第14話

今まで散り散りにワイワイガヤガヤと騒いでいた2、3年が新幹線の如き速さで観覧席へ。


お前らは鍛え上げられた兵隊か。



日々の教育の賜物だなと思いつつ、まだ士郎の恐ろしさを知らないであろう1年に目を向けると意外や意外。


ほぼ全員が静かにじっと士郎の動向を見つめていた。


ちらっと隣を確認すれば、クソ生意気だった銀髪男ですら食い入るように見ている。



「東郷士郎…」



誰かの呟く言葉。

唾を飲む音さえ聞こえてきそうで困惑。



え。なにあいつ。

中等部にまで名前轟かせてんの? おっかないヤツだな。



「斗真ー、俺らも行こうぜ」


「あ、うん」



流石にこの空気感で入り口に突っ立ってるのは無理だと、友人の提案にすぐ頷く。



それはどうやら腹立つ銀髪も同じなようで、こちらを振り返ることもなく1年の観覧席へ。金髪もだるそうな足取りでそれに続いていた。



またすごい顔面偏差値同士の友人だな。


腹は立つが顔の出来は否めん。



くっそ。と心の中で嘆きクラスメイトたちが固まってるエリアに腰を落とした。


瞬間、ここぞとばかりに絡まれる。




「斗真なんか絡まれてたじゃん」


「一年だよな? タッパあんなぁ」


「とーま来た!?」


「おはよー斗真ぁ。あのさぁ…」


「とーま! 俺ちゃんとこっちは出席したよ!えらい!?」


「ちょ、楽! 邪魔!」



「はいはいはいはい。聞くから後で!」



今は流石に静かにしないとボスに殺される。



さっきの合同全校集会に参加していなかった面々からの圧に苦笑いし、静かにさせて前を向く。



「はい。じゃあわかってると思うけど改めて、これからFクラス親睦会を始めるよ」



進行に不向きな士郎の代わりだろう、りづさんがマイク越しににこやかにそう告げた。



一階ステージには士郎たち3年代表3名、少し離れたところにFクラス担当教師数名の姿も見える。



こんな有名校でまさか殴り合いの見守りさせられるとは、教師になる前は思ってなかったんだろうなぁ。



ご愁傷様です。そしてお疲れ様です。



いつも疲れた顔をしてるFクラス担当教師の皆様を心の中で労う。




「さっき士郎が説明してたけど、1年の代表枠5名と2、3年の俺たちが推薦した5名で一対一の計5試合してもらう。

出場者以外が茶々出すのは禁止。

戦い方は一応なんでもありだけどスタンガンとか刃物とか持ち出すのは禁止ね」



出場する身として説明はしっかり聞いておかないとな。


聞いた感じ粗方去年と同じだけど。




「制限時間は長くても30分。

膝又は体を10秒以上地面につける、場外、降参をした場合負け。

30分越えた場合は両方失格」



30分て。

それ掛けた時点で終わりだろうな。



士郎長いの嫌いだし。


15分もいけばウゼェとか言って強制的に終わらせられるんじゃないの。






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