あの家へ

 俺は、加害者だ。

 それもいじめの。

 排除を目的としたいじめ。

 それは、どこか気持ちいい。

 皆と一緒にやっているから?

 居場所ができたと勘違いしてるから?

 皆が排除したがっていたから?

 わからない。

 わからないまま。

 俺はここにいる。

 俺は今。

 殴って、蹴ってる。

 親から受けたものを、こいつに与えている。

 母親から暴力を教えてもらった。

 父親から悪口を教えてもらった。

 だから、俺は与える側になった。

 外は雨。

 神様が降らせたような大雨。

 俺の時は晴れていたのにな。

 やっぱり神様は嫌いだ。

 俺は、皆と前を向く。

 俺は受けたものを与えてるだけだ。

 そう心に嘘をついて。

 これが普通なのだ。

 排除をするのは大昔からの本能だ。

 だから、普通だ。

 愛をリレーするのなら、受けた重みもリレーしていいよな?

 俺はバトンを渡してるだけだ。

 それが、重みを伴おうと。 

 それが、涙によってできていても。

 俺は、愛を知らない。

 俺は、涙が枯れた。

 俺は、普通を知らない。

 だから、新しく定義する。

 これは普通だ。

 これは普通だ。

 そう定義した。

 ノーベル賞ものだな。

 俺は、傘を差した。

 俺は、歩いた。

 あの家へ。

 暴力のある家へ。

 俺の家族のもとへ。

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