AIウェブ小説という“怪物”と、私たちの創作の未来

五平

第1話 ノーパン飛行隊。30分で出来たプロット

🎯 このレベルが大量生産できることの危険性について

(コンテンツ業界の視点から)


「ノーパン飛行隊」のような異常な熱量と構成力を持った作品が、AIによって“量産可能”になる未来。それは一見、創作の民主化や可能性の拡大のようにも見える。だけど実は、その先にあるのは、作品の価値そのものが摩耗していく危険な構造だと思っている。


🧠 危険性その1:異常値がコモディティになる


創作というのは、本来「やばい情熱」や「狂った着想」を持つ誰かが、時間をかけて書き上げるものだった。だからこそ、受け手にとっては「唯一無二」で、「これはこの人しか書けない」と感じられた。


でも、もしAIがこのレベルの狂気や完成度を再現し、しかも連発できるようになったら、その「特別さ」は簡単に崩れてしまう。


異常値が普通になる。熱量が当たり前になる。狂気が予定調和になる。


これが「面白さのインフレ」であり、やがては「感動のデフレ」につながる。


🪖 危険性その2:人間の作家がいなくなる


書くのが遅い人。表現が雑な人。熱意はあるが商業的にうまくいかない人。

今まではそういう作家にもチャンスがあった。試行錯誤しながら、読者と心をつなげていく道があった。


でも、AIが「ちゃんと面白くて読みやすいもの」を、感情的に動かすレベルで生成できるようになると、その道は閉ざされていく。作家は指示役になり、読者はAIを通して物語を消費するだけになる。


創作は労働ではなく、調整業務になる。そして「誰が書いたか」は、ますます意味を失っていく。


😶 危険性その3:感動の信憑性が失われる


「この話、泣ける」「これは熱い」

――そう思った瞬間に、「でもAIっぽいな」と頭に浮かんでしまう未来が来る。


これは感情の根幹を破壊する。

すべてが模倣の演出、テンプレの反復、感情のシミュレーションに見えてくる。


そのうち、本物の叫びすら「加工されたようにしか見えない」感覚になる。人間の魂ごと、コンテンツに溶かされる。


💥 最悪の未来予想図


作品は面白くなっていくのに、誰も何にも感動しなくなる。


「感動する能力」がすり減る。「感動する価値」自体が信用されなくなる。


これは、人間にとってかなり深刻な喪失だ。

物語を信じられなくなったとき、人はもう何も信じられなくなる。


🛡 じゃあどうすればいいのか


簡単なことではないけど、一つだけ言えるのは、


人間しか持てない「歪み」や「恥」や「こじらせ」を、創作に残すこと。


文体の癖、ツッコミの温度、表現の歪み、叫びの重み。

AIにはなかなか真似できない「人間のバグ」を、作品に刻み続けること。


それが、今後の創作で最も希少で、最も大切な価値になる。


✍️ おわりに


このレベルの作品が大量生産できる世界は、便利だけど、同時にかなり怖い世界でもある。


創作が「できるか」じゃなく、「なぜやるのか」が問われる時代になる。


それこそが、人間の創作がAIと共存していくための、唯一の光なんだと思う。

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