第19話普通の少女桜子、気合を入れる。

「は?え?シオンがやったの?」

私の言葉に、画面の向こうのシオンが否定する。

「いいえ、僕じゃ、ないです!」

じゃあ、誰が?

シオンが否定すると同時に、混乱がお客様や、生徒に広がっていく。

「シオン!大丈夫?!」

「はい、僕も何がなんだか、、、うわっ、やめろ、何するんだ。うわー!」

シオンが謎の敵襲に捕まってしまった。それを見ると同時にお客様が逃げ始めた。

「ねえ、これ、逃げた方がいいんじゃない?」

「逃げよ、逃げよ!」

逃げようとする人たちで、出口がごった返しになった。

「すみません、サクラコさん。ちょっと、私は行ってきます。サクラコさんは、放送、案内をおねが、、、が、学園長。」

私が、放送をしようとすると、それを止める、小さな手が。

「皆さん、焦らずに。わしは、学園長じゃ。ゆっくり、焦らず、行動するように。今、魔法戦士たちが、向かっているところじゃ。とにかく、焦らず、行動するように。」

放送が終わると、途端にゆっくりになる、人の波。

すごい。さすが、学園長。こういう時は、頼りになるぅ!

「ミソラは、すぐに、赤色魔戦士と、合流。」

「はい。」

「サクラコくんは、ここで、待機じゃ。」

「なんでですか!私も、行きます。シオンが、シオンがいるんです。ベニたちも、行くんですよね。私も、行きます!」

学園長は、首を横に振った。

「だめじゃ。あやつらの強さは計り知れない。そんな中に、生徒を、、、行かせられるわけ、ないじゃろう。本当は、ベニ、シンク、アカネにも、いってほしくはない。でも、これは、あいつらにしか頼めないこと、なんじゃ。」

学園長は、苦虫を噛み潰したような、顔をした。

が、それは、すぐに、学園長の顔へと戻っていった。

「ミソラ、ベニ、シンク、アカネ、聞こえるか。」

すばやく、特殊なぬいぐるみ型マイクをつけると、現場にいる4人に指示を出していく、学園長。

「敵は、やはり、ブラックホールのものか。」

「はい。その可能性が高いと、されています。」

わたしは、それを見ていることしかできなかった。いいや、わかってる。私が行ってもなんにも、ならないこと。ただ、邪魔になるだけの存在なこと。わかってる。、、、わかってるんだ。

でも!それでも、私はみんなと、一緒に戦いたい!シオンを助けたいんだ。

「学園長!私は、いきます!」

私は訳もわからず飛び出していた。でも、その目にははっきりと今、やるべきことが写っていた。

「まて、サクラコくん!待つんじゃぁ!」

学園長の声を後ろで聞きながら私は私の持つ全速力を超えて、走って、ある人物の元へ、向かっていった。

私の予想が正しければまだ、いるはず。

その場所につくと、私は逃げ遅れた生徒の中に、イエロを見つけた。

「イエロ。起きて、起きて!」

「ん?んー。なに?」

よかった。まだいた。イエロは疲れて寝てるはずだから、まだいると思ってたんだよね。

でも、あれ?なんで、特別クラスのみんながいるの?

「なんで、みんなが?」

「うちは、寝てるイエロが、心配で、、、」

「俺様は、今行っても、あの、波に飲み込まれるだけだしな。決して、みんなが、心配とか、そう言うわけじゃないぞ。」

ツンデレ?ツンデレか?ツンデレだよな。うん。ツンデレだ。顔の美少女顔とあいまって、めっちゃ、かわいい。が、絶対これ言ったら怒りそうなので言わない。

「で?わざわざ、俺を起こしてまで、頼みたいことってなに?」

イエロがイラついたようにそう言う。

あー。これ以上、機嫌を損ねたら絶対連れて行ってくれないよ。

「イエロ。私をシオンや、ベニたちのところへ、連れて行って!」

「うちも、行きたい!アイビーが、まだ、あちらへ行ったまま戻ってこないんや!」

アイビーも、あの中にいたんだ。どうしよう。私、シオンにめっちゃ狙えって、言っちゃった。、、、まぁ、アイビーならバルーンで防げるでしょう。って、今は、そんなことはどうでもよくて。いや、どうでもよくないけど。

「いいぞ。」

え?いいの?てっきり、イエロのことだから「俺は俺を危険な場所へは連れてかない。」とでも、言うかと思った。

「まぁ、連れていくのは俺じゃないがな。」

??どゆこと?

「さん、にー、いち。」

イエロのカウントダウンがゼロになると同時に私たちは闇に包まれた。

あれ?これって、デジャヴ?

考える暇もなく、意識が闇の中へ吸い込まれていった。


ドサッ

「おい。起きろ。おい。、、、ふう、仕方がないか。」

ん?なにが、仕方がないんだ?まぁ、いい。ふわふわしている。

バッチーン!

「痛ったぁー!」

もっと、他の方法があったんじゃあ、ありませんこと?!仮にも私、女子ですわよ!

「あ、起きたか。他のメンバーは、みんな、起きてるぞ。お寝坊さん。」

うおー!クマがある、ダウナー系イケメン男子のお寝坊さんは、破壊力抜群!!

そういえば、さっきまで、違うとこにいたのに、、、足元が闇に包まれて、、、

「ここは?」

「ここは、お前さんの望んだ、シオンとベニたちがいるところ、だ。」

「え?連れて来てくれたの?」

いつのまに?いや、でも、イエロは、連れていくのは俺じゃないって、言ってたような。

「いいや、連れて来たのは俺じゃない。もともと、あちらの敵の方に移動系の固有魔法がいたんだろうな。俺らを連れて来たのは敵の方だ。」

俺ら?ああ。本当だ。霧に紛れてよくわからなかったけどラピスも、マリンもみんないる。

「なんで、私たちを連れてきたんだろう。」

「わからない。ただ一つ言えるのは俺たちは敵の方に送られたわけじゃないってことだ。それだけは、救いだな。だが、この霧だ。今は動かない方がいいな。」

どうする。どうすれば、ベニ、シンク、アカネは、無事なのかな。

その時、近くで、爆発音が響いた。

「なに?この音。」

「また、爆発したんか?」

すると、霧がどんどん晴れていく。

「なんでや?なんで、霧が晴れていくんや?」

その先に現れたのはボロボロのベニ、シンク、アカネだった。

「ベニ、シンク、アカネ!」

「なんで、ボロボロなんや?!」

「おい!お前らどうした?!アカネ!お前はやられるような奴じゃないだろ!ほんとに、どうした!?」

「シンク、、、お前がなんで、瀕死なんだよ。」

それぞれが、それぞれに、問いかける。が、帰って来たのはたった、一言だった。

「「「逃げろ!」」」

その一言と共にまた、霧が深くなり、3人の姿が見えなくなる。

あとに、残ったのは、あの、あの、強い3人がボロボロで、瀕死になるほど、強い敵がいると言う絶望感と事実だけだった。

みな、何もできない、何も言葉にできない。そんな空気。

もう、逃げるしかないのか。

その重い、沈黙を破ったのは桜子。私だった。

「私は、行く。3人の元に行ってくる。じゃないと、何も始まらないし。」

私は実を言うとこわかった。もう、逃げ出したい。けど、今戦っているのは、私だけじゃない。でも、それ以上に私の中にあったのは、怒り。

私の普通の日常を壊す敵に対しての怒りだった。私の大事な仲間を悲しませて、怖がらせて、傷つけて、許さない。私が、私が、あいつらを倒す。

「なんでなん?なんで、そんなにサクラコちゃんは、頑張れるん?」

ラピスが不安そうにそう、問いかける。

私はとびっきりの笑顔でこう答えた。

「私の普通の日常を守るためならいくらでも頑張れちゃうんだ!」

そうして、わたしが、走り出そうとすると、それを誰かが止めた。

「待て、俺もいく。」

イエロは、真剣な面持ちで、そういうと、急にふにゃっと、顔をゆるめて、、、

「俺のコロンブスを使えば、3人の居場所にワープすることができる。使ってくれ。」

と、眠そうな笑顔でそういった。

「俺もいくぞ!アカネを、あのムカつくやつを助けたら、弱みを握れそうだからな。」

そう言った、マリンの手は震えている。怖いんだ。そうだよね。怖いよね。でも、みんなを助けたいから行くんだよね。かっこいいよ。マリン。

「うちも、行くで。アイビーを助けるんや。」

みんなの心は、一つになった。あとは、1歩踏み出すだけ。

「みんな、、、行くぞー!」

「おおー!」

気合いは充分。私たちは、やれる!

「これから、戦いの最中にいる、3人の思考をワープさせてどこにいるか探る。そこに、ワープするぞ。どこにワープするかは、俺にもわからないからみんな、気をつけてな。」

「お願い。」

イエロは静かに目を瞑る。

「コロンブス。」

私たちの戦いは、まだ、始まったばかり。


いつものワープとは、比べ物にならないほど高性能のワープだった。

一瞬で、3人の元へとついた。意識も失ってない。

近くに来てみるとわかる。こんなに、大きな敵と戦っているんだ。

「なぜ、きた!」

「ここは、危険なのー!」

「早く、逃げてください!」

3人は、もう、少ししか力が残っていないようでギリギリ戦っている状態だった。それなのに、3人は私たちに逃げてと、言ってくれる。3人は優しい。だからこそ、私は逃げない。

『わたしはー!』

なにか、怪物は、喋っている?

「こいつらは、ここにいた、アイビーと、シオンと、ウグイスの3人が黒玉によって、怪物となった姿なんです。」

「え!アイビーー!」

「シオン!シオンなの?!」

「気持ちはわかるが、今はだめだ!俺だってウグイスを助け出したい!攻撃なんてしたくない!だから、倒せないんだ!」

そうか、3人がボロボロなのは、攻撃できないから、守ってるだけだからなんだ。

『わたしはー!いつも、いつもー!ラピスにー!たよってばっかりー!さいていー!ごめーんーねー!』

「アイビー?アイビーなの?大丈夫。私はアイビーのこと大好き!そんなこと、おもってないよ!大好きだよー!」

「みたされた、、、です。」

あっ、アイビーが、心臓から、出てきた!

「今だ!本体を攻撃しろ!いけっ!」

ベニの言葉を聞いて、それぞれが攻撃を繰り出す。

「かーくれんぼ、しーまーしょ!もーいーかい!もういいね。」

アカネのかくれんぼで制御できてない、敵の動きをとめた。

「フラワーアンブレラ!」

そして、ラピスが、フラワーアンブレラで、敵を切り刻んでアイビーを助け出した!

「アイビー!大好きだよ!これからも、ずっと一緒だよ」

「ずっと、一緒、、、です。」

笑顔で、アイビーは眠りについた。

よかった。アイビーは大丈夫そうだ。

さっきからそこで寝ている、イエロと共に一緒にいてもらう。余談だが、現在イエロを持っているのはマリンだ。あんな、華奢な見た目して筋肉がガチですごかった。めっちゃ、固かった。

『わたしーはー!ひっこみじあんでー!まともに、しゃべることも、できないー!ベニくんにも、もうしわけなーい!』

あれは、ウグイスちゃんか!ベニ!いったれ!

「声が聞けなくても!ウグイスが!大好きだーーーーーーー!」

きゃー!ロマンだねー!かーくっいー!

「おい。」

ん?どした?マリン。

「ラピスとアイビーは、大変素敵な友情だと思う。だが、ベニのあれは、なんだ?あれじゃ、まるで告白じゃないか。」

「あ、気づいてなかったんだ。結構前からベニ、ウグイスちゃんのこと好きだよ。」

「ふーん。そうなんだ。それは、それは、、、からかいがいのありそうな。いや、なんでもない。」

今、からかいがいのありそうって言ったな。

「言っとくけど、揶揄わないほうがいいよ。ウグイスちゃん、泣かせたらベニのパンチが飛んでくるから。」

「うん、やめとくわ、、、それより、こいつ邪魔。シンクこいつ、よろしく。」

あ、自分よりか弱い、、、いや、か弱くないか。シンクに渡したのは正解かもな。

「イエロの、クマ、濃いのー。お疲れなのー。」

肩からかけてあったポシェットから、めちゃめちゃでかい、中学生用のベビーカーを出したシンクは、ねんねんころり、、、とイエロを寝かしつけている。

いや、どこから出した?!その、でかいの!!

「まさか、その、ポシェット、、、」

「ああ、これ?四次○ポシェット!」

はい!アウトー!丸パクリですやん!ていうか、どうやって作った?

「私の能力、サイエンスで、ちょちょいっと。」

すごすんぎ。さすが、最強の、魔法戦士!

「ちょっと!僕の能力でも、止められないものがあるんです!遊んでないで、加勢してください!」

ごめん、あまりにも静かなもので、忘れてたわ。そういえば、ウグイスちゃんは、、、?

「ウグイスは、もう、助け出した。」

あ、ベニ。よかったー!ウグイスちゃん、無事だったんだね。

[私は大丈夫なのだ。ベニくんの言葉が、心に響いたのだ。私はいいから、シオンくんを…]

あらら、寝ちゃった。やっぱり疲れるんだね。おやすみ。

「シオンは桜子にしか、できないと思う。がんばれ。」

さて、シオンと会話をしに行こうか。






















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