第10話

司会に名前を挙げられ、マイクを握る士郎。

その下にはにこやかなりづさんとポケットに手を入れてだるそうにそっぽを向く玲鷹さんが控えている。



ヤクザの集会かなんかですか?




「あそこだけ空気違うくない?」


「異世界感半端ねぇな」



普段俺あそこん中に入ってんだよなぁ…やばいなぁ。



士郎が話し出す間、一般クラスはもちろんFクラスの奴らもシン、と静まり返っている。



そりゃそうだ。


声でも出そうもんなら殺される、みたいな空気感だし。



噂じゃエリートのA組は結構Fにも突っかかってきたりするみたいだけど、流石に士郎に野次飛ばす命知らずはいないようだ。



賢明な判断だな。


もしいたら自殺行為はやめろとそいつの口を真っ先に塞ぎに行くだろう。



壇上の士郎を、いつ見ても無駄に顔が整っているなと見ていれば、バチッと目が合う。



俺を見るや否やニヤッと、そりゃもう悪どい顔で笑った士郎に何考えてんだと悪寒が走った。



周りはと言えば、士郎が笑ったことにFの連中はざわつき、他クラスからは何故か控えめに歓声が上がる。



いやいやいやいや、士郎だぞ?


お前ら交流ないから知らんだろうが顔に騙されんな。あの顔する時は良からぬことを考えてる時だ。



被害に遭うのはもちろん俺ら。




『通達があったと思うが、Fクラスはこれから全面的に他クラスとの交流を行う予定だ。中等部から上がってきた1年は慣れねぇだろうが死ぬ気で慣れていけ』



おおぅ…流石というか。


この場面でよくそんな物言いができるな…士郎だからできんのか。


言い方が普段より若干優しいところを見ると、一応公式の場っていうのは頭にあるんだろうけど。



それにしたって普段通りすぎるわ。




『式の後Fクラスのみ新入生歓迎会を執り行う。

内容は去年同様2、3年5人、1年5人の力試し大会。出場者は勝手に推薦する。

そこで俺の目に留まった奴が次の1年の代表者だ。

2、3年は威厳を保て。1年は殺す気で挑め』



ざわざわと一般クラスから戸惑いの声が聞こえる中、Fクラスの士気が上がる。


中には叫び声を出す奴も出る始末。



それが一年からも多数出ていて、出場する身としてよくもはっぱをかけてくれたなと呪いたくなった。



『もちろん他クラスの見学者も歓迎する。

1学年の代表者を決めるFクラス生たちからしたら一大イベントだ。ぜひ参加してくれ』



ぜひじゃねぇんだよ。


んなこと普段言わないくせにこういう時だけいい顔しやがってくそぉ。





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