第46話:言葉が紡ぐ日々と、神の言葉の意味

王都の大通りは、かつての緊迫した空気が嘘のように穏やかだった。

瓦礫はすっかり片づけられ、真名を得たモンスターたちが人々と肩を並べて働いている。


「ねえねえ!私、辛いの苦手だったの!」

市場で野菜を運んでいたリス型のモンスターが、笑顔の商人に告げる。


「えっ?今まで黙ってたのかい?」

「だって、しゃべれなかったんだもん!」

人々の笑い声が風に乗る。


広場の片隅では、若い兵士と狼型モンスターが肩を並べて座っていた。


「ねぇ、私……あの子のことが好きなの。」

「えっ、あの子って……隣の兵舎の子か?」

「うん……どうしたらいい?」

「そ、そんなこと聞くなよ……!」


すぐそばで見ていた子どもたちが「きゃー!」と笑い、モンスターたちも耳や尻尾を揺らして照れ隠しをする。


――言葉が交わされることで、絆はさらに深くなっていた。



---


一方、王都の外れにある小さな宿。

俺たちは丸テーブルを囲み、夜風を感じながら話し込んでいた。


「……神様は乗り越えられない試練は与えない、ってよく言われるけど……。」

ニールがコップを握りしめる。


「目の前にいる人たちを見てると……それが本当だったって思うよな。」

ディルが頷く。


サリウスが静かに言葉を継ぐ。

「実際、祝福を受けたのは努力し、立ち向かった者たちです。……私たちは、その事実をこの目で見た。」


「キュー……(でも……主神は、何を考えてるの……)」

アルネアが俺の肩で問いかける。


俺は深く息を吐き、ポケットから取り出した虹の星片を見つめた。


「……“世界を掻き回してくれると思っていたんだけどな”……。」


「……あの時の言葉か。」

ディルが顔を上げる。


「……あれは、進化を促せ、ってこと……?」

ニールが眉を寄せる。


サリウスがゆっくりと頷いた。

「人とモンスター、そして世界そのものの変化を望んでいる……と考えられますね。」


「……だったら。」

俺は虹の星片をぎゅっと握った。


「俺たちは……俺たちのやり方で、変えていこう。」


アルネアが強く頷き、羽耳を揺らす。

「キューッ!(うん!一緒に……!)」


ヴァルが低く咆哮し、フェリアとリューネリアも力強く鳴いた。



---


「さて……次はどこへ行く?」

ディルが立ち上がる。


「もちろん――真名探しを続けるさ。」

俺は笑って答えた。


サリウスが地図を広げ、指先で新たな地点を示す。

「この辺りに、まだ調べられていない遺跡があります。」


「行こうぜ! 俺たちで見つけよう!」

ニールが拳を突き上げる。


「キューッ!(新しい相棒、見つけるんだ!)」


虹の光が夜空に残る王都を背に、俺たちは再び歩き出した。


――神の言葉を胸に、進化を求めて。

 世界を変える旅は、まだまだ終わらない。

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