第60話〜関西人、許しを乞う〜

 慌てて澪ちゃんと一緒にリビングへと下りてきた。澪ちゃんのお母さんはと言うとものすごいニコニコして「うふふふ…」となんかめっちゃ怖い笑いを浮かべとった。


「さあさあ座って!今日はごちそうよ〜♪」


「おぉ…」


 すごい。特盛の唐揚げ。ポテトサラダ…そしてなぜかある肉じゃが…どれもごっついおいしそうや。俺は特に肉じゃがに目が釘付けになった。俺が座るとその横に澪ちゃんが座る。そして俺の顔を見てニパッと笑う。かわいすぎやろ。


「ただいま〜」


 そう言うと澪さんのお父さんが帰ってきはった。イ、イケメンやな…せやけどおとなしそうな…そんな感じがする。


「おかえりなさい、お父さん!」

「あなた、お疲れ様〜。すぐご飯よそうわね」


「ああうん。おや、お客さんかな?」


「はじめまして!天王寺 大樹と申します!」


「これはご丁寧に。僕は秋谷 圭吾(あきたに けいご)と申します。よろしくね、天王寺君」


「わたしの大切な人なの!」


「ああ。そうなんだねぇ。お母さん、お茶も淹れてくれないかなぁ」


 お父さん、湯呑みを持つ手がものすごい震えててガタガタ言うてるんやけど…俺、やっぱおったらあかんのやろか。せやけど、ここまでもてなされて食べへんと帰るんはお母さんに失礼やし…。


「あら、ごめんなさいね大樹君。私は楓というの。よろしくね♪」

「大樹…君?母さんまで…」


 お父さんの手の震えが早なったで。お茶こぼれまっせ。


「いただきます…」

「遠慮なくいっぱい食べてね!」


「お母さんのお料理は最高だよ!」


 俺はまず唐揚げを頬張る。うまっ!?外はパリッと。中はめちゃくちゃジューシー…噛めば噛むほど鶏の旨みがめっちゃ出てくる…ビールがほしなる…いや、俺今は未成年やからあかんわ…。


「うまい…」


「よかったわ〜!さ、いっぱい食べて!」


「大樹君、これが大きくておいしそうだよ!はい、あーん」


「あ、あーん…」


「あらまあ♪」

「ははは…仲良しだねぇ…」


 うまい。何個でも食べられる。澪ちゃんに食べさせてもらうって…あの、ご両親の前なんですけど…澪ちゃん、ポテサラまであーんしてくれるんやけど…あ、うまい。ホクホクのポテト…そして玉ねぎのシャキシャキ感がたまらん。


「うおぉ…」


 俺がいっちゃん気にしてたんはこれや。肉じゃが。長いこと食べてないのう、これ。前世ではおかんがよう作ってくれたもんや。反抗期の時は食べたいくせにおかんの作ったもんなんかいらんとか言うて困らせてしもたもんや。そして俺はどうしてもおかんの味の真似ができんで、これやないって言うて作るんをやめた。それから数年。俺は肉じゃがを口にする時がきたと。


「大樹君?」


「あ、うん。いただきます」


 俺は意を決して肉じゃがを食べる。ホクホクかつ、ダシがよう染みたじゃがいも。柔らかくて溶けるけども甘味がある玉ねぎ。白滝…そして旨みを出す牛肉…ああ、懐かしい…懐かしい味や…おかんが作ってくれた肉じゃがと変わらへん。おかん、元気しとるかな。俺がたぶん死んでしもて…どないなってるんやろ。ごめんな、おかん…。


「大樹君…!」


 澪ちゃんが抱きしめてくれた。俺はおふくろの味を噛み締めていつの間にか泣いとった。懐かしさとおいしさで…泣いてしもうたんや。澪ちゃんの優しさも胸に沁みた。


………


「いけないいけない。私が胃袋を掴んだらダメねぇ。澪がしっかりと掴まないとね」


「お母さん…」


「すんません。あまりのおいしさに泣いてしまいました」


「ううん!澪が言ってた通りねぇ。おいしくて泣くなんて。ふふっ、かわいいところもあるのね!お母さんも彼女に立候補しようかしら?」


「お母さん!?ダメだからね!?」

「ははは、母さんは冗談がうまいなぁ」


 お父さん、お茶がこぼれてます。


「お母さん!わたしに肉じゃがの作り方、詳しく教えて!」

「ええ!いいわよ〜?大樹君をしっかり掴んでおくのよ!」


「うん!」


 なんか、お母さんも澪ちゃんも猛獣のような目をしとった気がする。俺は夢中で食べて気を逸らすことにした。澪ちゃんも楓さんも笑っとった。


………


「ごちそうさまでした…ほんま、おいしかったです」


「いい食べっぷりだったわぁ、見てて気持ち良かったもの」


「大樹君、食べすぎてない?」


「うん、大丈夫。けどお腹いっぱいや」


「ふふ、よかった♪」


「大樹君、またいつでも食べにいらっしゃいね。歓迎するわ♪」


「ありがとうございます」


「もうあなたはうちの息子みたいなものよ!本当に気兼ねなくしていいからね!」


「お母さん…!」


 なんか、グイグイ楓さんがくる…遠慮なくっていうてるし…またお邪魔しよか…それと同時に…。


「圭吾さん。楓さん、今お時間よろしいでしょうか」


「大樹くん?」


「ん?どうしたのかな?」


 俺は殴られるんも怒られるんも覚悟で話をしよう思た。澪ちゃんのことや。


「先ほど、澪ちゃん…あ、澪さんと2人でお話をしまして…それで、私も澪さんも…お互いの気持ちが一緒でして、お付き合いをしたいと思うとります」


「まあ!」

「ほう…」


「大樹くん!」


「ここでこないして夕食にお呼ばれいただいたのも何かのご縁…どうか、ご両親にも…私と澪さんの交際を認めては頂けませんでしょうか!澪さんに不幸なこと、身の危険が迫った際には必ずお守りします!そして、幸せにします!どうか、お許し願えませんでしょうか!」


「だいき…くん!お父さん、お母さん!わたしからもお願いします!一緒に…大樹君と一緒に幸せになりたい!大樹くんが好きだから!大好き…ううん!愛してるから!!!」


 俺が土下座すると澪ちゃんも頭を下げた。こう思ってくれるんはほんまに嬉しい。せやからこそ、ご両親にもご許可を頂いてお付き合いがしたい。


「大樹君、澪、顔をあげて?」

「はい…」


「あなた?」

「うん…そこまで大樹君。君が澪を思う気持ちは伝わったよ。母さんも大樹君を歓迎しているし、僕から言えることはないかなぁ。強いていうなら、娘を幸せにしてほしい、かな」


「熱かったわぁ!胸にキュンときたわ!大樹君!娘をよろしくお願いします」


「…あ、ありがとうございます!!!」

「大樹くん!ありがとう…!一緒に幸せになろうね!」


 こうして俺たちは秋谷ご夫妻から交際のご許可をいただいた、両親公認のカップルとなった。おかんとおとんにも言うとかなあかんのう。


「ふふ♪昔の圭吾さんを思い出すわぁ!ときめいちゃったわ!ねえ、圭吾さん…あとで一緒にお風呂入らない?」


「か、楓ちゃん…いいけど澪達がいるんだからね?」


「ふふふ!澪!ガンガンいくのよ!あ、避妊はちゃんとしなさいね?まだ学生なんだから」


「えあ!?う…は、はい…!」


 

 このお母さん、マジで怖い。そういうのまで公認って言うんはどうなん…てか今ナチュラルに夜のお誘いの話してなかった…?澪ちゃん、聞こえてなかったんやったらええんやけど…。


 秋谷家、敵に回したら怖いのう…いや、こんなご両親やからこそ…原作のようなええ加減なことしたら勘当するとかになるんやろうな。優しいけど厳しくもあるええご両親やからこそ、こうしてのびのびと澪さんは育ってきたんやろうな。ええ加減なことせんようにせんとな。


………


「今日はありがとう、ご両親にもよろしく伝えといて」


「うん!わたしこそありがとう。大樹くん、これからもよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 そう言うて俺は澪ちゃんを抱きしめた。嬉しそうにして、キスをせがんできたからキスもして。このかわいくて甘えん坊な彼女と一緒に。詩奈ちゃんも一緒に幸せにせなあかんな。


「ほな、俺はこれで」


「うん!大樹くん、また明日ね!」

「せやね、また明日」


 もう1回ハグをして俺は帰路へついた。澪ちゃんの柔らかさをしっかり俺の腕に覚え込ませて。澪ちゃんはニコニコと俺を見送ってくれた。

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