男たちの友愛

「ん~困ったなあ」 

 ツバサは頭をポリポリと掻いた。

 少し話してみたが、なんだか飄々とした男だ。

 つかみどころがなく、どうもなんだかふわふわしているのでかみ合わない。

 「その、あの別に俺怒ってないんですよ」

 「……」

 「まあ~あれは戦いの中でだったことだし。ね、戻ろ」

 子供に言い含めるように言うので、なんだか変な気持ちになった。

 「ん~じゃあ戻りますか」

 ツバサがそういうので、シンデレラが従者を呼んだ。

 従者が来て、何度かツバサの確認をすると「大丈夫でしょう」といった。

 彼は医療従者らしい。

 「よし、じゃあ一緒についてきてくれ」

 その従者についていく。

 「さっきの戦い凄かったよ。二人とも」

 「そうですか? シンデレラさんが凄かったですって」

 「ええ。あの蹴りを受けた時ほんと終わったと思いましたよ」

 「二人とも道場のエース? なんだか強さが違うというか」

 「そうなんでしょうか? 俺自身は何とも」

 シンデレラが不思議そうに言った。

 「強いでしょ」

 ツバサがにこやかに言う。

 大広間に着き、従者が扉を開けると歓声があがった。

 「シンデレラ‼」

 「ツバサ‼」

 お互いの道場生が駆け寄る。

 「シンデレラさん、ツバサさん」

 ケイレブ王子が来た。

 「お二人を待っていました」

 「え」

 「え」

 「こちらのほうで表彰を」

 「表彰なんて」

 「ええ、いいんですか」

 「勿論。格闘家、出場選手の皆様に対して」

 ケイレブ王子に呼ばれ、出場選手たちは中央に集められた。

 「皆さま。出場選手たちはこの日のために研鑽を積み、たくさんの努力をしてきました。そして今日素晴らしい試合、演武をしてきた方々に盛大なる拍手を」

 拍手が起きる。

 「皆様にこれを」

 それはメダルだった。

 金色に輝き、国家の象徴でもある白百合が刻まれている。

 首元に飾られる。

 それは安寧にも似た感情、そして友愛でもあった。

 ファンファーレが鳴り響く。

 認められた。

 シンデレラは、にこやかに立っている仲間たちや格闘家たちに感謝していた。

 こうして立つことが出来たのは、みんなのお陰だ。

 陶酔だ。

 でも今日だけは、今日だけは喜びを噛み締めたい。

 「よかったな」

 忠勝が微笑んだ。

 「ああ」

 突如暗転し、周囲が混乱した。

 「なんだ⁉」

 「皆さん落ち着いて‼」 

 王の言葉に一旦静かになるが、困惑の息遣いが支配する。

 シャンデリアの明かり、蝋燭の明かりが一気に消えたのだ。

 従者が掛けてきて、オイルランプを付けた。

 仄かな明かりが見える。

 少し安心したものの、根本的なものが解決していない。

 何があったんだ?

 シンデレラは周囲を見渡したものの、暗く見えない。

 「忠勝? アキラ?」

 「ん? これ俺」

 間違えてツバサの手を掴んでいた。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る