第2話 猛攻の序曲
静寂を破り、大地を揺るがす轟音が鳴り響いた。ヴァルガス帝国軍の先鋒が、ついにアルトリウスの最終防衛ラインである砦に到達したのだ。
空を覆う巨大な投石器が火を噴き、巨大な岩石が唸りを上げて飛来する。砦の頑丈な石壁に激突するたび、地鳴りのような音が響き、粉塵が舞い上がった。
その間隙を縫うように、無数の帝国兵が雄叫びを上げて押し寄せる。彼らは幾重もの隊列を組み、まるで意志を持った津波のように砦の門を目指した。
「構え! 弓兵、一斉射撃!」
ガレスの低い、しかし力強い号令が響き渡る。彼の指示に従い、砦の壁に並んだ弓兵たちが一斉に弦を放つ。放たれた矢の雨が、帝国兵の密集した隊列に突き刺さり、悲鳴と怒号が交錯した。
しかし、その程度の抵抗では、帝国の進軍を止めることはできない。彼らは肉の壁を築きながら、確実に距離を詰めてくる。
やがて、先頭の兵士たちが砦の門に到達し、分厚い木製の門に鉄槌と衝車が叩きつけられる鈍い音が響き始めた。同時に、梯子が壁にかけられ、帝国兵が蟻のように壁を登ってくる。
「壁を守れ! 決して突破させるな!」
ガレスは叫び、自らも斧槍を構えた。その巨体をいなし、斧槍の重さを利用した一撃が、最初に壁をよじ登ってきた帝国兵を頭上から叩き潰した。血飛沫が舞い、兵士の甲冑が砕ける鈍い音が響く。
彼は間髪入れずに斧槍を振り抜き、次々と現れる敵兵を薙ぎ払っていく。彼の斧槍は、帝国兵の盾や鎧を紙切れのように引き裂き、その行く手を阻むもの全てを粉砕した。
絶望的な状況下で、彼の存在は兵士たちにとって唯一の光だった。
砦の中からも、アルトリウスの兵士たちが奮戦する。
訓練された剣士たちが、帝国兵と激しい鍔迫り合いを演じ、槍兵たちは密集隊形を組んで敵の突進を食い止めた。
彼らは数で圧倒的に劣るにもかかわらず、故郷を守るという一念で、ヴァルガス帝国軍に抗い続けた。
しかし、帝国の兵力は尽きることがない。第一波が退けば第二波が、そして第三波が押し寄せ、波状攻撃で砦に休む間もなく圧力をかけ続けた。
日が傾き、やがて夜の帳が降りても、攻撃の手は緩まらなかった。松明の炎が戦場をぼんやりと照らし出す中、兵士たちの疲労は極限に達していく。
血と汗と泥にまみれた戦場で、ガレスは斧槍を握りしめ、来るべき夜戦に備え、静かに息を整えた。
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