武闘会選考
Ⅰ始まり
ギュネスとリトは武闘会出場希望用紙を分けながら、誰が出場するかを話していた。
「やはり……忠勝とシンデレラが大きいかと」
「そうか……」
ギュネスはシンデレラの素質があまりにも大きいことを見抜いていた。
だが、それは道場生たち全員もそう見ているだろう。
彼はここに来て、オウマの指導を受けている。
あの苛烈なオウマの修行に根を上げず、そして自分のものにしている様は才能と言っても過言ではない。
才能、そしてシンデレラの努力により、最も武闘会に近いとも見えた。
シンデレラも武闘会に出場したい、と聞いている。
武闘会選考にはシンデレラも出ることになっていた。
そして、忠勝も出る予定だ。
「今のところ、二人は確実ですね」
「うむ。忠勝もかなりの手練れになっている」
忠勝は十五歳の若さでオウマの付き人になり、彼もまた苛烈な修行を受けている。
シンデレラと忠勝。
どこか似ている二人は才能や実力もかなりのものだ。
二人とも今回が初めての選考。
「二人には頑張ってほしいですね」
「ああ」
リトは書類を片付けていると、オルカの書類が目に入った。
「ええっとこの人も出場希望か」
特に何らかの意見もなく機械的に片づけられた。
掲示板に武闘会選考の日時が貼られた。
道場内 朝九時より
徒手格闘、棒術、弓、各々の分野を見る。
「お、これが選考会?」
アキラが興味津々で見た。
「そうそう」
「これって自分の得意分野でやるんだろ?」
「そう。ほら用紙に書いただろ? 自分の分野みたいな」
「あれな」
「それで決まる感じ」
「てか、どんなことすんの?」
「ええっと、師範代たちがいてそれを見る感じかな。お互いに戦ったり、その型を見せたり」
「へえ~緊張するわ」
「そりゃそうだって。武闘会に人生かけている奴いるもの」
「そうなん?」
「武闘会に出るってそれだけ凄いんだよ。出たら生活は安泰するし、格闘家としての名誉みたいなもんだからさ」
「へえ~」
「おめえ、能天気すぎるだろ」
ヤマが何かに気づいたのか、「行こうぜ」とアキラを連れ出した。
「ん?」
見ると、自分たちを睨みつけている男がいたからだ。
誰、あいつ。
少し離れ、ヤマは「あいついない?」と確認した。
「誰、あれ」
「ああ~あの……なんだっけ。イルカだか、なんだかの人」
「あんなのいたっけ?」
「ま、ここの道場の練習生だよ」
「そうだっけ?」
「あの人、めちゃくちゃ武闘会に人生かけてる人なんだよ」
「そうなの?」
「そ、確か……あの人さこの年がラストチャンスだから、めちゃくちゃイライラしてるんだよ」
「まじで?」
「シンデレラいるだろ? シンデレラに対してめちゃくちゃあの人嫉妬してんだよ」
「全然分からなかったぞ。というか俺初めて知ったけどあいつ」
「あいつ、俺らには来なくて子供とか立場弱い奴に行くからさ。あいつ結構嫌われてるんだよ」
「……ええ」
アキラは嫌そうに顔を顰めた。
「アキラはさ男で筋肉もあるから来ないだけなんだよ。確か女子にも変なこと聞いたって聞くし」
「変なこと?」
「なんか、今貰っている給料で損していないか? とか仕事はどんなこと? とか。女子でさあいつより段位が上の年下がいるんだけども、目の敵にしてるみたいで。でも俺も段位上だけども来ねえんだよな」
「そんなことしってから選ばれねえんだよ」
アキラは呆れたように言った。
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