転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する
ありぽん
第1話 神様のミスと「どちてよー!!」から始まる異世界生活
「どちてよー!!」
私の叫びが、虚しく空気に溶けるように消えていく。そりゃそうだ。ここは島も陸地もまったく見えない、どこまでも広がる海のど真ん中。その中に、ぽつんと浮かぶ、浮き島みたいな場所に、私はいるんだから。
おい、ちょっと神様! どういうことよ!? ちゃんと人のいる場所に転生させてくれるって言ってたよね!?
それに、転生直後で何も持ってなかったら、生活できないから。この世界で暮らすために必要なもの、少しのお金とか食べ物とか、ちゃんと持たせてくれるって、そう言ったじゃん!! どこにもそれが入ってるバックが見当たらないんだけど!?
いやいや、その前に! 私、どうすればいいのよ!? 大人どころか若者ですらなくて、今の私は完全に幼児の姿なんだけど!? こんなんで、どうやって異世界で生きていけっていうのよ!!
最近は、仕事で後輩がとんでもないミスをしても、ここまでパニックになることなんてなかったし。むしろ、神様のミスで死んだって言われた時ですら、ここまで取り乱さなかったのに。今、めちゃくちゃパニック中だよ。
まさか……、またミスった? いやいやいや、ここでミスられても困るんだけど!? なに? こんなちびっ子の姿で、こんな海のど真ん中、何もない浮き島に私を転生させて、また私に死ねと!?
ねぇ、ちょっと! 私のことが見えてるなら、今すぐここに来て、ちゃんと説明してよ!!
私の心の声に、あいつは何も答えない。見えてるはずだよね? だって向こうでは私のことを見てて、しかもミスって、私を死なせたんだから。それに送り出す時も、見守ってるって。……もしかして、自分のミスに気づいて、逃げてるんじゃ?
実は、私は数時間前までは、地球の日本で高橋舞として生きていたんだ。その日も、何の変わり映えもない、いつも通りの日常で。いつも通りに出勤して、いつも通りに残業して、会社を出たのは夜の22時。
そうしていつものように、駅に向かって歩いていたんだけど。信号待ちをしていた時、突然後ろから誰かに押されて、道路に飛び出した私は車に轢かてしまったの。
轢かれる前、目の前から迫ってくる車が、スローモーションみたいに見えて。ああ、私、死んだなって思ったよ。
そして体に衝撃を感じた瞬間、ハッ!! とすると。何故か私は真っ白な空間にいて。しかも私の目の前には、土下座している若い男が。状況は飲み込めず、ボケっとしている私に、その男はこう言った。
『申し訳ありません!!』
ってね。
話しを聞くと、なんとこの若い男、みんなが言うところの神様で。私が車に轢かれた時、本当は別の人が車に轢かれそうになる予定で。そこを別の誰かが助けて、全員無事で済むはずだったらしいんだけど。
神様がミスって、私は巻き込まれて死んでしまったらしい。
車に轢かれて死んだと、ちゃんと理解していたから。死んだということに関しては、別にパニックにならずに。ああ、そう、やっぱり死んだんだ、って思ったくらいだった。
だけど、もちろん神のミスには怒ったよ。2ヶ月前、後輩が起こした重大なミスを、私が全部フォローして、結果的にプロジェクトは大成功。そのおかげで昇進まで決まって。なのに、よりによって、その報告を聞いたその夜に轢かれて死ぬなんて。
それで一応、聞いてみたんだよ。神様のミスなんだから、元に戻してくれないの? って。でも神様の答えは……。
たとえ自分のミスで私が死んだとしても、元いた世界に、元のままの状態で戻すことはできない。そんなことをすれば、またいろいろと厄介な問題が起きるから、だって。
まぁ、死人が生き返ったら問題なのは確かなんだけど……。もう、ため息しか出なかったよ。
だけどここで神様が私に、ある提案をしてきたんだ。ミスのお詫びに、元の世界には戻せないけど、新しい世界に行くのなら問題ないから、転生させてあげられるって。
まさかの展開だった。えっ、転生できるんだ!? って。しかもその世界で、すぐに生活できるように、今までの記憶はそのままにして、言葉が話せるように言語能力や他の力もくれるし。当面の間の、必需品もちゃんと持たせてくれると。
どうやら、人が住んでいるのは地球だけではなく、他にもさまざまな世界があるらしく。中には、私の大好きなライトノベルに出てくる、魔法と剣と魔獣が存在する、異世界ファンタジーのような世界もあり。
もし私がその世界でよければ、そこに転生して、新しい人生を自由に生きれば良いって。
はい、速攻で決断しました。だって私の大好きな異世界ファンタジーの世界だよ? しかも私の大好きなもふもふやカッコイイ、家族や仲間になれる魔獣もいるっていうんだから、行かないわけないでしょう!!
……危険な魔獣もいるらしいけど。まぁ、その辺はね。ライトノベルと同じ異世界ファンタジーなら、そんな魔獣もいるのは当たり前だし。そんなことを言ったら人だって、危険な人はいるんだから。
こうして私の異世界転生が決まり、転生する前に、向こうの世界に着いた時の事を、詳しく聞くことになったんだ。
まず、転生する場所は、人に見つからないような場所だけど、すぐに街へ移動できる場所で。
私の年齢は25歳だったんだけど、転生先ではもう少し若く、そこの世界で成人とされる、15歳の姿にしてくれるって。まさかの若返りつき! それを聞いて、さらにテンションが上がっちゃったよ。
それから必要最低限の荷物を、マジックバックという。まさに、異世界ファンタジーに出てくる、特別なバックに入れて持たせてくれることに。
どんなバックかと言えば。見た目はごく普通の、A4サイズの荷物が入るバックなんだけど。実はとんでもなく大容量で、どれだけ大きな物でもすっぽり収納でき。
しかも、中にいくら物が入っていても、重さをほとんど感じることもなく。欲しい物はイメージするだけで、すぐに手元に出てくるっていう、不思議なバックね。
後は、新しい世界には、人以外にも獣人やエルフ、たくさんの種族が生きているから。どこへ行っても、どんなん人とも話せるように、言語能力をもらって。いろいろな魔法も、使えるようにしてくれたよ。
使える魔法は、火・水・風・土・光の五属性。普通の人は、だいたい三属性くらいしか扱えないらしいんだけど、私は特別に五属性全てを使えるようにしてくれたみたい。
ただし、最初はみんなと同じく、初級魔法からのスタート。レベルを上げたければ、とにかく練習あるのみだって。
5属性使えて大丈夫なのか、変に目立たないか聞いたら、大丈夫、大丈夫って笑ってたよ。今じゃその大丈夫も、完璧に信用できないけど……。
こうしてあれやこれや、話しを聞き終われば。ついに私の異世界転移の時間に。神様は最後にもう1度私に謝ったよ。
『本当にすまなかった。新しい世界で、自由に楽しく生きてほしい。俺は君を見守っているから』
その言葉と共に、私を真っ白な光が包んで、あまりの眩しさに目を瞑ったよ。そうして次に目を開けると……。
そこは島も陸地もまったく見えない、どこまでも広がる海のど真ん中。その中に、ぽつんと浮かぶ、浮島みたいな場所に、私は座っていたんだ。
わけが分からないまま、とりあえずマジックカバンを探してみたけど、どこにも見当たらず。
しかも、バックを探している時の、自分の体の動きがおかしくて。なんなの? と思って、自分の体を調べてみれば、いろいろとサイズがおかしく。
すぐそばに、木が映っている綺麗な水たまりがあったから、すぐにそこまでよちよちと歩いて行って、自分の姿を水溜まりに映してみたよ。……そうしたら、私の体はどう見ても、2、3歳くらいの幼児の姿だったんだ。
ここはどこ? 街が近くにあるんじゃないの? それに歳は15歳のはずで、マジックバックを持たせてくれるって。なのに、何ひとつ、神様が言っていたことが守られてない。話が違いすぎる!
だから私は叫んだんだ。
「どちてよー!!」
って。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
【あとがき】
お読みいただきありがとうございます。ありぽんです。
こちらの新作
『カドカワBOOKS10周年記念長編コンテスト』
に参加中です。
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