Ep.1:#6 空色縞瑪瑙-Blue Lace Agate-


個室の静けさの中、私はローテーブルに置かれたトレーから、さっき選んだブルーレースアゲートをひとつ手に取った。淡い水色と白が重なるその模様を、指先でそっとなぞるように撫でた。


しばらく沈黙が続いたあと、お姉さんがポツリと口を開いた。


「紬ちゃん、学校楽しい?」

唐突な問いかけに、私は少し驚いて顔を上げた。

「うん……楽しいよ……」

お姉さんは両手でほっぺたを支えながら続けた。

「紬ちゃんくらいの年頃って、友達付き合いとか難しかったりするよねぇ」

私は こくんと小さくうなずいた。


「お姉さんは、中学生のときどうだった?」

「私はねぇ~人と接するのが怖かったなぁ…」

「え。そうなの?」


お姉さんは、苦笑いを浮かべながら言葉を続けた。

「今の私からじゃ想像できないでしょ?」

戸惑いながら小さくうなずく。


「私ね。昔から、人の感情とか、ちょっとした悪意とか――そういうのを感じ取りやすかったの。 だから大勢といると疲れやすくって。

それに、感情移入ってわかる? 人が悲しんでたり、辛そうなら自分までつられちゃうんだ。 だから、自分を保つために弱いところみせたくなくて、強がったりするの必死だった。」

「そうなんだ…今も強がったりするの?」

お姉さんは首を横に振ってこたえてくれた。

「今は、強がることはしてないかな。 でも、中学生の頃は そのせいで、よく友達とトラブルになってた。」

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