クリスマスプレゼント

あれから暫く経ち、世間はいよいよクリスマスシーズンを迎えた。実は瑠我ことアイリは捕まった直後からこの間、意識がない状態だ。一方のルルは依然として姿を暗まし、それこそ爆発事件以降は「ハーメルン」としての活動も全く音沙汰がない。


ーー「愛の三角形」と「破滅の三角形」が重なる場所で、全ての悲劇は終焉を迎えるーー


これはいつぞやに「10M科」に届いていたメッセージだ。この2つの三角形のうち「愛」の三角形は、恐らく「長野アイリ」の三角形であると僕達は推理している。そして同時に「破滅の三角形」は、大樹の恋敵だった北島がヴォーカルを務めるバンド「ONESIDE」が行う、ライブツアー「は!」に関係しているという事も。


その開催地である東京都・群馬県・岐阜県を3つの頂点として結んだ時に中心となるのが長野県。実際にココが彼らのツアーファイナルなのだという。そして以前敵方に初めて遭遇した時、現場に残されていた「真ん中が破れるようにくり抜かれた三角形」の存在。


アイリの苗字が「長野」であり、メッセージにもある通りこれらが「重なる」場所は恐らくこの長野県で間違いなく、当該県で何かしらの計画が実行されるのは確実と見ている。


「不満」なのは、愛の三角形の頂点が繋がりきっていない事である。破滅の三角形は先述通り東京・群馬・岐阜を線で結ぶと中心が長野になるという、とても分かりやすい構造…というか「問題=問い」なのだが。


今のところ「愛の三角形」の形成において必要な3つ頂点のうち2つは①長野と②イタリアで確定的に思える。


それらは「★イタリアの帰国子女であるアイリの苗字が長野である」からであり、それに加えて「イタリアとドイツ」を繋ぐ明確な「線」も存在していると言って良い。


★「アイリがリーダーであるとされる犯罪集団における彼女のコードネームの発音がイタリア語で同盟・連盟=という単語に近い」


僕達の中で以前も話題になったが、瑠我=Legaは、イタリア語で同盟・連盟という単語の意味だ。このコードネームにより、PPOH(通称ハーメルンの笛吹き)との協定的な繋がりを示していると推測もしている。それは言わずもがな、ハーメルンの笛吹きがドイツに伝わる昔話であるという事実を踏まえてのもの。これにてイタリアとドイツという2つの点が「イタリア(アイリ)↔瑠我(同盟・連盟)↔ドイツ(ハーメルン)」として繋るのだ。


だからこそ3つ目の頂点は恐らくドイツなのだが…最後の、明確かつ決定的な「ドイツと長野」の繋がりを見出せずに、僕達の推理はここで明らかな暗礁に乗り上げていた。



それまでの盛り上がり…というと不謹慎かもしれないが、何というか「わー!!」としたアレコレが、次々と僕らの日常に注ぎ込まれた「激動」からの変化。


勿論一ヶ月も経てば色々な事件が起きるが、今までのソレ=「例の三角形関連」と比べても、他の事件が生温く感じる事も多くなった。刺激の無かった以前の「日常」が、良くも悪くも戻ってきた様な感じだ。


「てか結局、彼女出来なかったね」


コレに関しては全く同じ立場であるので、遠慮(引け目)なく不二田に「共通の話題」として提供する事が可能だ。それがいくら傷のなめ合いであろうと、季節的にも自尊心的にも今の僕には有り難くあった。そういえばこの年は24日も25日も平日で、何なら25日に関しては最後の登校日となっている。


不「下駄箱にさー、チョコとか入ってないかなぁ」

タ「えー?下駄箱に食べものは入れないでほしいわ…。てかそれバレンタインだよ」


定番?というべき男子学生の願望が詰まった会話をしながら僕達は、残り少ない年内の登校を楽しんでいた。今思うと高校生になってから、ただ誰かと登校するだけで楽しいと感じた事など、秋口までは全く無かったと思う。


冬も深まり、登校する学生は皆一様に冬の定番アイテムを最低1つは身につけていると言って良い。マフラーに手袋、ネックウォーマーに耳当て等。勿論「フル装備」の子もいれば、それこそ「装備ナシ」というタフな少数派も、中にはいるのかもしれない。


「みんな寒がりだよね。まー俺はマフラーくらいだけど…」と言いながら、ガチャと自らの下駄箱を開いた僕は、一瞬固まった。


「んー?チョコでもあったかー?」

「いや、なんか…紙切れがある…」


不気味な紙切れ。

そこには「R299」とだけ記してあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る