ep.71

『彼氏というか…ただ復縁しただけです』

「よかったじゃない」

『まぁ…』

「?

嬉しくないの?」

『そういうわけじゃないですど、これでよかったのか自問自答中です』

「まぁ、恋愛なんて正解がないからね。悩んで自分の道を見つけるしかないのよ」

『ですよね…』


私は如月さんがいるのにも構わず、千葉さんに恋愛相談なるものをした。


彼は気まずそうにしている。


如月さんも交えて話す話ではなかったようだ。


私達三人は談笑を交えながらお昼の食事を楽しんだ。


まだまだ仕事は山積みに残ってる。


束の間の休息だった。


『ぁ…』


午後の就業時間が始まり、私は自分のシフトスケジュールを組もうとした。


そこでふと気づく。


蒼ちゃんと休み合わせられそうだな、と。


連絡してみよう。


私はチャットメッセージアプリを開いた。


《蒼ちゃん、ちょっといい?》

〈なに?〉

《今、今月のシフト組んでるんだけど休み合わせる?》

〈平日休めるの?〉

《毎週は厳しいかもだけど、何日かは作れるよ》

〈じゃあ、月曜か火曜日休み入れられる?〉

《月曜日は無理だけど火曜ならなんとかなると思う。ちょっと組んでみるね》

〈お願い〉


私はアプリを閉じた。


月曜日は仕事が一番山積みになる日なので休むことは出来ない。


だが、火曜日ならなんとかなるだろう。


週始めの残業は確定だが。


私はパソコンと向き合って仕事のスケジュールと休日を組み込んだ。


自分一人のスケジュールなので三十分もあれば終わるだろう。


この後も仕事が詰まっている。


時間をかけていられない。



—————

—————


pipipi...


夜。


定時を過ぎ、そろそろ帰ろうとしたその時。


スマホから電話を知らせる音が鳴った。


画面を確認すると蒼ちゃんの名前表示が。


《もしもし?》

〈…仕事終わった?〉

《へ?ああ…うん。今帰るとこ》

〈場所どこ?〉

《え?》

〈会社の。

迎え行くよ。ご飯でも食べいこう〉

《あ、えっと…》


私は少し強引な蒼ちゃんに驚きながらも、会社の住所を素直に伝えた。


今日はなにも約束してないはずなのだが。


何か用事だろうか。


私は待たせるといけないので急いで帰る支度をする。


まだ仕事に励んでいる如月さんに挨拶して私はオフィスを後にした。


まだ定時を過ぎて数十分。


本社の正門は帰宅する社員でいっぱいだった。


電話をして数分なのでまだいないだろうと思っていたが、何故だか彼はいた。


傍らには相澤さんと女性が数名。


今からあの集団に紛れなきゃいけないのだろうか。


絶対に嫌だ。


こっそり帰ろう。


人混みに紛れれば、きっとバレない筈。

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