第15話愛よ再び
綱は雅子から最近様子が変だと意見を言うと、雅子は素直に、先日見た弥太郎と女性が一緒にいるところを見てしまった事を話した。
「弥太郎さんってあのブラジルに行ってた婚約者?もう帰ってきてたんだ。雅子さ、本当にその人が好きなら確かめたほうがいいよ」
綱がアドバイスしたが、雅子はあまり乗り気ではなかった。
「けど、本当にその女の人が好きだったらと考えると私…」
雅子が泣き出すと、綱はすぐ慰めた。
「何言ってんの!ブラジルに行った時から手紙やLINEのやりとりしてたでしょ!だから確かめるの!」
綱が励ました。
すると、雅子達の目の前に1台の高級車が止まり、中から萌音と執事の諸星が降りてきた。萌音は雅子達の姿を見つけると
「何メソメソしてんだ?ガンモ、貴様は」
萌音は開口一番そう言った。
「お嬢様、雅子様泣いてるからあまりそのような事は…」
諸星が注意すると、綱はこれまでの経緯を説明した。
「ガンモに婚約者だと!?貴様、恋愛マンガのヒロインか!」
萌音が叫ぶと
「お嬢様」
諸星が語気を強めた。
「その婚約者が、女性と一緒にいるところを見たけど、何者かわかっていないのか。貴様、アホか」
萌音がズバズバ言うのを諸星が止めようとしたが、
「カザーイン。私アホだよ。何も確かめないで泣き出すなんて」
雅子は下を向いていた。
「雅子…」
綱は心配そうに見つめていた。
「あれ?雅子ちゃん」
雅子が顔を上げるとそこには弥太郎がいた。
「弥太郎さん…」
雅子の声は小さかった。
綱は雅子に弥太郎のところに行くよう促した。
「偶然だね!あれ?雅子ちゃん、泣いてるの?」
「弥太郎さん、私…。弥太郎さんが女性と歩いているところ見ちゃって私それから不安で不安で学校で友達や後輩に心配されて…ずっと悲しかったんだ」
雅子の話をじっくり聞いた弥太郎は記憶を辿った。その事を思い出すと
「雅子ちゃん、不安にさせて申し訳ない。雅子ちゃんが言ってる女性は俺の同僚の滝川小夜って言って彼女は結婚してるし、ただ最寄り駅が一緒なだけだ」
「え?」
雅子は弥太郎からそう聞かされ、自分の勘違いだった事に気づいた。
「俺は、婚約が決まった時からずっと雅子ちゃんを思ってるから」
「弥太郎さん!」
雅子は弥太郎に抱きついた。
「よかったね。雅子」
綱は涙ぐんだ。
「全く!さっき泣いたカラスがもう笑った」
萌音がボソッと言ったが、目には涙を浮かべてた。
翌日、雅子は部活で全員に謝罪した。道成や玲司といった後輩達は雅子の元気そうな姿に安堵したが、後輩達は雅子に婚約者がいた事に驚いた。
「綱先輩と道成先輩は知ってたんですか?」
琥珀が尋ねると
「まあな。写真見た事あるけど、イケメンだったぞ」
道成がそう話すと
「俳優さんみたいだったよ。弥太郎さん」
綱が笑顔で答えた。
「あの時さ、たまたまいたカザーインがずっと文句言ってたよ」
綱がくすりと笑うと
「『ガンモ!貴様また人を巻き込んだな!いい加減にしろ!』とか『ガンモに婚約者だと!恋愛マンガか!』みたいな?」
道成がモノマネを交えて聞くと、綱は笑いながら首を縦に振った。
「道成先輩、カザーインのモノマネ似てますね」
琥珀が大笑いした。
「せめて先輩つけよう」
綱がツッコミを入れた。
雅子達が談笑をしていると、萌音が急に入ってきた。
「ガンモ!大変だ!北風先生が明日から入院だ!」
萌音は焦った。
「カザーイン!マジで!じゃあ担任と顧問は?」
雅子は心配すると
「担任は暫く副担任の先生だ。だが、問題は便利部の顧問だ」
萌音は困っていた。
便利部に緊張が走った。
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