メスガキ魔王の配信生活
@suimou
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新作始めます。
初めての配信系です。
YouTuberというよりも、Vtuber寄りなイメージなので、Vの方々の配信を見ていると思ってくださるとありがたいです。
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一枚の絵画のような光景だった。
視界いっぱいに広がる海原をひとりの少女が眺めている。
少女の身を包むのは真っ黒なドレス。ゴシック調のもので、いわゆるゴシックロリータ、ゴスロリと呼ばれる服だ。
ゴスロリ服を身につけた少女は、こちらに背を向けていた。
背を向けているから、少女がどのような見目をしているのかはわからない。
だが、その体付きはかなり小柄で、見た目だけで言えば小学生くらい。
小学生だとしても、彼女はかなり小柄だ。百四十センチあるかないかくらいのとても小さな体をしている。
その体躯と同じくらいの長い銀髪を少女は携えていた。
少女の長い銀髪は、とても美しかった。
癖ひとつないストレートの髪。その髪が風によって靡いていく様は、まるで絵画のようだ。
しかも、こちらに振り返ることなく、背を向けたままでも絵になるほど、少女の後ろ姿はあまりにも美しかった。
少女だけでも美しいのに、その少女の先には、絶景と言えるほどの美しい光景が広がっていた。
どこまでも広がる海と、その海を照らす夕陽。夕陽に照らされた海は、淡い赤色に染まっていた。
少女が見つめている光景だけでも十分すぎるほどに絵となるというのに、そこに美しい後ろ姿を見せる少女がセットとなっていた。
正面を向いていないというのに。
いや、正面を向いていないからこそ、想像力が働くのかもしれない。
少女の見目はどんなものだろうかと、誰もが想像をしてしまう。
加えて、少女の美しい銀髪が、現実ではなかなかお目にかかれない銀色の髪が、彼女を神聖な存在へと押し上げているようにさえ感じられた。
そんな少女がいるのは海原を眺められるような高台だった。
いや、もしかしたら岬かもしれない。
少女はこちらに背を向けたまま、長い銀髪を片手で押さえつけて、正面にある海原を見つめていた。
不思議なことに風の音もさざ波の音も聞こえない。
聞こえるのは、少女が口ずさんでいるのだろう美しい調べのみ。
いつまでも聞いていられるような、優しい高音。その調べに耳を傾けていると、不意に少女が振り返った。
少女が振り返ったことで、その見目が露わとなった。
振り返った少女は、とても整った顔立ちをしていた。
体躯が小柄であるように、その見目もまた幼い。幼いがその顔立ちは、とても愛らしく美しい。
真っ白な素肌と相まって、精巧に作られた人形のようだ。
愛らしい見目をした少女の瞳は、淡く光っている。陽光と同じ紅色の瞳がまっすぐにこちらを見つめていた。
銀髪に紅い瞳。
創作の中でしか、なかなかお目にかかれない二つ要素を持つ少女。その少女は振り返ってすぐは、じっとこちらを見ていただけだった。
だが、その表情は徐々に変わっていき、いまやうっすらと口元に笑みを浮かべていた。
特定の嗜好の持ち主でなかったとしても、いまの少女を見て頬を赤らめない者は、そうそういないだろう。
大抵の者を赤らめさせるほどの笑みを浮かべながら、彼女はこちらに手を伸ばした──ところで、不意に少女の姿が消えた。
いや、少女だけではなく、それまで背景に映っていた海原も消えてなくなった。
見えるのは一面の黒。なにもかもを塗りつぶすようなが黒が広がっていた。
だが、黒に覆われていたのはわずかな間だけだった。
「さーん、にー、いーちっ!」
甲高くも、かわいらしい声が突如として聞こえてきた。
その声によるカウントダウンが始まったと思った次の瞬間──。
「「跪け、おまえたち!」」
──カウントダウンをしていたかわいらしい声と、別の声──大人しげであるが、芯のある声が同時に妙なかけ声を口にしたのだ。
掛け声が聞こえたと思ったときには、ふたりの少女が現れた
ひとりはさきほどまで見ていた銀髪の少女。だが、さきほどまでとは違って、「元気いっぱい」という感想しか出ないほどに、彼女は元気よく両腕を頭上へと掲げて、ニコニコと笑っていた。
そんな少女に対するのは、黒髪の少女だった。見目は銀髪の少女同様に整っており、見た目の年齢は銀髪の少女よりも年上に見える。
銀髪の少女が高学年の小学生だとすれば、黒髪の少女は中高生くらいの年齢だろう。
銀髪の少女とは違い、年齢相応の体格をしているのだが、黒髪の少女は銀髪の少女とは違い、やけに緊張しているようで、顔が真っ赤になっている。
緊張の理由は、その衣裳にあった。
黒髪の少女が身につけているのは、銀髪の少女と同じゴスロリ服だった。
さすがに体格が違うので、同じものというわっけではなく、同じデザインの服、おそろいの衣裳を身につけている。
それが黒髪の少女には恥ずかしくて堪らないののだろう。
銀髪の少女は黒髪の少女が恥ずかしそうに俯く様を見て、によによと顔を歪めて笑っている。
その姿はまるで悪魔のようでさえある。それこそ背中から尻尾や蝙蝠の翅が生えてきても違和感はない。
だが、それも無理からぬ話。銀髪の少女がにやにやと笑うほどに、黒髪の少女の格好は似合っていた。
そう感じたのは銀髪の少女だけではなかった。
【ははー! 今日も麗し、く?】
【乙ーって、あれぇ!?】
【今日も陛下がかわいいーと思っていたらぁ!】
【アリサっちがゴスロリですとぉ!?】
【陛下、ナイスです!】
【一生着いてきます、陛下!】
瞬く間に画面いっぱいにコメントが生じていく。その内容は掛け声に対する返答を一だとすれば、黒髪の少女の格好に対する感想が九となっていた。
それらのコメントをざっと眺めながら、銀髪の少女はその体躯相応の胸を張りながら叫んだ。
「はっはっはー! どうだ、アリサ! 余の言う通りだったろう! おまえは元々見目がいいんだから、もっとかわいい格好をしてもいいんだよ、って言った通りだろう!」
ふふん、と銀髪の少女は胸を張りながら、黒髪の少女ことアリサを見やる。
が、当のアリサは顔を真っ赤に染めて俯き──。
「そ、そんなの社交辞令ですよぉ、姉様!」
──ばっさりとコメントを切り捨てたのだ。アリサの一言に銀髪の少女は目をぱちくりと何度も瞬かせていたが、すぐに「はぁ~」と大きな溜め息を吐いた。
溜め息を吐いたのは銀髪の少女だけではなく、コメントも同じで、「ほんま、この子は」や「どうしてこうも無自覚なんだ?」など、アリサの一言に対しての感想が飛び交っていく。
「臣民たちの言うとおりだぞ、アリサ。おまえはどうしてそうも無自覚なんだ? 余は本当のことしか言わないって、おまえも知っているだろう」
「で、ですが」
「ですがもなにもなーい! 今後の配信でのおまえの衣裳はそれだからな!」
「は、はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
アリサに向かって人差し指を突き付けながら銀髪の少女は言い切った。
その言葉にアリサは目を白黒とさせて叫んだ。
が、そのやりとりに対してコメントが再び湧きあがった。
【グッッッッジョブ!】
【さすがは陛下!】
【そこに痺れる、憧れる!】
【一生着いて行かせてください! お願いします!】
コメント欄は湧きに湧いていた。
その内容を見て、銀髪の少女はふふんと再び胸を張っていた。
「まぁ、今後のこともちょろっと話したことだし、そろそろ今日の配信と行くかな。今日は一昨日も話したけれど、ゲーム配信だよ」
【今日はなににするんだ?】
【以前はアクション系だったっけ?】
【あ、しまった。アーカイブで見返そうとしていたの忘れていた!】
【あるあるだなぁ。まぁ、陛下の配信は高頻度だから仕方がないけど】
【おかげで、こっちとしては日々の仕事のストレス解消ができるからいいんだけどねぇ】
銀髪の少女の一言にコメント欄に、視聴者たちの声が表示されていく。
その一部を見て、銀髪の少女は得意げに笑った。
「まぁ、余は時間ならいっぱいあるからな! 今後も定期的に配信していくぞ! でも、無理をしなくてもいいからね? 見られるときに見たい分だけ見てくれればいい。ってなわけで、今日は初のRPG配信だぁ!」
【おお、まさかのRPG】
【てっきり、別のアクション系ゲームでもするんかと思っていたわ】
【ってことは、シリーズ化するって感じか】
【いつもの配信もいいけれど、ゲーム回の日常シーンもここのいいところだよなぁ】
【わかる】
コメント欄がそれぞれに思い思いの感想を口にする中、「それでなんのタイトルやんの?」というコメントが表示された。
銀髪の少女はそのコメントを目ざとく見つけ、「ふふん」と胸を張りながら言った。
「今日から始めるのは、PS初期の名作RPGだ!」
【ほほう?】
【PS初期かぁ。なんだかんだでもう三十年以上前になるよなぁ】
【だなぁ。あの頃に出たタイトルはどれもこれも名作だったなぁ。まぁ、「なんだこりゃ?」って内容もあるにはあったが】
【っつても、玉石混合はいつの時代も同じだろうよ】
視聴者たちがそれぞれに思い思いのコメントをしていく。
なお、話題に上がる「PS」とは、いまから三十年以上前に発売された家庭用ゲーム機である「ファンタズムステーション」の略称である。
現行の最新機は第五世代にまで至っているが、銀髪の少女が口にしたのは初代ファンタズムステーションのことだ。
現行機に比べると、CG技術は粗いものの、ストーリー性に溢れており、いまなお多くのプレイヤーの心を掴む神ゲーが多くある。
その「PS初期の名作RPG」に視聴者たちはそれぞれの想いの丈を口にしていた。
そんな様々な想いが行き交うコメントを眺めていた銀髪の少女はにんまりと邪悪そうに笑いながら、「それでタイトルだけど」といかにも楽しそうにアリサを見やりながら続けた。
「「聖櫃物語」をアリサにしてもらうことにした」
【……え?】
【よりにもよって「聖櫃」、だと?】
【ちょ、ちょっと、陛下?】
【ま、マジっすか?】
銀髪の少女が口にしたタイトルを聞き、ざわざわと視聴者たちが騒ぎ始める。
しかし、当のアリサは「はい」と元気よく頷いた。
相変わらず顔は赤いものの、服装で弄られるよりも、これからの配信に思いを馳せていることは明らかであった。
「姉様から「これはおすすめだよ」と言われまして、実機を貸していただいて今後進めて行こうと思っています」
【お、おう】
【ま、まぁ、おすすめするかしないかで言えば、たしかにおすすめはするけれど】
【ちなみに、ナンバリングは? PS初期ってことだから、初代だと思うんだけど】
「一応、初代と二作目を予定しています。姉様曰く、二作目の中盤あたりに差し掛かる「ホワイトなお家」あたりが特にいいよってことでしたので、いまからすごく楽しみです!」
アリサは目をきらきらと輝かせながら、銀髪の少女の言葉をなぞった。だが、その瞬間、視聴者たちはいままでとは別の意味で湧いた。
【へ、陛下ぁぁぁぁぁぁ!?】
【あ、あんたって人はぁぁぁぁぁぁ!】
【アリサっちを殺す気かっ!?】
【たしかに、あの辺りは涙なくしては見られない! けどさぁぁぁぁ!?】
コメント欄が阿鼻叫喚と化していく。だが、銀髪の少女は相変わらず、邪悪そうににんまりと笑うだけで、それ以上はなにも言わない。
アリサは銀髪の少女とコメント欄をそれぞれに見やりながら、「ふむ」と口元に指をあてて思案していた。
だが、すぐに「わかりました」と破顔すると──。
「そのあたりが死ぬほど面白いってことですね! さすがは姉様です!」
──曲解する一言をぶちまけてしまう。
アリサの一言に視聴者たちは狼狽し、「そ、そうじゃない」とか「違うんだ」とか言うものの、それ以上どう言えばいいかわからず、返答に困っていた。
そこに銀髪の少女がぽんとアリサの肩を軽やかに叩いたのだ。相変わらず、満面の笑みと書いて邪悪と読めるような笑みを浮かべながら。
「とにかく。アリサ。そろそろ始めようか」
「はい、姉様!」
元気いっぱいに頷くアリサに、銀髪の少女はとても楽しそうに、いや、愉しそうに見つめていた。
銀髪の少女の笑みを見て、視聴者たちは「悪魔だ」とコメントを書き込んでいく。そのコメントを見て銀髪の少女は「ふふん」と再び胸を張った。
「悪魔? なにを言うかと思えば。余が誰なのかを忘れたか、臣民ども! 余は魔王! 魔王シャルロッテ・E・ヴォーティガーンなり! 悪魔なんて下っ端と一緒にするな!」
銀髪の少女ことシャルロッテは、視聴者たちに向かって宣言する。その宣言を受けて、「そういやそうだった」と視聴者たちは納得のコメントを書き込んだ。
「その妹分、勇者の末裔アリサ! 頑張って「聖櫃物語」をプレイしようと思います!」
「うん、その意気だよ、アリサ。余をたっぷりと愉しませておくれ?」
「はい、お任せください!」
きらきらと目を輝かせるアリサといわゆる愉悦顔を浮かべるシャルロッテ。
あまりにも温度差のあるふたりを見て、視聴者たちはもうなにも言えなくなった。
そんな視聴者たちにシャルロッテは「あ、そうだった」とぽんと手を叩いた。
「まだタイトルコールしていなかったね」
「あ、そういえばそうでした。オープニングは流していましたけど」
「うん、じゃあ、一緒にやろうか、アリサ」
「はい、姉様」
シャルロッテとアリサはお互いを見合うと、一度深呼吸をした。そして再びお互いを見合い──。
「魔王シャルルと──」
「勇者の末裔アリサの──」
「──「作ってダンジョン!」はっじっまるよ~!」」
──声を合わせてのタイトルコールを行った。
これはひとりのメスガキ魔王とひとりの勇者が織りなす、「配信」を通して紡がれる物語である。
________________________________________________ 前書きでも言いましたが、今作はYouTuberというよりかは、VTuber寄りな配信と考えてもらえるとありがたいです。
更新日はいまのところ、毎週月曜日と木曜日の24時を予定しています。
次回は28日の月曜日の24時となります。
今作もどうかよろしくお願いします。
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