第6話 85歳ワンパク父のぼやき(8/7、11日)


会期の中でもお盆となれば特に混雑が予想されるはずだ。

10日から九州を中心に西日本で災害級の豪雨が続き、大阪の空もどんより。

イベントの中止も相次ぎ、場内にはどこか不安を帯びた空気も漂っていた。

前日9日、僕は「いのちミュージックフェス」Matsuriを観覧するため、

ワンパクを決行。元N山本彩さんの心地よい新曲らしい夏の歌。

ガリレオガリレイ、お目当てのACIDMANのライブ

Null2の落合さんのVJコラボが最高にカッコイイ!大盛り上がりだった。

お盆休み初日だけあって、万博会場も人の波。

ライブを楽しんだあとは、パビリオンに並ぶ気力も尽きた。

帰り際、目に入ったのは「飯田グループ&大阪公立大学共同出展」。

待ち時間15分ならいける、と列に加わる。西陣織の外観をくぐると、

そこは人工光合成の実験や巨大な未来都市の模型が並ぶ空間だった。

派手さはないが、どれも現実味があり好印象。特に「メディカルトイレ」は衝撃的だった。

排泄物を自動で検査し、健康状態を管理してくれる。

未来の暮らしが、すぐそこにあるような感覚だ。

家に帰ると、すぐ父に勧めた。「飯田館、並べそうなら入った方がいいよ」


どうやら父には一つのこだわりがある。

「英語やカタカナは分からん。やっぱ日本語やないと」

だからその点でも未来の都市や大阪ヘルスケア、関西パビリオン、パソナなど日本系が良さそう。

でも海外でもドイツや韓国のように派手な演出があれば、評価は高いらしい。

7日はそこそこ回れた父。さて、8月11日はどうだったのか。


11日、昼前、母からLINEが届く。

「昼前に万博行きました 早く帰ってくる」

父、またワンパク冒険に出動である。

どうやら狙いは、孫が欲しがっているブラックミャクミャクとサンリオキャラのキーホルダー。

しかも入手は朝イチ、西ゲートの近鉄オフィシャルショップ限定…。

高齢者でなくても入手難易度は激高い!

案の定、父から電話。「あかん!ない!

んでどこもいっぱいであかん! 当日予約登録機もメッチャ並んでて、この前の数倍の列や!」

スマホが使えない父には、当日予約は事実上不可能だ。

「適当に歩いて考えるわぁ〜」と、少し残念そうな声。

僕はふと思う。

「父の代わりに、自宅からログインして当日予約ってできるんだろうか?」

だがワンタイムパスが父のGmailに届く仕様。まずそこを突破しなければならない。

午後3時、僕は父に伝える。

「今日はトリニダード・トバゴのナショナルデーやから、大屋根リング下でパレードあるよ」

父が帰宅したのは夜8時。

「なんだかんだで楽しんだで!」と笑顔だ。

モナコパビリオンでは「30分待ち」と聞いて並んだのに、中でさらに40分待たされ、しかも望遠鏡が2台しかない。望遠鏡?

「そら混むわ!」と母に力説していた。まだ僕は入ってないが、望遠鏡を覗くとモナコの街が見えるらしい。

そして、今日の一番のお気に入りはトリニダード・トバゴのパレード。

レイガーデンの終着点近くで、偶然知り合った女性と世間話しながら見物。

アオの噴水ショー(父はなぜか“水中ショー”と言う)の観覧ポイントまで教えてもらったようだ。

父は昔から言い間違いが多い。

大阪土産で有名な「リクローおじさん」のチーズケーキを「リクルートおじさん」と呼び、平然とチーズケーキを買ってくる。

モナコの発音も面白い。モォナコ。と言うから母と二人で笑ってしまった。

ナマコみたいだ。最近食べてないな・・・海鼠・・・・

空飛ぶ車にも入ったが「乗って写真撮れるわけでもないあれば車なんか?」と即退場。

帰り道、東ゲートの水槽のとこ「タツノオトシゴがおるで」と伝えたら、LINEで

「ぱれぃとよかっでかえりにおとしごみてかえる」

と僕だから解るLINEを送ってきたが、結局オトシゴは見つけられなかったそうだ。

次の予定は8月20日、母も連れて万博くら寿司。…のはずが、父が突然、

「14日行くわ!」

そういえば7日前予約は外れたけど、14日の来場予約も入れていたのだった。

7日前予約は複数人だと厳しいのかもしれない。

僕はいつも「ギリギリ登録」では当たった試しがなく、2週間前や1か月前に登録した時の方が当たる気がする。実際どういう抽選システムなんだろうね。

14日はお盆真っ只中。アメリカ館とフランス館、二つだけ狙って行く作戦らしい。

父は言う。

「朝早く行ってゲート前で並ぶのと、昼から行って並ぶの、どっちがツライんやろ?」

朝からインパクしたことがない僕より、今や父の方が万博にハマっている。

「お盆やし、亡くなった友達も帰ってくるしな!」と、

どこか祭り前の少年のように張り切っている。


そうそう!80歳以上は優先レーンでどうぞ!と言ってくれたドイツ館とは違い

いくつかパビリオンのスタッフに聞いてみたけど80歳過ぎようが優先から入れてもらえなかったらしい。同年代であろうお婆さんと家族四人やベビーカーで優先レーンを通る夫婦を横目に見ながら思ったらしい。

わしも車椅子乗ったら入れるんか?とぼやいてた。

ベビーカーの優先がなくなってるとぼやくXで見かけたポストに

未来の万博なのに高齢者が優遇されている。と・・・僕は疑問でしかない。

残された短いであろう時間を全うしたい人とこれから成長する子供達の未来のために

万博パビリオンに入って何を考え何を知るんだろう?

ベビーカー優先は大事な事だと思うけどベビーカーの後ろで大名行列している家族。

幼稚園児ぐらいをベビーカーに乗せて猛スピードで走り抜けていく男に轢かれそうになったわ!という体験をしていると仕方ない。

少子化に幼き命や女性を守り優遇されるべきだと思うが

今まで税金を納め働き育ててくれた高齢者を優遇じゃなくても優しく譲ったり

お年寄りならではの愚痴や不平ぐらい飲み込める社会であって欲しいけど

人それぞれ、人を否定する事で承認欲求をえる事に快楽を感じるぐらいなら

いいね!の数字より、誰かの親孝行のためにこの冒険記が役に立てばいいなぁ。

と思うのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る