エピローグ

飛行機は戦争の道具として生まれたのではなかった。

それは夢だった。遠くの家族に会いに行くための翼。大陸と大陸をつなぐ橋。重い荷物を運ぶ手。急病人を救うための速度。空から見える景色は、世界の広さと、美しさを教えてくれるものだった。

そして今、飛行機には人々の感情が乗っている。

再会の喜び。別れの涙。期待、緊張、安堵、勇気。

空港では、日々、人間のドラマが生まれている。


空を飛ぶことは、今では当たり前になった。

でも、空が当たり前だったことは、一度もない。


誰かが空を夢見て、風を測り、帆を張ったから。

誰かが「飛べるかもしれない」と本気で信じたから――。

     *

晴天の空。旅客機の窓から、地上が小さく見える。

風の中に、誰にも気づかれない会話が聴こえる。

(見て!兄さん、家があんなに小さいよ!)

(ああ、そうだな。)

声はすぐに風に消える。

でも、耳をすませば、どこかでまた聞こえる。

二人の夢は、今日も、晴天の空の中にある。




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