2.ハンター講習②
翌朝。夜明けと同時に起きて墓地へ向かう。竹ぼうきじゃなくって金剛杖を装備してだ。
防具的なものが何もないので
超アンバランスな恰好なので人の目にはさらせないぜ。
「さて、気合入れて掃除するぞ!」
バシンと頬を手で叩いて気合注入。いざ行かん。
「ふーむ、静かだな」
階段を降りて墓地を見渡したけど骨の姿は見つからない。昨日あれだけ掃除したせいかもしれない。
念のため隅から隅まで目視点検して、骨がいないことを確認して2階へ向かう。
「さすがに、2階にはいたか」
2階には、やはりホブゴブリン骨がいた。だけど数が少なく、ぐるっと回る間に2体しかエンカしなかった。拍子抜けとは思わない。ダンジョンができてまだ四日目だ。これが異常なのか正常なのかの判断がつかない。ぬかれば近所に大迷惑をかけてしまう。慎重であるべきだ。
「あの熊骨はここにはいないということは、下か」
行きついた答えは、3階だ。階段の位置はわかってる。行くか行かないかだ。
レベルを上げたいのなら3階へ行くべきだろうが俺の目的は掃除であってゲームをしているわけじゃない。
「でも、行くしかないだろうなぁ」
掃除をするなら行って骨を蹴散らすしかないのだよ。
3階への階段を降りる。きっちり13階段。
「3階も墓地か」
3階も墓地ではあるが、丘の斜面に造成された墓地だ。丘の上から墓地を見下ろす形になってる。ただし周囲は土塀で、閉鎖空間になっていた。階段の位置はちょうど隅っこ。狭小スキーにはうってつけだ。
眼下には墓石を縫うように歩く熊骨と、それよりは小さい秋田犬くらいの四つ足の獣の骨の群れが見える。
「大きさからすると犬か狐か狼か。狸じゃなさそうだな」
群れてるから犬か狼が濃厚だけど。狐は群れなかった記憶が。
「でも、多数を相手はキッツいぜ」
俺は格闘技とかは無縁の生活をしてた。だって坊さんになるつもりだったんだぜ。
とはいえ、見逃すのもなぁ。いずれはアレが地上に向かってくるんだろ?
落ち着いて寝られないしなぁ。
なんて躊躇してたら見つかってしまいました。犬か狼かの骨がガウガウ吠えながら俺に向かってきた。速い!
「チックショー、考える時間くらいくれよなー!」
腰を落として金剛杖を構える。一番早かった奴が俺の目の前に来たので杖を突き出す。
「ゲッ、避けやがった!」
骨は俺の突きをひらりと交わして後退した。今までは遅いやつばっかりだったけど、こいつは違うのか。骨はどんどん増えて俺を囲うように広がっていく。リングのコーナーに追い詰められたボクサーな気分だぜ。
骨だけど、骨だからこそ牙が丸見えで、こえぇぇぇ!
「くっそ、プレッシャーをかけてきてるな」
骨はじりじりと俺の囲いを狭めてきてる。骨の数はざっと30はいる。もう金剛杖の間合いなんだけど、へたに攻撃して脇から襲い掛かられたらたまらん。触れたら収納できるけどさ。噛まれたら痛そうじゃん。
攻めあぐねていると、2体の骨が飛びかかってきた。左右バラバラにだ。
「ふんッ!」
金剛杖を横薙ぎに振り、2体同時に収納したが、その隙に足をかまれた。
「イッテェ!」
プロテクターの上からだから刺さってはいないけど食い込む痛みはある。噛みついた奴は即座に収納したけど、それが合図となって骨が一斉に襲ってきた。
「坊主を舐めるなー!」
金剛杖の真ん中を持ち、ボートを漕ぐような動きをする。片側を持って振り回わすと隙が大きいからね。そして俺が大回転だ。
レベルが上がった俺の動きは常人よりも早いから、振り回してる杖のどこかが当たれば収納できる。
「イテェェェコンチクショー!」
隙をつかれて足とか腕を噛みつかれるけど瞬時に収納する。もちろん金剛杖にあたったやつもだ。痛みに耐えて暴れまくってたら目に見えて数が減ってた。あと数体だ。
「今度はこっちからだ!」
これだけバクバクされたら痛みにも慣れた。ということで、突貫だ!
骨に向かって【師走】スキルで突撃。杖を突きさす。
「あ」
収納する前に骨が砕けた。ドンマイ。
最後に足をかまれたけどそいつも収納して、俺の勝利!
「勝ったどー!」
勝利の雄たけびを上げたら熊骨が寄ってきちゃった。ドンマーイ!
収納した犬だか狼だかの骨はダイアウルフスケルトンという名前だった。生前はダイアウルフて魔物なのかも。こいつは狼骨としよう。
3階のリザルト。
狼骨×35、熊骨×10。噛みつかれ疵、多数。プロテクターもボロボロだ。
「さすがに引き返そう。これ以上は無理だ」
これだけ掃除したから、今日は大丈夫だろ。大丈夫でいて欲しい。
地上に出て収納した奴を経験値にしたけど、レベルは上がらなかった。なんか悔しい。
昼食で父さんが戻ってきたので3階のことを報告。
「狼の骨の群れ!? 大丈夫なのか、守!」
「小さいけがはしたけど何とかしたよ」
「病院に行かなくていいのか?」
「さっき消毒だけした。なんか傷の治りが速くなってて、もう傷跡もない」
噛まれた腕と足を見せた。怪我もなけれ傷跡もない。破れた服も見せた。
「調べてる最中に、ハンターになると自然治癒力が上がるというのを見かけたが、もしかしてこれか?」
「もしかしなくてもこれかも。ってか、父さんが調べたものって俺も知りたいんだけど」
「おぉ、そうだな情報は共有しないとな」
父さんが紙の束を出してきた。パソコンで調べたものを印刷したんだろう。
「父さんは幼稚園に戻るけど、その間に読んでおいてくれ」
「わかった。後、買い物は俺がしとくよ」
「スマンが頼んだ」
父さんはろくに休憩もとらずに出ていった。
近所のスーパーで買い物をした俺は、お茶を飲みながら父さんが集めた資料を読んでいく。
「昨日の青森のスタンピードは主に、マッドベアとダイアウルフの群れだった!? ダイアウルフ!?」
さっき俺が戦ってたやつの標準魔物?
たまたまそいつらの骨版だったのか?
というか、熊骨と狼骨って魔物の存在はどうなんだろう。さすがにそれは調べてないみたいだ。
てか、うちのダンジョンは墓地だからか、骨しか出てきてないな。このあたりの情報は……あったあった。
「ダンジョンごとに環境と出てくる魔物が異なると。青森は森林ダンジョンで動物系の魔物が主だった、と」
うちに出てくる魔物が骨なのか環境のせいと。墓地にできたから墓地ダンジョンってわけなのかな。
「で、気になってるのが魔石の扱いなんだけども」
収納した魔物を経験値にした際にゲットできる魔石だが、実はこれがハンターの主な収入源だ。
魔石は謎物質でできていて、質量に対して莫大なエネルギーを持っているらしい。去年あたりに電機メーカーがそんな発表をしていた記憶がある。
「なんだってぇぇぇ!!」
魔石はギルドで買取するがハンター資格がないと売れないって!?
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