《第十七章》氷室くんへの思い……

 十二月十六日。月曜日の午前中。

 わたしたち一年三組は、体育館で劇のリハーサルをすることになった。

 役者たちは、衣装担当が用意した衣装を着て、ライトを浴び、音楽が響く中、大道具・小道具が配置された舞台上で、通しで演技していった。

(……リハーサルの日まで、あっと言う間だったなぁ~)

 演技の練習では、教室の机とイスをうしろに運んで動ける場所を作り、初めは台本を見ながら演技して、十二月九日の月曜日からは台本なしで演技していった。

 演出の入江さんにアドバイスをもらい、よりよい演技ができるように、役者全員で演技力を磨いていったんだ。

(わたし、放課後は氷室くんといっしょに演技して、家に帰ったらママとパパの前で演技して、やれるだけのことはしてきたつもり)

 その成果が出て、リハーサルではセリフが棒読みになったり、演技を間違ったりせず、結花ちゃん役を演じきることができたの!

 無事にリハーサルを終えて、わたしはほっとしたんだけど……ドキドキもしていた。

 わたし、演技をしつつ改めて思ったんだ。

 氷室くんのことが好きだって……。

 そう強く思ったのは、ダンスパーティーのシーンを演じていた時。

 わたしはうすピンク色のワンピースを着て、白いパンプスをはいていて、氷室くんは白いシャツの上から黒いジャケットを着て、黒いズボンをはいていた。

 蓮さまになりきっている氷室くんを見て、わたしは結花ちゃん役としてもドキドキしたし……わたし自身としても、ドキドキしていた。

 氷室くんと手を取り合って、微笑みながら、舞台の真ん中でダンスしていく。

 いっしょけんめいダンスしつつ、心の中で思ったの。

(わたし、やっぱり、一人の男子として氷室くんのことが好き。がんばって作った台本を、こんなにしんけんに演じてくれてうれしい。氷室くんと、結花ちゃんと蓮さまのような関係になれたらな……)

 って。

 リハーサルのあと、入江さんから興奮気味に「ダンスパーティーのシーン、今までで一番よかったよ!」ってほめられたけど、当然だよって思った。

(だって演技をこえて、本当に氷室くんのことが好きなんだもん!)

 ほめられて、うれしそうにしている氷室くんを見て、わたし、もうしわけなくなった。

(推し活仲間に恋されるなんて迷惑だよね。でもわたし、自分の心にウソはつけないよ)

 だからわたし、決めたんだ。

 文化祭で劇を成功させたら、ひと月以内に準備して、氷室くんに告白しようって!

 そのためにも最高の結花ちゃんを演じてみせる! とわたしは自分をふるい立たせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る