第102話〜冬木 凛子、彼氏と過ごす三が日〜

/冬木 凛子視点


 今日は大くんがお家に来てくれる日。私とお母さん、お父さんも一緒になって大くんを出迎えるために準備をしていた。おせちもよし、お雑煮はお母さんが作ってくれた。お酒を勧めようとするお父さんに小言を言って…私はお化粧をする。


「そうそう、凛ちゃんはシュッとした目元がきれいだからぁ〜、それを引き立てる目のお化粧がいいわよ〜」


 お化粧の先生はお母さん。あとはネットでちょっと調べて…大くんにふさわしい女の子になれるように。なるように。私はお母さんにお化粧を教えてもらっていた。お化粧って奥が深いのね…目のお化粧でも印象が全然違う。我流ではちっとも綺麗にもかわいくもならなかった。これじゃないって感じがすごかった。


「お母さんもお化粧をしようかしら〜♪」


 そう言ってお化粧をサッと済ませたお母さんはシュッと鋭くも感じる目。アイシャドウでぱっちりした目。ファンデーションにチーク…全然印象が変わっていた。


「まだまだ凛ちゃんはお化粧初心者だものねぇ。今日はぁ大樹君に惚れ直させるためにぃ〜、お母さんがお化粧をしてあげるわね〜♪」


 澪もお化粧を勉強するらしい。お互いに研鑽し合って大くんにもっと褒めてもらいたいから…!詩奈はその点、ギャルグループとの付き合いで化粧は覚えている…一歩リードしているけど…自慢したりはしない。でも詩奈は自分を魅せるやり方をしっかり知っている。私だって…!


「これが…私?」


「あらあら〜、凛ちゃんはやっぱりお化粧一つで全然変わっちゃうわねぇ!これなら大樹くんも凛ちゃんを褒めてくれるわ〜♪あとは赤ちゃんを授かるだけねぇ!」


「ちょっと、お母さん。私はまだ高校生なのよ?」


「あらいけな〜い!そうよねぇ…お母さん、早く凛ちゃんと大樹くんの赤ちゃんが見たくってぇ」


「気長に待ってて!もう!」


 大くんとの赤ちゃん…私だってほしい。できたら産む覚悟はある。私と大くんの愛の結晶…男の子かしら?女の子かしら?ふふっ、どっちでもきっとかわいいわ。ああ、大くん…私は大くんがいないともう生きていけない。大くんと結ばれたあの時から私は大くんがいないと生きていけないの。一緒に暮らしたい。毎日尽くしたい。愛されたい。愛したい。ああ、大くん…私の全て…全てを差し出しても私は構わない。だって、私は髪の毛一本から爪先まで。魂の一片まで大くんのものだから。


ピンポーン


 そう思っていると呼び出しが。大くんだ…!私は玄関へ駆け出した。そして戸を開けばそこにいたのは愛しい私の最愛の人。大くんがいた。


「大くん!待ってた…!」


「凛子…?おお、バッチリメイクしとるんやな。こらえらい美人がより美人になって…服もえらいイメージがちゃうわ」


 そう、今日はダメージジーンズと言うものをタンスの奥から引っ張り出した。いつもスカートばかりだけど、お母さんがこの化粧ならこっちのほうがいいって言うから。ちょっと肌が見えるのは恥ずかしいけど…。


「あの…似合ってる…かしら?」


「新しい凛子の発見やなぁ。今度この格好でデートしよ」


 私はその言葉だけで幸せになれた。それから…デート…!デートしたい。大くんの隣を歩ける幸せ。嬉しい…!恥ずかしいけど着た甲斐はあったわ!大くんがいいと言ってくれる。私はそれだけで幸せだから。


「あらあら〜、もうラブラブしてるの〜?お母さんたちは下にいるから2人で上でラブラブする〜?」


「お、お母さん!!!!」


「あ、梢さん…今日はお世話になりますぅ!」


「やあ、天王寺君。来てくれて嬉しいよ」


「克哉さんもお世話になります。新年、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します」


「はぁい、おめでとうございま〜す!」

「おめでとう、今年も凛子をよろしくお願いします」


「あ、これ大阪名物の葵丸の五色どら焼きです!」


「まぁ〜!これはご丁寧に〜!」


「天王寺君、そんな気を使わなくてもよかったんだけどね…でも、うちは和菓子が好きでね…ありがたく頂戴するよ。ありがとう」


 大くんって本当にしっかりしてると言うか…大人びているわよね。そこがかっこよくて、学園内の男子とは違うのが好きなんだけれど。よくお父さんもこう言ったものをいただいているけれど…まさか高校生の大くんが社会人と同じようなことをすると言うのはすごいと思う。


「さあ、上がって頂戴な〜」

「はい、お邪魔します」


 私は大くんの腕に自分の腕を絡めて大くんとリビングへ行く。冬休みは大くんとそう会えないから、しっかり大くんの温もり、匂い、声。全てをしっかり今日堪能しなくちゃ。


 おせちは今日この日,大くんが来るからとお取り寄せしたもの。


「さあさあ、遠慮なく召し上がれ〜♪」

「キャ、キャビアちゃうんこれ…」


「おや、天王寺君はキャビアは苦手かな?」

「い、いえ、そう言うわけではありませんが…」


「大樹くんと凛ちゃんのために奮発しちゃったの〜♪い〜〜っぱい食べて頂戴ね!」


「あ、ありがとうございます…んっ、うま!凛子、このローストビーフ食べてみ!あーんして!」


「ふぇっ!?あ、あーん…んんっおいしい!ソースがとってもあっさりしているわね。じゃあ、大くんはこのキャビアを…あーん。おいし?」


「おいしい…ええんかな…こないな豪華なもんいただいて…」


「いいんだよ。天王寺君には昨年凛子がお世話になったからね。ああ、それと天王寺君のおかげで開示請求がうまくいったよ。間もなく加害者相手に裁判をする予定だ。それと、凛子と天王寺君の治療費についてもね」


「も、もう裁判でっか…は、早…」


「はい大くん、チキンおいしいわ。あーん♪」

「凛子もキャビアな。あーん」


「あーん♪ふふっ、大くんに食べさせてもらえるとおいしさも跳ね上がるわね♪」

「ふふ♪凛ちゃん幸せそうでいいわ〜♪」


「うん。天王寺君と出会えてよかったね、凛子」

「ええ!私、大くんと出会えて本当に幸せ!」


「凛子〜」

「はーい、旦那様♪」


 私はいっぱいラブラブ…できたと思う。ここはお家だもん。いっぱい甘えていいんだもん!本当は私って幼稚だと思うわ。でも…本当の私を大くんに見てほしいから!


……


「鶴橋さんは反省の色が全くないんだって…私と大くんを恨んでいるって…」


 大くんが持ってきてくれた五色どら焼きを食べながら、私のいじめ問題のその後をいろいろと大くんにお話しする。


「娘の未来を潰すんかって、凛子の未来を潰そうとしといて何言うとんねん。被害者の心の傷って言うんは簡単には治らへんねん。どうせ数年後には加害者はイジメのことなんかケロッと忘れて幸せにのうのうと生きよる。被害者はいつまでも苦しむんやぞ」


 大くんが鶴橋さんに怒りの感情を見せていた。正直、学校に行っても私はまたいじめられるのではないかと思い込んでしまうし、夢で突き落とされて…大くんに助けられずに地面に叩きつけられる夢を見ることもある。弱い睡眠薬を心療内科で処方してもらって飲んでいるくらい。


「厳罰を求めて、刑事的にも,民事的にも社会的制裁を与えるんは当然やと思います。凛子さんの未来を守るためにも。凛子さんを守るためなら、私もどんな障害も排除する構えです」


「だからと言って、君が警察のお世話になってはいけないよ?ここは大人の私たちに任せなさい。学校ではすまないが天王寺君、君にお任せするよ」


「はい。凛子さんはこの身に替えてもお守りします」

「大くん…」


 ああ、やっぱり大くんは私の王子様。だから私は大くんを愛している。真剣な表情で私を守ると心から言ってくれるのだから。私のお腹の下あたりがじわっと熱を帯びる。大くんの子がほしい…そう思うくらい。でも…それはまだできないから…また大くんに抱いてほしい…もっと…壊れるくらい乱暴にしてもいいから…♡


「大くん…好き…」

「ああ、俺も凛子を愛してる」


「大くん…♡」


 やっぱり私は大くんがいないと生きていけないな。一生、私は大くんのもの。大くんにこの身を捧げるからね♡


 その後も鶴橋さんのお話なんかをしていたけれど、私を守るように肩を抱いてくれたりと、私はお話はそっちのけで幸せな時間を過ごした。帰ってしまうまで…ずっと♡

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