第21話 愛の告白、心の解放

戦いが終わり、古城の謁見の間には、

静寂が訪れていた。

崩れ落ちた瓦礫の中に、

私とレオンハルト、

そしてユズが座り込んでいる。

私たちの周りには、

ヴァルシュ=ゼネリク王国の兵士たち。

皆、疲弊しきっていたが、

その顔には、勝利の安堵が浮かんでいた。


レオンハルトの傷は深く、

背中を庇った時の痛みが、

まだ彼の顔に刻まれている。

だが、その瞳は、確かな光を宿していた。

私は、彼の手を握りしめたまま、

何も言わずに、ただ、そこに座っていた。

私の心は、まだ、激しく揺れている。

あの、ゼウスの言葉。

「君は、私の計画を、

より完璧なものにするための、

最後の切り札だ。」

そして、あの裏切り者。

「社会があなたを殺すだけ」

過去の呪縛は、確かに打ち破られた。

だが、その傷跡は、まだ残っている。


その時、レオンハルトが、

ゆっくりと、私の顔を見上げた。

彼の瞳は、私をまっすぐに見つめている。

「凛。」

彼の声が、静かに響いた。

それは、私を呼ぶ、優しい声。

「私は、君を愛している。」

彼の言葉は、迷いなく、

そして、確かな響きを持っていた。

私の心臓が、大きく跳ねる。

再び、あの温かい感情が、

私の心の奥底から、

溢れ出そうとする。


「君が誰であろうと、

どんな過去を背負っていようと関係ない。」

レオンハルトは、私の手を強く握りしめた。

「君を『ゼロ』にした世界に、

俺が『1』を刻む。

君の生きた証を、俺が背負う。」

彼の言葉が、私の心の壁を、

完全に打ち破った。

「君の呪いも、過去も、

全て、私が受け止めよう。

だから、君も、私を信じてくれ。」

彼の言葉は、私を包み込むように、

優しく、そして力強かった。


私の瞳から、再び涙が溢れ出した。

それは、悲しみの涙ではない。

喜びと、安堵と、

そして、彼への愛の涙だった。

私は、彼の告白を受け入れる。

感情に振り回されるのは、

もうこりごりだと、決めたはずなのに。

彼の言葉が、私の心を、

これほどまでに温める。

それが、私にとって、

かけがえのないものだと、

今、確信した。


「……信じる。」

私の声は、震えていたが、

確かな響きを持っていた。

それは、私がこの世界に来てから、

最も勇気のいる、

そして、最も大切な言葉だった。

レオンハルトは、私の言葉を聞くと、

深く安堵したように、微笑んだ。

そして、ゆっくりと、

私を抱きしめた。

彼の腕の中は、

温かく、私を安心させる場所だった。


その時、ユズが、

私たちの傍に、ゆっくりと近づいてきた。

彼の顔は、涙でぐしゃぐしゃだ。

「ゼロさん……レオンハルトさん……」

彼の声は、震えていた。

彼は、私たちの会話を、

全て聞いていたのだろう。

彼の瞳には、複雑な感情が入り混じっていた。

私への憧れ。

そして、私を失うかもしれないという悲しみ。

だが、その奥には、

私たちの幸せを願う、

純粋な喜びが宿っていた。


ユズは、私たちを見つめ、

ゆっくりと、笑みを浮かべた。

それは、少し寂しげで、

けれど、彼の優しさが詰まった笑顔だった。

「よかった……本当に、よかった……」

彼の言葉は、私たちへの祝福だった。

私は、ユズの頭を、

そっと撫でた。

「ありがとう、ユズ。」

私の声には、感謝と、

そして、彼への深い愛情が込められていた。


その時、ティナが、

ギルドの仲間たちと共に、

謁見の間に駆け込んできた。

彼女は、私たちの姿を見ると、

安堵したように、大きく息を吐いた。

彼女の瞳には、希望の光が宿っていた。

ティナは、私たちの傍に近づき、

優しく微笑んだ。

「ゼロさん、レオンハルト司令官……

本当にお疲れ様でした。

そして……おめでとう。」

彼女の言葉は、私の心を、

深く温めた。

彼女もまた、私と同じ苦しみを経験した者。

だからこそ、彼女の言葉は、

私の心に、深く響いた。


レオンハルトは、

ティナに、深く頭を下げた。

「ティナ、君にも感謝する。

君の支えがなければ、

ここまで来ることはできなかった。」

彼の言葉に、ティナは、

嬉しそうに、けれど少し照れたように微笑んだ。

ティナの瞳には、確かな輝きが宿っている。

彼女もまた、この世界の「ゼロ・コード」と戦い、

そして、それを乗り越えてきたのだ。


戦いは終わった。

私の過去は、完全に清算された。

そして、この世界の闇も、

打ち破られた。

私は、レオンハルトの手を握りしめたまま、

夜明けの光が差し込む城の窓を眺めた。

彼の傍にいること。

そして、彼と共に、

この世界の未来を築いていくこと。

それが、今の私の、

最も大切な使命だった。

私の銃身に刻まれた「Ø」の記号が、

朝日の光を浴びて、

強く、輝いていた。

それは、もはや「ゼロ」の烙印ではない。

私自身の、確かな存在の証。

そして、愛と希望の光。


夜明けの空は、

澄み渡り、

新しい一日の始まりを告げていた。

私の心は、もう、揺れていない。

感情を捨てたはずの私の中に、

芽生えた、かけがえのない感情。

それは、私を弱くするものではなく、

私を、人間らしく、

そして、強くしていくものだった。

私は、レオンハルトに寄り添い、

静かに目を閉じた。

彼の温かい体温が、

私を包み込む。

それは、私にとって、

何よりも、心強いものだった。

私たちの物語は、

ここから、

真の始まりを迎える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る