミリシアの仕事は国にとってもハッフル家にとってもかなり有益になる「研究」だ。
だからこそやりがいも感じていた。
それでも……。
「相手を気にかけている余裕がない人間は……婚約者に捨てられる……って事か」
ただ、パトリックだってそんな事は分かった上で婚約を結んでいるはずだ。それとも彼の性格が故に本人の望まぬ婚約になってしまった……という事になるのだろうか。
仮にそうだったとしたら彼には申し訳ない事をした……とミリシアは思っていた。あの「婚約破棄」を言われた「デート」終わりの馬車に乗っていたこの時までは――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
いつもであれば「デート」が終わってすぐに職場の寮に戻っているところなのだが、実は先程の「デート」でパトリックから「互いの両親に説明されしてあるか」について聞けなかった。
彼は一通り自分の主張を言い終えるとすぐにミリシアを帰したのである。
本来であれば爵位が上のミリシアにそんな態度を取れば両家の関係に亀裂が入りかねない行動だった為、ミリシアは驚きつつもそれに従わざる負えなかった。
「本当に……久しぶりね」
馬車を降り実家に入ると、そこには今年魔法学園に入学したばかりの妹アリアがいた。
「あら、お姉さま。お久しぶりですね」
「……ええ。あなたも元気そうね」
「おかげさまで。仕事ばかりで身なりに気を掛ける暇もないお姉さまとは違ってね」
そう言いながらアリアは自慢する様に自身の髪をかきあげる。
「……」
正直ミリシアとしては「学生の本文は勉強だ」と言いたいところではあるものの、ここで下手に言い返せば母親が出てきて余計に面倒になる。
そもそも、アリアがこうした言動なのは昔からで小さい頃から「読書の虫」や「あんな地味なのが自分の姉だなんて信じられない」と陰で言うなど下に見ていた。
しかし、こうなってしまった原因は完全に両親せいで、ずっと妹に甘かったからである。
ただ、何も理由がなかった……という訳ではない。
彼女は小さい頃、流行り病にかかってしまいなかなか自室から出る事が出来なかった……という時期があったのだ。
元々両親の過保護さには気が付いていたミリシアだったが、この出来事からさらに拍車がかかった様に思う。
しかし、現在の彼女はそんな事があった様には思えない程元気そのもので、今日も自慢げにそのブロンドの髪をなびかせて冷ややかな視線をミリシアに向けている。
そして、彼女の命を救ったとも言えるその当時流行っていた病を治す治療薬を作ったとされるのがミリシアが働く職場の上司でもある。
「おお、なかなか珍しい顔があるではないか」
家の玄関の目の前にある階段から現れたふくよかな体の男性。これがミリシアの父親なのだが……実の娘に対して「珍しい顔」というのはどうなのだろうか。
でも、それだけ実家に顔を出していなかったのだから間違いないと言えばそうなのかも知れない。
「……お久しぶりです。お父様」
「相変わらず可愛げのかけらもない子」
そんな父親と共に現れ口元を扇で隠しつつも毒を吐いているのが母親だ。
しかし、ミリシアの実の母親ではなくアリアの母親で、ミリシアにとっては「義理の」母親だった。
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