第19話 それぞれの戦い、守るべきもの、そして心の叫び
古城の謁見の間は、
突如として戦場と化した。
私の故郷から来た刺客たち、
そして、黒幕ゼウスが率いる魔導兵。
対峙するのは、
レオンハルトのヴァルシュ=ゼネリク王国軍と、
私。
そして、私を追う「社会的な死」の執行者、
あの裏切り者が、ゼウスの傍らに立っていた。
レオンハルトは、
鋭い指示を飛ばし、部隊を動かす。
剣と魔法が交錯し、
激しい戦闘が繰り広げられる。
兵士たちは、ゼウスの魔導兵に対し、
勇敢に立ち向かっていた。
私もまた、魔道銃を構え、
狙撃を開始する。
パンッ、パンッ!
私の放つ魔力弾は、
確実に敵を仕留めていく。
死角からの狙撃は、彼らには対処できない。
裏切り者は、私をじっと見つめ、
不気味な笑みを浮かべた。
「雨宮凛、君は変わったな。
感情を捨てたはずなのに、
今、誰かのために戦っている。」
彼の言葉が、私の心を抉る。
私は、あの時の銃声と、
彼の冷酷な顔を思い出した。
「私は殺さない。社会があなたを殺すだけ」
その言葉が、私の脳裏にこだまする。
私は、彼へと銃口を向けた。
だが、ゼウスが、その間に割って入る。
「私の計画の邪魔をするな、異世界の女よ。」
ゼウスは、手を掲げ、
私に向け、強力な魔力を放った。
その魔力は、私を捕らえようとする。
私は、それを避けるため、
素早く移動した。
彼の魔力は、この世界の魔導師とは比べ物にならない。
桁違いの力だ。
レオンハルトが、
ゼウスへと剣を突き立てる。
「セリーネの無念は、私が晴らす!
これ以上、この世界を歪ませるな!」
彼の言葉には、妹への深い愛情と、
この世界を守ろうとする、
強い決意が込められていた。
だが、ゼウスは、レオンハルトの攻撃を、
軽々と弾き飛ばす。
ゼウスの力は、レオンハルトの想像を
遥かに超えていた。
その時、城の奥から、
小さな影が飛び出してきた。
ユズだった。
彼は、クロスボウを構え、
ゼウスに向かって矢を放つ。
「ゼロさんを、助けるんだ!」
彼の声は、震えていたが、
強い決意に満ちていた。
ユズは、私が残れと言ったのに、
私を助けに来たのだ。
彼の純粋な勇気が、私の心を、
深く揺さぶる。
私は、彼を守らなければならない。
あの時の私のように、
「社会に殺される」ような目に、
遭わせたくない。
ユズの矢は、ゼウスには届かない。
ゼウスは、ユズを一瞥し、
冷酷な笑みを浮かべた。
「邪魔な虫が……消えろ。」
彼は、ユズに向け、魔力を放とうとする。
私は、その動きに気づき、
ユズの前に飛び出した。
──ドンッ!
私の背中に、激しい衝撃が走る。
ゼウスの魔力を、私が受け止めたのだ。
身体が、内側から燃えるような痛み。
私は、その場に膝をついた。
血が、口の端から流れ出る。
「ゼロさん!」
ユズが、叫んだ。
彼の瞳には、恐怖と、
そして、悲しみが浮かんでいる。
レオンハルトも、私の元へと駆け寄ってきた。
「凛! なぜ、こんな無茶を!」
彼の声には、怒り、
そして、私への深い愛情が混じっていた。
私は、彼の言葉に、
何も答えることができなかった。
ただ、息を荒げ、
目の前の敵を見据える。
ゼウスは、私を見下ろし、
嘲るように言った。
「愚かな女め。
感情に振り回されては、
真の力は発揮できない。」
彼の言葉は、私の心を抉る。
感情は、私を弱くする。
そう、私は知っている。
だが、それでも、
私は、彼らを守りたい。
レオンハルト。
ユズ。
ティナ。
そして、この世界。
彼らが、私の傍にいる。
彼らの存在が、私に力を与えてくれる。
私の脳裏に、あの男の顔が蘇る。
「私は殺さない。社会があなたを殺すだけ」
そして、あの裏切り者。
「お前を、探しに来た。」
彼らの言葉が、私を縛り付けていた。
私を「ゼロ」にした呪縛。
しかし、もう、違う。
私は、彼らを、見つめ返す。
私の瞳には、
揺るぎない決意が宿っていた。
私は、立ち上がった。
背中の痛みが、全身に広がる。
しかし、その痛みは、
私の心を、さらに強くする。
私は、魔道銃を構え、
ゼウスと裏切り者、そして刺客たちへと
銃口を向けた。
レオンハルトが、私の傍に立つ。
彼の白いスカーフが、
激しい風の中で、翻る。
その姿は、私を支える、
確かな存在だった。
そして、私の心の中から、
抑えきれない感情が、
ほとばしり出た。
それは、怒りでも、憎しみでもない。
赦しを求める、魂の叫び。
「私を殺したのは、裏切りじゃない。」
私の声は、震えていたが、
謁見の間に、響き渡った。
「信じることをやめた私自身だ——。」
ゼウスと裏切り者が、驚いたように目を見開く。
私の言葉に、彼らは動揺している。
「でも、もう逃げない。」
私は、彼らをまっすぐに見つめた。
その瞳には、かつてないほどの、
強い光が宿っていた。
「たとえ、また裏切られても、」
私は、震える声で続けた。
「私はこの世界で“誰かを信じる自分”で生きていく!」
私の心の叫びが、謁見の間に響き渡る。
それは、過去の呪縛からの解放。
そして、私自身の存在を、
肯定する言葉だった。
私を「ゼロ」にした世界で、
私は、もう一度、
「私」として、生きることを選んだのだ。
私の銃身に刻まれた「Ø」の記号が、
強く、強く、輝きを放つ。
それは、もはや「ゼロ」の烙印ではない。
私自身の、確かな存在の証。
戦いは、まだ終わらない。
だが、私は、もう、恐れない。
私は、彼らと共に、
この世界の闇を打ち破る。
そして、私自身の、
新しい未来を掴み取るために、戦う。
謁見の間は、再び、
剣と魔法の音で満たされた。
これは、私と、この世界の運命を賭けた、
最後の戦いだ。
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