会社員召喚 ~ 異世界へ強制出張?帰れるの?

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第1話 定時退社からの異世界出張?

 スペシチップ株式会社AI事業起動室。


 その日、我々4人の心は、いつも以上に軽やかで、満ち足りた達成感に包まれていた。山田淳造やまだ じゅんぞう40歳、川本勇人かわもと ゆうと35歳、海野賢作うみの けんさく29歳、女性の風間聖花かざま せいか27歳。この4人からなる精鋭チームは、AI専用ICの受託製造から市場化、顧客開拓までを担う一大プロジェクトの立ち上げを、ついに成功させたのだ。


 自分たちがAIチップそのものを発明したわけではない。しかし、その革新的な技術が秘める無限の可能性を信じ、未開拓の市場を切り拓くという、まさに現代社会における「冒険」とも呼べる困難なミッションを、見事に完遂したのだ。その達成感は、日々の残業や、時に訪れた壁を乗り越えてきた苦労を、一瞬にして忘れさせてくれるほど大きかった。


 何より、我がチームの揺るぎないモットーは「定時退社」。過酷なIT業界にあって、我々は常に効率と生産性を追求し、無駄を徹底的に排除することで、この理想を現実のものとしてきた。今日もまた、時計の針が定時を指す数分前には、各自のデスクは綺麗に片付けられ、PCのシャットダウンも完了。見事に仕事を切り上げ、それぞれの帰路につこうとしていた。


「いやー、山田課長、今回も完璧でしたね! プロジェクトの最終報告、事業部長も絶賛してましたよ!」


 川本が、まるで自分のことのようにご機嫌な声で言った。彼はいつもストレートな物言いで、チームのムードメーカーであり、その熱意は周囲を明るくする力を持っている。


 山田は、いつものように少しはにかみながら答えた。


「まあな。私一人の力じゃない。みんなの協力あってこそだ。特に風間さんの細やかな気配りがあったからこそ、顧客との信頼関係を築けたし、海野の技術的な裏付けがなければ、このプロジェクトは実現しなかった。そして、川本の持ち前の行動力があったからこそ、ここまで来られた。」


 風間がふわりと、花が咲くような笑顔を見せた。


「いえいえ、山田課長の的確な指示と、ここぞという時の交渉術がすごかったですよ。あの難航していた契約も、課長がいなければまとまらなかったでしょうね。」


 彼女の言葉には、心からの尊敬が込められている。


 海野は、眼鏡のブリッジを押し上げながら、知的な光を宿した目で言った。


「僕はただ、自分の役割を果たしただけですよ。むしろ、このプロジェクトで新しい知識が手に入って、純粋に楽しかったですね。AIチップの市場動向を分析するのも、既存の技術とどう融合させるか考えるのも、全てが刺激的でした。」


 彼は生粋の技術屋で、常に知的好奇心に満ち溢れている。新しい技術や理論に触れることに、何よりも喜びを感じるタイプだ。


 他愛ない、しかし心地よい達成感に満ちた会話をしながら、我々は会社のモダンなエントランスを抜けた。自動ドアが開き、東京の喧騒がすぐそこにある。いつもの帰り道、いつもの風景。誰もが、今日一日を無事に終え、明日はゆっくり休めるだろうという、ささやかな幸福感に浸っていた。


 その瞬間だった。


 足元から、突如として眩い、しかしどこか神聖な光が溢れ出し、我々の身体を包み込んだ。それは、まるで巨大なスポットライトを浴びたかのような、現実離れした光景だった。身体がふわりと宙に浮くような、奇妙で、しかし不思議と不快感のない感覚に襲われる。周囲の景色が歪み、光の中に吸い込まれていく。一瞬の浮遊感と、耳鳴りのような音が響き渡り、次の瞬間、視界が再び晴れた時、そこはもう会社の廊下でも、東京の街並みでもなかった。


「え……ここ、どこですか?」


 風間が、恐怖と困惑が入り混じったような、か細い声を上げた。彼女の顔は、真っ青になっている。


 目の前に広がるのは、息を呑むほど荘厳な石造りの広間。天井には、見たこともないほど巨大で精巧なシャンデリアが輝き、その光は広間全体を幻想的に照らしている。壁には、見慣れない複雑な紋章が幾重にも刻まれ、まるで生きているかのように光を放っている。そして、広間の奥、一段高くなった場所に置かれた豪華な玉座には、威厳に満ちた、しかしどこか傲慢そうな男が座り、その周囲には、きらびやかな甲冑を纏った兵士や、神秘的なローブ姿の魔術師らしき人々が、まるで絵画のように控えている。


「ようこそ、異界より来たる勇者たちよ!」

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