第17話『思いの丈』

港へ向かう道。

ゆるやかな上り坂を歩きながら、四人は昨日の光景をそれぞれ抱えていた。


カザリが少し前に出て、スイウに並んだ。

背中越しに声をかける。


「なぁ、祈りって……なんなんだ?」


スイウは前を見たまま、声を落として答えた。

「さぁ。僕にもわかんないよ。

でも困った時とか、精霊が力を貸してくれる。」


カザリは目を丸くして振り返る。

「お前でもそんな感じなのか。もっと理屈で祈ってると思ってたわ」


スイウは肩をすくめて、少し笑った。

「理屈で祈っても精霊は動かないよ。多分だけど」


「じゃあ、俺にもできるってことか」

カザリは笑いながら腕を組んで、得意げに言う。


スイウは意地悪そうににやっとした。


「カザリは、風……精霊は友達なんでしょ?

じゃあ、いっぱい喋って、いっぱい遊べばいいじゃん。

いつかわかるよ。」


それはちょっとだけ、普段の仕返しのつもりだった。

いつも調子よく絡んでくるカザリに、今回は返してみたかった。


カザリは「おいおいー」と言いながらしてやられた顔を見せて、

笑いながらスイウの肩を軽く押す。

その動きが、空気をゆるめた。


スイウはその様子に、まんざらでもない気持ちが湧いた。

──カザリが悩むのとか、変でしょーって。

でも、それが悪くないと思っていた。


しばらく歩くと、遠くに海が見え始めていた。

水平線がぼんやりと浮かび、道の先に薄い水の気配が現れる。


少し進んだところで、カザリが声を上げる。

「もうちょい行ったら休憩な!」


後ろを歩くタネリとサクナは、並んで進んでいた。

ふたりの声は、こちらには届かなかった。


岩場の陰で腰を下ろし、荷物を整える。


誰かがぽつりと言った。


「……明日には、着きそうだね」


それ以上、誰も語らなかった。

波はまだ届いていない。

それでも風景はすでに港の色になっていた。

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