ルピアレコード-ある記憶の断片-

みるとん

序章 芽吹

 最初の記憶は、声だった。

 誰のものかは思い出せない。

 とても優しくて、温かい、まるで陽だまりのような——。


「君はまた選ばれた。これは何度目だったかな」


 別の声がわたしを現実へと誘《いざな》う。この穏やかな夢の中に身を委ねていたい。微睡の中でわたしは必死に抵抗した。しかし無情にも意識は現実へと浮上する。


 けれど思考は靄に包まれ、自身の輪郭さえ霞んでいる。ここにいる理由も、居場所さえ不確かなまま。それでも──。


「今度こそ」

 湧き上がる何かがわたしにそう告げるのだ。

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