日常を描いた、とても素晴らしい掌編小説でした。
- ★★★ Excellent!!!
この作品には、「続かない自分」を受け入れた語り手の静かな自己肯定と、他者との比較を通じた誠実な自己認識が、じわじわと胸に沁みる力があります。
特に「それはそれ、これはこれ」という一文には、開き直りのようでいて優しさを含んだ哲学が込められており、読後に静かな余韻を残します。
タイトルの「諦め手帳」も、皮肉でありながら未来への確かな第一歩として機能しており、その構成の巧みさに感心しました。
ひと言で表現するなら、「諦め」と「希望」のあわいに立つ、等身大の春の物語。この作品が初めてでしたが、小狸さんの次回作にもぜひ触れてみたくなりました。