第36話 ドラゴン姉妹

 漸く続いたグッズへのイラスト入れが終わり、ドラゴン姉妹へ商品の引き渡しをする日が来た。

 なんとドラゴン姉妹達自ら、かずさの住む国へと来てくれたのだ。



「はわぁ、ありがとうございます! こちらまで来て頂き、ありがとうございます。今回はご依頼頂き感謝します!」

「僕もです。とても楽しい仕事でした。ありがとうございました」


「まぁ、良い子達だこと。ミナさん、報酬は多めにお渡しして頂戴」

「はい、お姉様。ご指示通りに」



 今日はイラスト部門の社長かずさ(カルーラ)と、商品作成部門の社長レノア(水樹)の2人が、ドンマイン家で行われる引き渡しの為待機していた。


 執務室に運ばれた商品の確認の後、支払いにも色をつけてくれると言ってくれるドラゴン姉妹に、もう本当に感謝が止まらない。もう大好き。




 今日のお二人は胸の肌色部分が多めに強調され、スカートの裾にもスリットが大胆に入っている。

 シンプルだが銀糸の刺繍で薔薇が全面に施されている、繊細な細工のドレスを身に付けていたのだ。


 イメお姉さまが黒のドレス。

 ハーフアップに上げられた金の髪には、砕いたカラフルな魔石が散りばめられ、金のミニティアラが輝いていた。

 黒の網タイツを身に付け、10cmヒールは金色だ。

 指輪には大きなルビーがアクセントになって、黒いドレスを際立たせる。

 ルビーは勝利を呼ぶ石と呼ばれ、妙に納得した。


 ミナさんは銀のドレス。

 仕様はイメお姉さまと同じで、刺繍は水色だ。

 ハーフアップの髪は同様で、髪に魔石はない。

 今日の髪色は紅く染められ、銀のティアラが輝く。

 銀の網タイツを纏われ、銀のヒールはイメお姉さまより低い。

 指輪はサファイアで、石の持つ意味は誠実だ。



 化粧担当はキャラウェイさんで、お二人の今日のテーマは女王様メイクらしい。

 荘厳で神秘的なイメージだ。



 魔石はドラゴン姉妹の国では豊富にあり、さらに特権により彼女らは使い放題らしい。

 そしてミナさんは魔力の多いお姉様には絶対服従で(勿論敬われてもいて)、小間使いのように甲斐甲斐しく動かれている。


 キャラウェイさんも協力し、願いを即座に叶え続けていた。

 ミナさんが魔石を髪に散らさないのは、動き回ることで落ちてしまう為なんだとか。



 まあそんな話が終わり、次は日本にいる本物のドンマイン一家の話に移る。


 父であるヴォクシアの秋男と、母であるルラミーである華も加わり、食事も兼ねて執事喫茶の個室への移動する。


 本物のドンマイン一家の話になると名称が混ざり合うので、ドラゴン姉妹には二宮一家は日本名で呼んで貰うことになった。


 姉妹はもう、俺達が転移者だと知っているからだ。


 本来ドラゴン姉妹は、(面倒くさいので)人間の転生や転移には関わらないらしいのだが、いろんな縁が出来たことで便宜を図ってくれるらしい。


 以前に話していたのが、向こうの家族と話したり、元の世界に戻ることだった。

 その時は水樹だけだったが、今日は家族で面談となる。



「改めてご挨拶します。二宮秋男です。大変なことをお願いして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」


「妻の華です。よろしくお願いいたします」



 ドラゴン姉妹の正体が、ドラゴンだと知る秋男と華は、少し、いやかなり緊張して頭を下げた。

 伝説のドラゴンはやはり怖いからだ。

 何度も会っているかずさと水樹は、さすがにもう慣れてしまっていたが。



「頭を上げてくださいな、二宮様。わたくし達もお世話になっております。出来ることはして差し上げましてよ」


 イメお姉さまが言うと、ミナさんが言葉を付け足す。


「二宮様。いつもご子息様、息女様にはお世話になっております。

 私達はお二人に大変好感を持っていますので、出来るだけ協力したいと思っているのです。

 出来ることに制限はありますが、是非ご希望をお聞かせくださいね」



 威圧感漂うイメお姉さまから、優しく微笑むミナさんの声がけで一気に緊張から緩和すると、秋男と華は脱力した。


「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

「無理は言いませんので、よろしくお願いします」


 天の助けのように、ミナさんへ眼差しを向ける2人の反応は普通だと思う。

 でもミナさんも、バリバリに現役の強ドラゴンだけどね。



 緊張の中で相談し、近いうちに一度向こうの家族に話しかけてみることになった。



 その後。

 みんなで移動してきた場所は、華の経営する執事カフェだ。

 ドラゴン姉妹の目的の一つ。

 この国で、珍しい(地球の)料理を食べることだった。


 転生者は転移者は他にもいるのだろうけど、リンダの資金力とシルバー達の有能過ぎる主動力で、日本の味を作りまくっている者は少ないようだ。


 幸いにして執事喫茶とレストランは併設しているので、食べたいものを何でも注文できる。


 そしてここには華が集めた、美少女と美少年と美青年しかいない。

 ドラゴン姉妹の希望は、美少年と美青年の給仕だ。


「わぁ、すごく美味しそうですね。見たこともない料理が多いです」

「なんか甘辛いけど、旨いな。なにこの蟹! 国のやつと味が違う。濃厚だな、ミナさん」


「そうですね、キャラウェイさん。どれも美味しそうで目移りします」

「悩んでないでたくさん食べろよ、ミナさん。太ったらドラゴンになって少し飛べば、すぐにカロリーなんて消費するだろ?」


「ええ、そうね。じゃあたくさんご馳走になろうっと!」



「本当にね。貴方なかなかのグッドルッキングガイね。仕事後に予定なんておありかしら?」

「え、僕ですか? ええっと、ないですけど」


「あらっ、良かったわ。ふふふっ。可愛いこと♡」

「お、お姉様、お戯れを。でもなんかもう、めちゃくちゃにされたい、です」



 イメお姉さまのご依頼で、本日は中華料理メインである。

 イメお姉さまがグッドルッキングガイを選別している間に、ミナさんとキャラウェイはもくもくと食していた。


 執事の教育担当の華も、今日ばかりは注意が出来ない。

(ま、まあ、自由恋愛ということで。今日は目を瞑るわ)


 そう考えて美少年と美青年に頷き、貴方達が良いなら好きになさいと、(無声で)口を動かし伝えている。

(はじめて会うのだし、きっとお茶くらいでしょ?)


 なんて甘い考えでいたが、どうなるのかは分かったものではない。

 けれど美少年と美青年は、後に「天国でした♡♡♡」と、具体的ではなくあくまで抽象的に話すので、悪い思いはしていないらしい。

 そう思いたい。


 そしてここに暫く留まるドラゴン姉妹達には、後日またドンマイン家(二宮家族のところ)へ訪れて貰い、日本のドンマイン一家(二宮家宅)に呼びかけをすることになった。



 蟹を口一杯に食むミナさんは、とても幸せそうにしていたので、二宮一家もほんわかしていた。


(イメお姉さまも素敵だけど、やっぱり私はミナさん派だわ)


 それを見ていたキャラウェイは苦笑する。

(良かったな、ミナさん。ゆっくり味わいなよ)



 今回カザナミはお休みである。

 新ゲームが発売され、攻略中だそう。

 キャラウェイが戻ったら、早速対戦になるだろう。

(いつもキャラウェイの勝率が高いゲーム合戦。マ◯オシリーズを先に練習中のカザナミ、今回は勝てるかも?)


 元ドラゴンのカザナミは、ゲーム歴が浅いのでまだまだ修行中なのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る