三匹のこぶた~とっておきの鍋~

山下ともこ

第1章:旅立ちと、それぞれの家

「あなた達、そろそろ、独り立ちするころよ」

ある日の朝、母ブタは三匹の息子たちにそう言いました。


長男のポルは、のんびり屋で楽しいことが大好き。

次男のモクは、しっかり者だけど、ちょっとあきっぽい。

末っ子のレンは、頑固だけど、とてもやさしい努力家。


三匹はそれぞれの夢と考えを胸に、母ブタの家をあとにしました。


「自分の家を作って、自分の力で生きていくんだ!」

三匹の子ブタの、新しい物語のはじまりでした。




「よーし!オレは、直ぐに家を作るぞ!」

長男のポルは、鼻歌まじりに野原の道を歩いていきました。


途中で見つけたのは、ふかふかの藁の山。

「これならあっという間に家ができる!」


ポルは嬉しそうに藁を抱え、すぐに自分の家を作りはじめました。


あっという間に完成した藁の家。

ふわふわしていて、まるでベッドのように気持ちよさそうです。




次男のモクは、ポルの家を横目で見ながら言いました。

「藁の家じゃ風にも飛ばされる。

 ちゃんと木で作らないとダメだよ」




モクはまっすぐ林へ向かい、木の枝を集め、蔓を使い、家を作りました。

最初はきっちりと枝の隙間を埋めていましたが、段々と疲れて来て、

「まぁ・・・こんなもんでいいだろう」

と、モクの家も完成。


枝の隙間から多少風は入ってきますが、ポルの家よりはずっと頑丈そうでした。




一方、末っ子のレンは……


森の近くを流れる川のそばで、ひとり静かにレンガを造っていました。


「時間はかかるけど……ちゃんとした家を造ろう」

誰に急かされるでもなく、

レンは日が昇ると作業を始め、日が沈むと手を休めました。


泥を固め、乾燥させ、それを焼き…

作ったレンガを一つずつ、積んでいきます。


兄たちはそんなレンを見て、顔をしかめました。

「えっ、まだ出来てないの? それじゃ、寝る場所もないじゃん!」

「もうすぐ冬が来るんだよ。のんびりしてる場合じゃないって」


レンは手を止め、少しだけ微笑んで言いました。

「ずっと安心して暮らせる家が、ぼくの夢なんだ」


そう言って、また黙々と作業に戻るレン。


兄たちはため息をつきながら、それぞれの家に戻っていきました。




こうして三匹の子ブタは、それぞれが新しい暮らしを始めました。




続く~第二章へ~





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