記・ダンジョン

にしめ!?

幕開け

「うぅ……ん…?」


体が重い。力が入らない。

自分は今、何をしていたんだ……?


今、俺の眼の前には……なんだ…?

は……何処かで……



そう思った刹那。俺の世界は暗転する。

一瞬、何かがこちらにやってきていた気がするが、きっと気のせいだろう。


これは、きっと何かの夢だろうな……そんなことを思いながら。

俺の意識は闇へと堕ちていった。――――








――――――――――――――

少し前。

私は、今目の前で気絶している彼――ゼムトと一緒に、

新しい魔法の鍛練の為、私――ルデリナは

ダンジョンに潜っていたのじゃ。


でも、どうして……どうして、こんなことにっ!!



「…………ふえっ?」


彼女の第一声はそんな情けない声だった。


「目を覚ませ!!目を覚ますのじゃ!おい!!ゼムトぉっ!」


 ――そう必死に呼びかけるが、返ってくるのは沈黙のみ。そして、であるはずのものが無情にも、

彼に起きた悲惨な出来事を語っていた。


腕はねじ切れそうになっていて、呼吸もままならず吐血し、頭からは多量に出血していて、どれだけのことがあったのか――目には涙を浮かべ。


――――――とても酷い有様だった。




ルデリナとゼムトは、いつものように魔法の話で盛り上がりながら、サクサクとダンジョンを進んでいた。


そして、ボス部屋へとたどり着き、無事ボスを倒した。

そこまでは良かったのだ。……そこまでは。


ルデリナがいつものように宝箱を開けようとし、どんな魔道具が入っているのかと胸を躍らせていたとき、不意にゼムトが、ルデリナを突き飛ばしたのだ。


彼女は、ゼムトがいきなり突き飛ばした事に腹を立て、彼を突き飛ばし返してやろうと考え

見たのだが―――そこには宝箱があるだけ。


さっきまで、ゼムトがいたのが嘘であったかのように。

…………嘘??


その瞬間、彼女は戦慄を覚えた。

動かなければいけない。そう、分かってはいるのだが。

だが、……動けなかった。





そうこうしていると、そこにあった宝箱がガジャっと、奇妙な……何かがへばり付いているような音を上げて開き…

グシャっと音を立て――――


ゼムトが。そこにいた。


――――――――――――――





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