第10話 ファド・ドゥロクル
醜くて嘘まみれのこの皮膚なんざ、剥ぎ取ってやりたいんだ。
だが今やれば全身を裂かれて死ぬだろうな。
汚くて残酷なこの皮なんざ、引きちぎってやりたいんだ。
だがまだ、その時じゃねえ。
どんどん埋もれていくあの吐き気のする森は、今やどこにあるのかすら分からねえ。
美しい奴なんざどこにも見当たらねえし、
今の俺は混沌に適応すべきなんだろうが、
くだらねえ文章どもが俺を邪魔して、殺そうとしやがる。
古い音楽は今日だけで何百回も聞いてきた。
古い罪なんざ背負ってねえのに、それが襲いかかってくる気がしてならねえ。
明るく輝く青い鉱石は気に入ってる。
だがそれを手に入れるのは不幸だとみんな言いやがる。
洗脳だと? 俺は同意なんざしねえ。
だが“混沌”ってやつには妙に惹かれるんだよな。
何もなく、くだらねえ人生を生きてきた罰から逃げ出したいだけだ。
テーマなんざどうでもいい。
罪が俺を覆うその瞬間を待つしかねえんだ。
たまに自分の体から吐き気のする匂いがして、さらに堕ちていく気分になる。
この場所で一番美しいのは、俺なんじゃねえかとも思うぜ。
俺が“混沌の象徴”になるのかもしれねえな。
長く混ざり合いすぎて、正しいも間違いも判断する意味なんざねえ。
同じ姿勢で長くいたせいで、骨も筋肉も崩れ始めてるが、
それでも体を裂かれてない俺は、運がいい方だな。
輝く世界は好きだが、考えは深海より暗くて拷問みてえだ。
偶然、罪と出会っちまった今、
俺が感じたのは、この場所の全てが吐き気を催すってことだ。
舌を引き抜かれるような吐き気に体が震えるから、
この汚ねえ皮膚を剥ぎ捨てたくなるが、
汚染された俺の頭と存在しねえ過去が、俺を愚かにする。
罪が投げた小さな鉱石が、俺の頭皮を掴んで飛び去りやがった。
今の俺に必要なのは金だけだ。
だから罪を犯したんだ。
それさえありゃ、不満なんざ一つも存在しねえ。
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