最強の最弱種〜もふもふの羊を添えて〜
@anko061105
第一章 Let's go 異世界
羊、1
ああ、うるさい。
風の音も、草の揺れる音も、ぜんぶ静かにしてほしい。
できれば今すぐ、もう一度眠りたい。
わたしはゆっくりとまぶたを開けた。
目に映ったのは、どこまでも広がる草原。鮮やかな緑が風に揺れ、空は濃く透き通った青だった。
雲がぷかぷか浮かび、太陽はぽかぽかと優しく照らしてくる。心地よい風が、毛の間をふわっと撫でていく。
(……なんだろ、ここ。ていうか、ふわふわ……?)
体が変だった。
軽いし、丸い。
腕も足も短くて、うまく動かせない。しかも、もふもふしてる。
試しに声を出してみる。
「……めえぇ」
……ヒツジだ。
(あー、そっか。これ、転生ってやつか。
よくあるよね、なろうとかで。目が覚めたら異世界で動物になってるやつ。うん、たぶんそれ)
ふわふわした思考のまま、わたしは草の上にぺたんと座り込んだ。
あったかくて、やわらかくて、ここから一歩も動きたくない。
(まあ、別にいいか……)
記憶はぼんやりしているけど、たしか前世でもほとんど寝てばかりだった気がする。
引きこもりだった。
毎日布団に包まれて、アプリと漫画と昼寝のループ。あれはあれで幸せだった。
(ここも……わりといいかも)
そのとき、不意に目の前に何かが現れた。
空中に浮かぶ半透明のウィンドウ。まるでゲームみたいなステータス画面だった。
―――――――――――――
名前:なし
種族:ナイトメア・ラム(夢喰い羊)
種族ランク:F(最弱)
分類:幻獣・希少種
スキル:
・【眠気の波動(小)】
・【うたた寝誘導】
・【低空浮遊】
固有スキル:■■(詳細不明)
状態:進化不可
備考:極めて希少な存在。戦闘力は皆無に等しい。眠りを誘発するのみ。基本的に臆病で怠惰。
―――――――――――――
(……ナイトメア・ラム? 夢喰い羊ってなにそれ。かわいい名前……)
いやいや、そんなことより。
Fランク。最弱。戦闘力皆無。
(え、もしかしてだけどわたし詰んでる?
うわぁ、弱すぎて草も生えないってここ大草原だからとっくに草生えてるってね〜 アハハ、マジで笑えなーい。ま、でもなるようになるでしょ。もう一眠りしよーっと)
でも、その事実に焦ることもなかった。
なんというか、焦るのがめんどくさかった。
現状、敵もいないし、静かだし、空気もうまいし、ここから動く理由がどこにもない。
それに、スキル欄にある「眠気の波動」とか「うたた寝誘導」とか、どう考えてもわたし向きすぎる。
何もしなくても相手を眠らせるとか……最高じゃん。
(で……固有スキル、■■?)
ちょっとだけ気になって、詳細を開こうとする。
すると、別のウィンドウが表示された。
―――――――――――――
固有スキル:■■
詳細:≒◆※∵∴■ERROR■∴∵※◆≒
状態:封印中
閲覧権限:不明
―――――――――――――
(うわ、なにこれ。バグ? ていうか、見れないなら出さないでほしいんだけど)
頭がずきっとして、少しだけ眠気が遠のいた。
むしろちょっとイラッとした。
(……ま、いいか)
そんなもん、どうせそのうち勝手に明らかになるだろう。
なんなら、明らかにならなくても困らない。
スキル? 戦闘? 成長? ……めんどくさ。
わたしは再び草の上に寝転がる。
空を見上げると、羊みたいな形の雲がふわふわ流れていた。
「……めぇぇ……おやすみ……」
寝息がふわりと草原に広がる。
その場にいた虫たちがぽとりと落ち、木の上の鳥が枝の上でぐらりと眠る。
それがスキルによる効果だと、本人だけが気づいていなかった。
“世界にただ一体”のナイトメア・ラム。
最弱で、最希少で、そして――おそらく最も危険な存在。
だが、本人にその自覚はなく。
ただ、ひたすらに。
世界がどうあろうと、寝続けるだけだった。
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主人公はヒキニートしてただけあって結構ラノベとか呼んでます。
見てくれてありがとう!
よければ⭐︎とかフォロー、コメントじゃんじゃんください!
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