第14話〜秋谷 澪、関西人を意識する〜
/秋谷 澪視点
「ただいま〜」
「おかえり、澪」
部活を終えて学校から帰ってくるとまずやることはお弁当箱を洗うこと。ご飯を食べてからでもいいと思ったんだけど、何となく帰ってきてすぐに洗うのがルーティンになっちゃった。今日はやけにきれいな2つのお弁当箱を見てお母さんが話しかけてくる。
「あら、今日は俊哉君のお弁当箱、ずいぶんときれいねぇ……俊哉君が食べてないわね。まさか、捨てたとかじゃないわよね?」
ドキッとした。お母さんはいつもこう言う時鋭いんだよね…隠し事をしてもわたしは顔にすぐ出ちゃうらしいから隠し通せない。だからわたしは正直に今日の俊哉君のこと。そして、天王寺君って言う男の子に食べてもらったことを説明した。
「はぁ〜…よくもまあお弁当を作っておいてもらってそんな仕打ちができるわね、あの子。だったら今日はお弁当があるから食堂には行くけどお弁当食べる、でいいじゃない。なんで学食を食べてるの…?」
凛ちゃんと同じことを言われた。わたしだって信じられない。いつもそう言う時は早く言ってねって言ってるのに…お弁当が無駄になっちゃうからって。そういうと「あーはいはいごめんなー」って適当に謝られて終わり。わたしは…俊哉君の何なのかなって時々思う時がある。
「それと澪。ちゃんとお金はもらってるの?お母さん、それさえも何だか信用できなくなってきたわ」
「それは………」
「もらってないのね。いつから?」
「…1年生の3学期から…」
「そんなに前から!?」
お母さんが何だかワナワナしてる…これってかなり怒ってる…。
「で、でも時々はもらってるよ?」
「あのね、時々じゃダメなの。毎日朝早くから澪が一生懸命作ってるのよ?だからお弁当を作って持って行った日は必ずお金をもらわないとダメなの。これはなぁなぁで済ませてはいけないことだわ。澪、もう俊哉君にお弁当を作るのはやめなさい。すぐにとは言わないけど、1、2ヶ月以内にはやめた方がいいわね。澪が報われないもの」
別にお返しがほしくてお弁当を作っているわけじゃない。俊哉君のお母さんに頼まれて作っていること。でもそれを俊哉君はわかっているのかいないのか…当然のことのように振る舞っている。正直もうやめたいな…とは思っていた。
「これは今宮さんとお話が必要ね。ところで、その天王寺君はどうしたの?」
「それが、1000円ももらっちゃったの!1000円じゃ足りないって言ってもう1000円払おうとしたからそれは止めたけど…感謝の気持ちが1000円じゃ足りないって」
「あら、いい子じゃない。澪のことを天王寺君って子の方がわかってるわねぇ。澪、今度から天王寺君に作ってあげたら?」
「ふぇえ!?な、なんで!?」
「その子はとてもいい子よ!澪のことを大事にしてくれるわ!いい?男の子はハートじゃなくて胃袋を掴んだもの勝ちよ!これからも澪の手作り料理でガッツリ胃袋を掴んで離しちゃダメよ!」
「お、お母さん!?ちょ、ちょっと!天王寺君とはまだそんなんじゃなくて!」
「いずれそうなるに違いないわ!お家に連れてきなさい!そして澪は素敵なお嫁さんに…いいわね!」
「おかあさーーーーん!!!」
暴走したお母さんはお父さんでも止められない。天王寺君のことをあれこれ聞いてきたけど、わたし…まだお話しするようになってから1ヶ月も経ってないからわかんないよぉ…。
………
お母さんがあんなことを言うから天王寺君のことが気になって部屋に戻って宿題をしていても気が散って身に入らない…あーとかうーとか言っても考えるのは天王寺君のことばかり。そしてわたしもだんだんと天王寺君が幼馴染だったらなぁ…って思い始める始末。
秋谷さんをリスペクトして感謝もしての気持ちや!頼んます!
俊哉君がこんな事を言ってくれた事あったっけな…。お弁当を渡しても簡素な「おう、ありがと」とかだし。お弁当の感想を聞いても適当に「うまかった」しか言われてない…天王寺君は全部のおかずに感想を言ってくれて、それでいて「うまい!」って泣きながら言ってくれた。どっちにお弁当を作りたい?って言われたら、もちろん…天王寺君だよね…私は天王寺君のことばかり意識し始めていた。お嫁さんになるなら…とかまで考えて1人でバタバタしてた時。
ポイ?
POINEの通知音だ。もしかして俊哉君?しーちゃんかな?
大樹:こんばんは。今日はめっちゃおいしいお弁当、ほんまありがとう。
天王寺君だ!!わたしは宿題はそっちのけで返事を返した。この時わたしはものすごくウキウキしてた気がするなぁ…。
………
miomio:いえいえ!何度もおいしいって言ってくれて嬉しかったよ♪
機会があったら必ず作るから期待しててね!
大樹:よろしく頼みます!!
あ、せや。もしよかったらお互いにお弁当作って交換とかしてみぃひん?
miomio:何それ!?すっごく楽しそう!やろうやろう!
天王寺君って料理できるの!?
大樹:今親が北海道に仕事で住んでて一人暮らし状態やねん。
せやから自分で料理作ってるよ。せやけど秋谷さんには勝てんなぁ。
miomio:ええ〜!?きっとそんなことないよ!あ、でも天王寺君の料理食べたい!
大樹:任せといて!なんや、すごい楽しみになってきたな〜。
miomio:ふふ、わたしも楽しみになってきたな〜
………
「ふふふ…♪」
天王寺君って料理が得意なんだぁ。ちょっと意外なことを知っちゃった♪え、でもお弁当の交換ってお友達でもするかな…?おかず交換ならあるけど、お弁当の交換って…何だか…こ、こここ、恋人みたいじゃない!?え、ええっと…ま、まあいい、よね?お互いが食べてくれる人のことを思いやって…ってやっぱり恋人みたいだよぉ!?どうしよう…なんか、すっごいドキドキする…。
俊ヤング:澪、今日はごめんなー
どうしても学食食おうぜって言われて断れなかったんだよ
明日はまたよろしくー
天王寺君とやりとりをしていたら俊哉君からもメッセージが来た。そのメッセージを見た瞬間、わたしはドキドキとかウキウキがスン…と冷める感覚を覚えた。子供っぽい言い訳と…まったく反省していないようなよろしくの文字にわたしは怒りさえもちょっと覚えた気がする。
大樹:(猫の写真)
miomio:わぁ!かわいい猫ちゃんだぁ!真っ黒けだね!
大樹:近所でお世話されてる地域猫でうちにもたまに来るねん。
虎徹って言うねん。こんなんやけどめっちゃ甘々笑
miomio:お腹見せてくれて…あはは、かわいいね〜
………
俊ヤング:おーい澪、見てるんだろ?返事くれよー
俊ヤング:おーい
俊ヤング:怒ってんのか?だから悪かったって
俊ヤング:なあ澪〜
俊ヤング:おーい澪〜
なぁ機嫌なおしてくれよー
miomio:わかったよ。お弁当持って行くね。
俊ヤング:ういよろしくー
………
…しつこい。それでいてこの返事…正直作りたくない…それに、せっかく天王寺君と楽しくお話ししてたのに水を差された気分。また明日から、当たり前のようにぐちゃぐちゃにされて…愛妻弁当なんかじゃないのに男子にからかわれて…なんかやだな。
お母さんに言われてからちょっと俊哉君と距離を置きたくなってる自分がいて憂鬱になった。本当に、天王寺君が幼馴染だったらな…。
大樹:そろそろ俺も宿題やらな怒られる笑
それじゃ、また明日。
miomio:あ、わたしもやらなきゃ!
おやすみなさい!
大樹:おやすみ!
こうして天王寺君との会話も終わっちゃった。もっとお話したかったな…。
「えへへ…さ、宿題がんばろ!」
天王寺君との会話を見返して、嬉しくなって、ちょっとドキドキしながら宿題を再開した。
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