あうせうアキ

叢上友哉

第1話 僕

 木から落ちた猿のように生きてきた。


 そんな僕が、アパートの狭い一室のキッチンでスパゲティを茹でていたとき、一本の電話がかかってきた。


『電話』


 いつの間にか住み着いていた犬のヴァレリーがそう云った。いやらしいほどのはにかみ屋みたいな声で云ったんだ。


 僕はうんざりして、まだ少し固そうなスパゲティを数本箸で掬い、ヴァレリーに放った。


 また次の日、ヴァレリーが死んだ。



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