第21話 黒羽さんと麻婆豆腐
この日は朝から猛暑だったので午前中に来店した真澄も全身汗だくだった。
店の冷房をあびてふにゃりと顔をとろけさせてからだらしなくテーブルに突っ伏している。女子のマナーとしてはどうかと思うが、この暑さなら仕方ないと考え黒羽はしばらく見守ることにした。
やがて暑さからある程度回復した真澄が上体を起こして言った。
「今日は麻婆豆腐をお願いしようかな」
「……麻婆豆腐ですか……?」
「暑いときこそ辛いものを食べて暑さを吹き飛ばすっていうからね」
「……かしこまりました……辛さは1~20までお選びいただけますが……」
「相変わらずこのお店は辛さの調節が細かいんだねえ」
「……お客様のお好みに合わせることができますから……」
「それじゃあ5辛でお願い。前の担々麵みたいなのはこりごりだからさ」
「……少々お待ちください……」
しばらくして運ばれてきた麻婆豆腐は確かに赤かったが食べてみると旨辛といった感じで思ったほど辛くはなく、食べ進めていく間に真澄はご飯が欲しくなった。
「ご飯をお願いできるかな?」
「……白米と五穀米がお選びできますか……どちらをお選びしますか……?」
「白米で!」
たっぷりとよそわれた白米を前にして真澄は目を輝かせた。
赤い麻婆豆腐をごはんにたっぷりとかけて勢いよくかきこむ。
白米の甘さと麻婆の辛さが絶妙に混ざり合い、とにかく箸が進む。
五杯もお代わりして気持ちのいい汗をかいた真澄は元気よく外に出るのだった。
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