第24話:銀の神獣と、最初の言葉

泉で出会った銀色の獣は、ディルのそばを片時も離れなかった。


ジャングルを進む間も、背後から影が近づけば一歩前に出て守り、枝が落ちれば翼のような尾で払いのける。


「……なぁ、お前、ちょっと過保護すぎじゃない?」

ディルが苦笑する。


「グゥゥ……(守るのが当然だ)」


「俺だってやれるし……!」


ディルはわざと胸を張り、獣の横をすり抜けて駆け出した。


「ディル、あぶないって!」

ニールが声を上げる。


「へーき、俺は――わっ!?」


ズシャッ!


「ディル!?」

「カノン、止めて!」


ディルは足をもつれさせ、蔓に引っかかって転んだ。

すぐさま銀の獣が駆け寄り、翼のような尾で泥を払う。


「……痛っ……でも、大丈夫だって……。」


「グゥ……!」


獣は鼻先でディルの頬をそっと押し、安心させるように鳴いた。


「……はは、もう……仲良しなんだな、俺たち。」


俺とニールもつい笑ってしまった。


「キュー!」

「ヴォォ!」


アルネアとヴァルも楽しそうに羽耳と翼を揺らす。



---


森を抜け、丘を越えた先に、霧に包まれた不思議な集落があった。


木の家々が立ち並び、中央には大きな銀の像がそびえ立つ。


「……この像……!」


「銀の神獣だ。」

村の長老が、杖をついて現れた。


「昔から伝わっている。この地を守る銀の神獣は、人の言葉を得たとき、真名を授けられると。」


「……遺跡じゃなくても、真名は……?」


サリウスが小さく目を見開く。


「そうですか……真名は“魂の交わり”の先にあるもの。ならば、こうした地でも……。」


ディルは銀の獣を見た。

獣も、真っ直ぐにディルを見返す。


「……お前の名前……知りたいんだ。」


「グゥ……?」


「俺が呼ぶ名前を……教えてくれよ……!」


獣が光に包まれた。

羽のような尾がひらめき、身体から銀の輝きがあふれ出す。


「……ディル……!」


俺が思わず呼ぶと同時に、獣は初めての人の言葉を吐いた。


「――ディル……!」


「……!?」


ディルの目に、涙が溢れる。


「……俺の……名前……!」


「……これが、最初の言葉……。」


アルネアが小さく呟き、ヴァルが低く鳴いた。


「キュー……」 「ヴォォォ……」


長老が静かに頷く。


「おめでとう。銀の神獣が言葉を紡いだとき、真名の扉が開かれる。

それは、君とあの獣の絆が真に結ばれた証だ。」


獣は再びディルに寄り添い、優しく頬を擦りつけた。


「……これからも、一緒だな……!」


「ディル……」


「ははっ、やっぱり……俺たち、もう仲良しだな!」

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