22:キラキラ輝く時間

 次の日の放課後。

 私と雪村くんは一度家に帰ってから、川沿いの大きな公園で待ち合わせをした。


 夕方の公園はにぎやかで、どこかのんびりと時間が流れていた。

 小さなこどもたちは、ブランコや滑り台で元気に遊んでいる。

 広場ではフリスビーが宙を舞い、大人たちの笑い声が弾ける。


 川の方から吹く風が、木々の葉をやさしく揺らして通り過ぎていく。

 私たちはベンチの近くでスマホを見ながら、ダンスの振りつけを考えていた。


「ここ! ここの『変身・マジカル・ドレスアップ!』のところで、イルカちゃんの変身ポーズ入れたい!」

 私は動画を一時停止して立ち上がった。

 両手を上げて、くるくるっと回って、イルカちゃんの変身ポーズ!


「あと、最後に戦闘後の勝利ポーズしたい!」

 私は右手を上げ、左手を腕の前で曲げて、ビシッと決めポーズした。

 犬の散歩をしていたおじいさんが、私を見て「なんだ、あれ?」みたいな顔してるけど、気にしない、気にしない!

 恥ずかしがったら負けだ、って自分に言い聞かせた。


「おれも、それは外せないと思ってた」

 雪村くんは小さく笑った。


「ほんと!?」

 雪村くんも、私と同じことを考えてたんだ!


「うん。おれからも提案があるんだ。ネットでダンス動画を見てて、思いついたんだけど。『ピンチの時こそ 笑顔でいこうよ~』の部分」

 雪村くんはスマホの動画を再生して立ち上がり、曲に合わせて踊り始めた。


 腕を開いて、素早くステップ。

 ちょっと難しそうだけど、この動きができたら、目を引きそう。

 雪村くんは腕を上げて肘を曲げたあと、横に向かって手を伸ばし、そのままピタッと止まった。


「これを左右対称で踊ったら、格好良いと思う」

「おお~! うん、絶対、格好良いよ! やろうやろう!」

 私が拍手すると、雪村くんは照れたように笑って手を下ろした。


「ここはどうする? 動画の通りにやる?」

 雪村くんが私の隣に座って、スマホを覗き込む。

 肩が触れ合って、心臓がドキッと跳ねた。


「うーん。こっちより、こういう動きのほうが……」

 陽がだんだん傾いて、公園の地面に伸びた影が長くなる。

 オレンジ色の空の下で、私たちは何度も動画を巻き戻して、振りつけをひとつずつ決めていった。

 二人で同じ動画を見ながら、こうしよう、ああしようと言い合う時間は、ワクワクして、ちょっとだけ、ドキドキもして。

 気づけば私、ずっと笑ってた。

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