017 白い肉の正体を知った⋯。

 ダンジョンへと入り、ワープゲートで直接移動して来れるようにすると。レアドロップ率増加の分のスキルポイントをMPとMP回復速度チートに振り分ける。


 MPに振っているポイントが、1のままだと街まで帰れないかも知れないからな。


 今日は1階の魔物を確認したら村長に話をしに行き。家を借りられるか確認しよう。


 ダンジョン内は、街の方と見た目は変わらず。違いと言えば汗臭くない事くらいだろうか。


 森の中にあるからか、少し腐葉土の臭いがするくらいで。なかなか悪くない。


 通路を歩いていると、森の香りが一際強くなっている方向があり。そちらに向かってみるとカチカチと固い音が聞こえて来た。


 通路の先に現れたのは、どでかい幼虫だった。


 蝶や蛾の幼虫である、緑色の芋虫や茶色い毛虫ではなく。カブトムシやクワガタの白い幼虫だ。


 頭をもたげると、自分の腰ほどの高さがあり。成虫になったらどの様な姿になるのか。見たくもあり、怖くもある。


 そもそも魔物がさなぎになるのか知らないけど。甲虫ならきっと格好良くなるだろう。


 頭部には鋭い2本の牙が生えていて、クワガタのハサミのように横に開閉しながら。こちらを見ていた。


 牙を開閉するたびにカチカチと音が鳴っている。さっきから聞こえていた音の正体はこれか。


 そして鑑定結果はグレイブガードキーパー Lv1。ミルクミートの正体が判明してしまった。グレイブ要素はどこだろう?実は地名とか?


「虫かぁ。美味しいとは聞くけどなぁ。いや、確かに美味しかったけどさ」


 思わず口から愚痴が飛び出してきた。白い肉な時点で動物ではない可能性はあったけど、異世界だからそういう生き物もいるのだろうと思っていた。サイズも大きかったし。


 幼虫らしくゆっくりとこちらへ向かって来るグレイブガードキーパー。こちらから近づいてやると、頭を振り回して噛み付いてきた。


 これ、下手をしなくても噛まれたら腕に穴が空くな?穴が空いた場合もヒールジェルで治るんだろうか?なんとなくダメな気がするな。


 風水師の男も言っていたし、噛まれないように気を付けないと。というかもう一つ上の回復薬も用意しておくべきか。


 噛まれたくないので行動が慎重になり。どちらかが狙われたら後ろから攻撃して何とか倒した。


 頭は常に動いているし、意外と戦いにくいな。正面からだと1人じゃ殴れなかったかも知れない。


 噛み付いて来たところを攻撃するのがいいんだろうけど。大きく避けているのでナイフだと届かない。歩くのは遅いのに、頭は速いんだよなこいつ。


 ドロップは何も無かったけど、今日は様子見だ。まぁ良しとしておいてやろう。


 ワープゲートを使い、マルミット村へと向かう。


 近いのはナデール村だけど、マルミットの方が発展しているから多少は便利なのかと思って、まずはこちらへ来てみた。


 道を歩いていた村人に村長の家を聞き、案内してもらった。


 方言がきつくて聞き取れない、なんてことも無く。意外と歓迎している様子なので閉鎖的でも無いようだ。


「村長ーお客さんだぁー」


 扉をドンドンと大声で村人が呼び出すと。ほどなくして中から声が返ってきた。


「そんなに叩かんでも聞こえるわ!壊れたらどうする!」


「もう壊れとるようなもんじゃろ。それより冒険者の方が来てくだすったぞ、相手せぇ」


 村人はそれだけ言ってさっさと帰って行った。


「騒がしくてすまんな。私がこの村の村長をしているマルミットだ」


「デイジーだ、よろしく頼む」


「冒険者だと聞いたが、居住の件か?」


「そうだ、家を借りたいのだが、いくらくらい必要なんだ?」


 それを聞いた村長は残念そうに肩を落とした。


「実は先日、新しく冒険者が住むようになったばかりでな。今は空いている家が無いのだ。

 新婚夫婦用の狭い家ならあるが、それではパーティーでは狭すぎるだろう。

 増築はできるが、かかる期間は新しく建てるのとそう変わらんから。貸せるようになるのは1月後になる」


「そうなのかタイミングが悪いな。一応借りる場合の費用だけ聞いてもいいか?ナデール村とこちらのどちらで借りるか参考にしたい」


「おお、ナデールのダンジョンに潜ってくれるのか?あちらは村人も入れない距離にあるから、魔物がこちらまで流れて来ないか心配だったのだ。

 うちの村は年間金貨3枚で貸しているが、あちらのダンジョンに潜ってくれるというのなら、多少はこちらも融通しよう。まぁ野菜を安く渡すくらいしかできんがな!」


 宿が1日で銀貨約1枚。金貨3枚なら300日分だけど、家を借りれば5人は住めるだろうから大分安いな。宿は食事の用意や掃除もしてくれるとはいえ、リレッタと2人だけでも生活費がかなり削れる。


「ありがとう、あちらで確認してみて条件が合わなければ、一月後にでも世話になるかも知れん。その時はよろしく頼む」


「冒険者が増えるのはいつでも歓迎だ。迷宮の討伐頑張ってくれ」


 村長と別れて柱の所へ戻る途中。リレッタからこよみについて聞く。


 1月は30日で変わらず。1季節は90日と休日1日。1年は春夏秋冬の4季節を合わせて360日と休日4日の364日らしい。たまにうるう年があるのも変わらないので、この世界でも占星学があるようだ。


 大きな違いとしては1週間が火水風光闇の5日間で、1日が10こくなことか。まぁ時計など無いし、十二支で表す時刻だと考えれば大して困りはしないだろう。


 ナデール村へと飛んで、また村人に案内してもらうと。再びドンドンと扉を叩き、大声で呼ぶ姿を見ることになった。


 単に建付けが悪くて音が響くだけなのか、村人の鉄板ネタなのか分からないけど。怒鳴って村長が出てくるところまで一緒だったので、お約束のネタなのかも知れない。


「ようこそいらっしゃいました。それで御用とお聞きしましたが?」


「ああ、この村の近くにあるダンジョンに行きたいので、家を借りたいんだが空いているだろうか?」


「なんと!?あのダンジョンへ行ってくださるのですか?家なら空いております!今すぐ⋯は無理ですが、掃除をして明日の午後には使えるようにいたします!」


 急に前のめりになってテンションが上がった村長に、家の中へと案内されて椅子へと座る。


「それで家を借りる費用なのだが、できれば月々で支払いたい」


 あちらで金貨3枚と言われて気がついたのだけど、今の資金だと1年分を一度には支払えないんだよな。てっきり1月ごとだと思って油断していた。


「ええ、ええ、かまいませんとも。本来ならば年に金貨2枚と言いたいところなのですが。冒険者の方が全く来ないので家も開きっぱなしですし、月に銀貨10枚、年に120枚でいかがですかな?」


 あちらの村の半額以下か。外見で見た感じ家の造りは大して変わらないようだし、こちらで借りることにしよう。


「安いな、ではその額で頼む」


 銀貨を取り出して村長へ渡すと、ホクホク顔で受け取った。


「ところで、パーティーのメンバーはそちらの女性だけですかな?」


「そうだな。すぐに増えると思うが今は2人だけだ」


「であれば!人手は足りませんでしょうし、掃除や洗濯を行う家政婦は必要ありませんかな?

 村は今女余りでして、成人しても結婚できない女が何人かおります。その者を雇いませんか?

 なんなら手を出していただいても構いませんし、子ができても嫁にもらっていただければ問題ありません。

 費用も5日で銀貨3枚も渡せば十分でしょう。いかがですか?」


 突然女を売り込まれたけど、安すぎじゃないか?1日銅貨60枚で性行為ありの女性が雇えるの?


「確かに掃除や洗濯を任せられれば楽になるが、さすがに安すぎないか?」


「いえいえ、その者達も手に職があるわけでもなく、畑が余っているわけでもありませんから。結婚できなければ早晩、奴隷落ちするしかないのです。

 銀貨3枚もらえれば、無駄遣いをしなければ税も払えて暮らしていけます。

 移動スキルを使えるような、優秀な冒険者の方と結婚できればなおさらですな。ですのでぜひ、お手つきにしていただいて、ご寵愛ちょうあいいただければ」


 自分としても成人したばかりの若い女性とやれるなら願ってもないし、やる事をやったら毎日洗う事になるシーツを任せられるなら、とても楽になる。


 服もできれば洗濯板や洗剤を使って洗いたかったけど。すすいだりなんだりと色々大変だから、湯につけて襟元えりもとこするくらいで我慢していたし。


 リレッタは連れ回すからそんなに時間が取れないし。新しく奴隷を買っても、同じようにダンジョンに連れていくだろうから家事は任せられないしな。


 何年も雇うなら高くつくだろうけど、今は奴隷を買う資金が無いのだから、比べるべくも無い。


「そんなに安く雇えるのなら、こちらも助かります。ぜひ雇わせていただきたい」


「それはよかった!では、よろしければ今日の夕食に招待させて頂けませんか?その時に数人連れて参りますので、その中からお選びください」


 ありがたく夕食の招待を受け。村長の家をおいとまさせてもらう。夕食まではまだ少し時間がある、ダンジョンにでも行って時間を潰すことにしよう。


 ああ、先に手土産を買うか。食事に招待されて手ぶらでは行けないだろう。持って行く物に悩むのも面倒なので酒を買って行こう。


 ギルドで道を聞いて酒屋に行くと、ワイン瓶2本分くらいの小樽があったので、これを購入してアイテムボックスに入れておく。自分の好みなので白ワインだ。


 自分の分も買ったので食事の時にでも飲むとしよう。毎回果実水を買ってくるのも面倒だったし、これからは樽で買って、自宅に保管しておけるから楽でいい。


 まさか酒好きでもない自分が、樽で買って自宅に置く日が来るとは思ってもいなかったな。

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