第17話 時間越えの反撃 

 第二試合の相手は、四天王の中でも異能最適化率トップと称される時間停止能力者・神崎。

 「三十秒だけ、相手の時間を止める」

  その能力の噂は有名で、誰も正面から勝ったことがなかった。

  試合開始のブザーと同時に、拓馬は緊張で手のひらに汗を感じた。

 「拓馬……時間止められたら、どうしようもなくない?」哲が小声で言う。

  祥子は冷静に応じる。「止まる“前”に勝機を作るしかないわ」

  寛人は笑みを浮かべた。「だったら短期決戦しかないってことだな」

  神崎は無言のまま能力を発動した。視界が一瞬にして灰色に変わり、音も消える。

 (これが……時間停止……?)

  次の瞬間、拓馬の視界に蒼光が広がった。

 ――再演(リフレイン)。

  時間が巻き戻り、停止する直前の“通常の流れ”が見えた。

  拓馬はその隙を利用し、時間停止が解除された瞬間に攻撃を叩き込む準備を整える。

 「今だ!」

  蒼光の指示に従い、寛人と哲が同時に動いた。神崎は停止が解けた直後に三方向から攻撃を受け、対応しきれず体勢を崩す。

  祥子が経験値を活かし、その一瞬を逃さないコンビネーションを指示。友梨と栞奈のサポートが重なり、決定的な一撃が決まった。

  神崎は床に倒れ、動きを止めた。審判の旗が上がる。

 「勝者、スプロウツ!」

  観客席は大歓声に包まれた。

 「やった……時間を止める相手に勝てた!」哲が叫ぶ。

  祥子は笑顔を浮かべ、拓馬を見た。「あんたの異能、本当に恐ろしいわね」

  拓馬は小さく息をつき、仲間を見回した。

 「俺一人じゃ勝てなかった。みんながいたからだ」

  次の相手は、さらに強力な能力者が待ち構えている。それでも拓馬は恐怖よりも闘志を強く感じていた。

 (理事長、お前の支配はここで終わりだ)

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