2つの三角形

「愛の三角形」と「破滅の三角形」が重なる場所で、全ての悲劇は終焉を迎える。


その日、10M科に届いた謎の文章である。ある意味とてもチープで子供っぽいようだが、完全に無視を決めきる事は出来ない。そう言うのは不二田だ。


「この前の告知映像で言ってた、北島んとこのライブツアーで周る場所、覚えてる?」


急に何だと思ったのと同時に、僕がちゃんと覚えていない事にも気づいてしまった。そもそも自分の興味が無い事には、めっぽう記憶力を使えない体質らしい(それが普通であるはずだが)。


「俺には誰かさんみたいな天性の記憶力はないんだよ…」少しうんざり気味に言い放って同情を誘ってみたが、天才にはあまり効果は無さそうだ。それに対し「怒んなよぉ」と、彼は軽く笑っていた。


直後不二田は、ネットの何処からか引っ張ってきた日本地図のコピーを、僕の目の前に差し出した。


「この前のバンドが回る都県は東京・群馬・岐阜・長野だ。まずはファイナル公演・長野以外の都県を、線で結んでみてくんない…?」


言われた通りに東京、群馬、滋賀の三都県をボールペンを使って線で結んだ。


「三角形が出来るだろ?すると真ん中にあるのは…長野県だ。この前の現場に落ちていた「真ん中が砕かれた」三角形がこれで繋がる。結論、これが今日送られてきた文章の中にある、いわゆる「破滅の三角形」ってやつだと思う。何にせよライブツアー「は!」は「破る」が由来?みたいだし」


「まじかよ、おまえ…」


なんか子供騙しっぽくもあるが、向こうからのメッセージだとしても、かなりしっくりと来る推理ではある。そういえば僕も一つ、気になっていることがあった。不二田「先生」ならいい答えをもたらせてくれる筈だ。


「あのー、ひとつ気になってる事があって…。先生、聞いても良いですか?」

「先生じゃないけど、いいでしょう。笑」


散々ずべこべ言っているけれど、僕達のベースはどうしたって仲間ノリ・学生ノリが大好きな、何処にでもいる男子高校生であることには違いない。


「何で奴らは、わざわざ僕たちにヒントを与えてくれるんですか?」

「それは君の命を狙っているからだ!こっちから勝手に現れてくれたら、向こうは労力を使わなくても良いし、めちゃくちゃ楽だろう?以上!」


天才って決まって無慈悲なのだろうか。

不安になってくる。


「まーそれは冗談として。問題はこれだけだと動くにはちょっと薄いってとこなんだよね。重なるってのも、まだよく分からないんだよな…」


ここは副都心警察署の10M科にあるソファゾーンだ。ユウジは最近の激務による疲労で、机に突っ伏してイビキをかきながら爆睡してしまっている。


「つーわけでこれ、起きたらユウジさんにも伝えといて。今日はもう帰るわ」 


「おつかれ」


時刻は平日の20時過ぎ。この空間に心在る人間が僕1人になると同じくして、とてつもない混沌が僕の事を抉り始めた。

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