Ⅸ王家
「ここが王家か」
アキラが馬車から見える豪勢な城を見た。
「初めて来るぞ」
「みな気をつけろよ。特にアキラ」
「なんで俺だけ」
ギュネスが微笑んだ。
シンデレラから見てもアキラの成長はかなり早い。
粗野な言葉遣いも随分となりを潜めている。
強化稽古を終えた三人は、この日王家に呼ばれ夕食を共にすることになっていた。
顔合わせ、紹介の意味を兼ねた今回の夕食会は前哨戦といったものだ。
どういった顔ぶれか。
どういった格闘家なのか。
水面下での情報戦もあるが、アキラは全く考えていないように見えた。
多分、腹減っているしうまい飯食えるだろうなとしか考えていないだろう。
この男は、こういった男なのだ。
降りる直前。
正装に乱れが無いか確認して降りた。
一糸乱れぬ動きで騎士たちが来て、扉を開ける。
「オウマ流武道のものだ」
「ギュネス様、シンデレラ様、アキラ様、忠勝様ですね。こちらへ」
煌びやかな調度品に圧倒されながらも、会場に入る。
何組かの出場選手たちが先に到着していた。
誰もが鋭い視線を彼らに向けている。
そわそわしそうであるが、四人は黙って席についた。
シンデレラは時間までに、他の格闘家たちの観察をした。
(あの流派の格闘家たちは、みな体が大きいな)
身長が一八〇超えているだろう格闘家たちの流派だった。
高身長であるが、その肉付きは三者三様だ。
岩のように肉体が盛り上がり、スキンヘッドのためか威圧がかなりある格闘家。
肉付きはかなり細く見えるが、無駄な肉が無く格闘家としての筋肉だけがついている格闘家。
もう一人も細いがどこか冷たさを感じる格闘家だ。
視線だけを動かし、そっと他の格闘家を見る。
肉付きや、体の構成、服装。
あれは和の者だろう。
シンデレラたちは正装としてタキシードを着ているが、その装いは様々だ。
和装、カンフー服、色鮮やかな民族衣装のようなもの。
格闘家たちは静かに、夕飯開始時を待っている。
開始時間。
扉が開けられ、王と王子が入ってきた。
王と王子は最早高貴そのものだった。
己を律し、制限してきたものたちが持つ特有の冷たさと圧が一気に格闘家たちへ伝わる。
壇上に立ち王が挨拶をした。
「皆さま、今回はこうしてお集まりいただきありがとうございます」
頭を下げる。
「今回武闘会出場となり、このように皆の交流を持つために行われる夕食会です。皆様も今日楽しめるように」
王がグラスを上げた。
「乾杯」
最初は控えめであった会話も、時間が経過されるにつれ活発になってきた。
アキラが粗野な部分が出ないか、ギュネスは心配であったものの今までの稽古のお陰か静かに出来ている。
(よかった)
ギュネスはほっとした。
「ギュネス殿」
「お久しぶりです、ジュアン殿」
ジュアンはカンフー服を着ていた。
彼の流派は、拳法だ。
突きや蹴りを主にする流派であり、東洋からのものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます