第4話 生きるための作業
茫洋とした
娘は『俺』の体を抱き上げているのか、平均よりもやや小ぶりに見える胸を俺の頬に押し付けながら、時折ゆさゆさと体を揺らしている。これで赤子をあやしているつもりなのだろうか。
頭が上下に振られて気持ちが悪い。
放っておくといつまでも揺さぶられたままなので、俺は抗議の意味を含めて握りしめた右の拳を娘の胸に叩きつける。それは小さな赤子の手で、思い切り叩いたところで些かの衝撃も与えないだろうと思われた。
「ひっ!?」
俺が拳を娘の貧相な胸に叩きつけた瞬間、娘の口から恐怖に怯えた声が上がる。
「あぁっ……お、お許しを……ダン様、どうか、お気を静めてください……」
身を震わせて縮こまる娘。何をそんなに怯えているのだろうか。たかだか赤子の癇癪一つで。そう思って娘の顔を見上げると、顔面蒼白な娘の首筋に一振りの刀が押し当てられていた。
刀を握っているのは俺の小さな手である。思わず刀から手を放そうとしたが、何か抗うような感情が湧き上がり、俺は逆に強く刀を握りしめていた。
恐怖に引き攣っていなければ愛嬌もあるだろう娘の顔がいっそう青ざめて、目には涙が浮かび上がる。
あまり無駄に怖がらせても仕方ない。とりあえず揺さぶるのをやめた娘に満足して、俺は刀を持った右腕をだらりと下げた。
あからさまにほっとした様子で娘は息を吐き、上下の揺さぶりを再開させた。…………おい。
頭にきた俺は刀を持っていない左手で娘の胸を叩く。本当は頭を叩いて止めたかったが、いかんせん赤子の体では腕が短すぎて届かない。こんなことでは俺の怒りの半分も伝わらない。
こちらは望みもしない転生を無理強いされて、常々気が立っているのだ。
「あ、あ! ど、どうしよう……なんで機嫌悪いんですか、ダン様……? あ~よしよし!」
揺さぶりをさらに強くする娘。いい加減、俺も堪忍袋の緒が切れそうだ。そもそも前世からして俺は短気だったのだ。
「うううがーっ!」
「あ、あれ!? もっと機嫌が悪くなった!? ええと、ええと……もしかしてお腹が空きました?」
揺するな、と言いたかったのだがうまく声にならない。どうしたらきちんと意思が伝わるのだろうか。
そうこうしているうちに娘は一人で勝手に答えへ辿りついたのか、いったん揺さぶるのを止めると、片手に俺を抱きながらもう片手で器用にも自分の衣服のボタンを外していく。
突然何を始めたのかと訝しんでいると、娘はとうとう衣服を半分はだけて、慎ましやかな胸を覆う下着をずらしながら染み一つない白い肌をさらした。
娘は俺の体を抱えなおすと、さらけ出した胸の頭頂にある薄桃色の突起を眼前に近づけてくる。
「さ、さあ、ダン様。どうぞ、お腹いっぱい召し上がってください……」
たぶんこれは授乳しようとしているのだろう。赤子を前にした娘の行為に納得はした。だが、一つ大きな疑問は残る。
(……これ、出るのか?)
赤子の体は本能に素直なもので、娘の乳房を目にすれば空腹を訴えてきた。しかし、この若すぎる娘の薄い胸から、果たして腹を満たすだけの乳が出るものか。そもそも、出るのか。
ただ、授乳に集中している娘は先ほどのように俺の体を揺さぶったりせず、静かにじっと俺の反応を待っている。
揺さぶりを再開されても困るので、とりあえず目の前の食事は頂くことにした。半信半疑でゆっくりと薄桃色の突起を口に含む。
顎が疲れるほど吸ってみたが結局なにも出てこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます