日本内戦
@Hatimaru8
プロローグ 春先の兆し
地面の温もりを感じる。春先の陽気と土の温かさでよく寝られた気がする。ここ最近寝付けなかったので寝不足気味である。空を見ると太陽が高く位置しており、時計を見るともう10時であった。
「あ!やっと起きた。今何時だと思っているの?隊長ぷんぷん何だからね。」
そう言って駆け寄ってきたのは看護兵の湯川花だった。彼女は弟を戦争で亡くしており、そのことから、この解放戦線に加わったという。
「今?10時だろ。どうしたんだ、そんな急いで?何かあったのか」
そう言うと花は顔をプク〜とさせ、厳しめの口調で言った。
「もうすぐ来るって言うのに、住民の避難も砲台の整備も何も終わってない。第一、なんでこんな重要拠点を守るのが私たちだけなのよ?」
ここ星州港は元は巨大物流企業「桜家」の主要港であり、解放戦線結成後は各地の反政府勢力への物資の供給ルートを担う軍事拠点である。
「政府が示した攻撃時刻は4月6日の午前4時。それまで残り2日。2日だよ!ふ、つ、か。ねぇ?本当に分かってるの?」
花は随分焦っているらしい。それもそのはず。
解放戦線上層部は予め分かっている政府軍の攻撃に対する防衛を我々中部独立遊軍だけに任せたのだ。これについて一言。意味分からん。
「じゃあ蒼司は軍港エリアの砲台整備の指揮に行って。」
花は幾つかの医療キットを持つと、立ち去った。自分もそろそろ動き出そうとした時、花が振り返って言った。
「ちなみにそれ、藤崎さんの命令だから。」
藤崎洋。元陸上自衛隊であり、今は僕の所属する部隊「中部独立遊軍」の隊長だ。中部独立遊軍は主に中部地方から東海地方にかけて政府軍と戦っており、解放戦線の中の一部隊だ。政府は大伴家の独裁政権となり、言論を統制。長らく反乱の象徴として活動している桜家を目の敵にしている。大伴家をここまで大きくした現当主、大伴恒正は自分が亡くなる前にケリをつけようと解放戦線の殲滅を始めた。その狼煙が星州港で上がる。
迷彩服を着て、荷物を持ち、自分の部隊「対上陸作戦部隊」の持ち場へ行く。キャンプ地としてる城山町から東に5km程進むと第一コンビナートが見えてくる。ここには確か、、、
「蒼司〜おはよ!」
そうだ。砲撃部隊「火熊」。そして声の大きいあいつが隊長柴田大吾。面倒見が良く、後輩からの信頼も厚い、ムードメーカーだ。
「蒼司〜起きるの遅いよ。後2日だよ。」
「花と同じこと言ってるな。まぁ、確かに少し寝すぎてしまった。準備終わったのか?」
「まーだ。」
こんな感じでいつも陽気だが、戦いになれば緻密な砲撃をする精密機械になる。
「僕もまだ終わってないのでね。行くわ。」
「フレーフレー蒼司!フレフレ蒼司!」
春の陽気のせいか、少し暖かく感じる。まぁ、今さっき春男に会ったからな。
第一コンビナートから北上すると第三コンビナートがある。ここには何も設営されていない。
そこから北東に向かうとやっと担当区域である第五コンビナートに着く。南西には砲台が設置されており、東にはトーチカと中には機関銃が付けられている。何となく作戦が分かった。
「志摩隊長!お疲れ様です。」
「任せっきりでごめんな。どうだ進捗は?」
寝坊した自分にお疲れ様は刺さるなぁと思いつつ、笑いながら聞いた。
「既に設営は終えています。あとは物資を運び込むだけです。」
副隊長の劉暁翔はとても優秀な部下だ。戦支度では兵にテキパキと指示を出す一方、戦場では狙撃手として沈黙を貫いている。
「ご苦労さま。お前は一旦休め。後は僕がやるよ。」
引き継ぐと言っても、ほとんど完了している。物資の搬入もさほど時間はかからないだろう。すると、胸にある無線機が鳴った。
「こちら、通信情報部隊村尾凛。聞こえますか?どうぞ。」
通信情報部隊は通常の伝達任務に加え、政府軍のドローン攻撃などに対応するようになった。
ここから察するに、、、
「こちら、対上陸作戦部隊隊長志摩蒼司。今からEMP発生装置を取りに行かせる。どうぞ。」
「え、あっ、りょ、了解しました。」
当たったのか、分かりやすく動揺していた。凛は焦りやすい性格なので本当に通信兵に向いているのかと疑問に思っている。
「隊長!隊長が寝ている時、藤崎司令官が『あいつが起きたらを司令部へ向かわせろ』と仰っていました。」
部下が声をかけてきた。意外と声真似が上手いと思ったが、司令部に行くと考えると途端に体が重くなる。まあ、装置を取りに行くついでにいいだろう。第五コンビナートから星州川を渡り、南西に進むと須坂公園があり、中部独立遊軍はここに本営を置いている。須坂公園の後ろには、軍倉庫が設営されている。
「対上陸作戦部隊隊長 志摩蒼司です。藤崎司令官はいらっしゃいますか?」
「蒼司か。入れ。」
奥の方から野太い声が聞こえた。本営内には数百人の兵士が居る。手前には物資を供給する搬入部隊。真ん中には自分を含む幹部の大きな丸机があり、ここに集まって作戦を練る。その周りを囲むように通信兵が居る。そしてこの奥に司令部がある。
「失礼します。」
ノックを3度してから、入室した。そこにはエヴァの某あの人みたいに手を組んで顎を乗せている藤崎司令官が座っていた。
「僕から君に話すことはない。」
は?用事があるから呼んだんでしょ?と思ったが、藤崎司令官は続けた。
「これは君のお母さんからだ。」
そこに置かれたのはピストルだった。また、お母さんと言うのも養母の志摩静のことだ。
「現代戦でピストル使うこと無いですよ。」
「バカヤロ。なに大真面目に使おうとしているんだよ。御守りだよ。腰にぶら下げとけ。はい以上!退室しろ。」
言われるがまま退室すると、凛が立っていた。
「EMP発生装置持って行ってね。」
完全に忘れてた。あれ、重たいだよなぁーと体がより重くなると凛は言った。
「お母さんってもしかして近畿防衛部隊の志摩静隊長のこと?」
図星過ぎて、数秒固まってしまった。
「ごめんね。余計な事言ったよね。」
「いや、別に隠してた訳じゃないけど、知られるのは少し恥ずかしいかな?」
本音である。知られたところで別に不都合が生じるわけではない。でも、知られるのはプラスの気持ちではない。
「分かった。じゃあ、誰にも言わない。」
「ありがとう。」
「よし!EMP忘れないでね。」
体は重いまま、裏の軍倉庫に向かい、必要なものを車に積んで第五コンビナートに帰った。いつの間にか夕方になっていた。残念ながら海に沈む太陽はここからだと拝めない。一連の作業が終わる頃には18時になっていた。
「志摩隊長、物資の搬入完了しました。」
「よし、みんなご苦労さま。明日は交代で見張りに付き、明後日に備えてゆっくり休め。」
その夜、隊長と副隊長一同が司令部に呼ばれ、
作戦会議が行われた。
「ご苦労だった。明後日の作戦だが、、、」
作戦会議が終わると、既に時計の長針は9を回っていた。空には星が無数に輝いていた。このまま海を越え、東に進めば名古屋がある。生まれ故郷の名古屋が。そして、家族を失った名古屋が。大伴家の独裁を終わらすための内戦が始まる。
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