不二田
次に現れたモヤモヤは、家族についてのソレとまた違う、もっと嫌悪感の強いものであった。例えるなら朝起きると、知らない電話番号から着信が数回来ていた時のような、ザワザワに近いものというべきか。
そもそも、生まれて直ぐの僕を連れ去る動機が不明である。恐らく笹島家が関係している事だけは、確かなのだろうけど。それから数日間、僕は割としっかり体調を崩した。「大人の知恵熱」っていうヤツかもしれない(高校生だけど…)。
僕は高校に2人だけ、信頼をおいている人間がいる。同い年で唯一「友人」と呼べるクラスメイトの不二田と、生活指導の中川先生である。
不二田は中々の変わり者で、クラスメイトの中でも好き嫌いが完全に別れるタイプだ。同じグループ内でもそれは二極化されるらしく、彼はその友人同士の「板挟み」になる事を大きく嫌う。基本的に派閥なんぞは無くなれば良いというポリシーのもと、ソレには属さず一人行動が常である。孤独と孤高の真ん中にいるような雰囲気を漂わせる、いわば「くせ者」なのだ。
そんな不二田には、当たり前のように変わった趣味がある。先ずどういうわけだか、彼は特段に記憶力が良い。他の人であれば意識外である事象も、頭の一片に残っていたりする。
それが影響してか、色々な事件にやけに詳しい。夜のドキュメンタリー番組の特集で組まれた「歴史に残る迷事件」や、経済番組における経営者の成功秘話。勿論、日々のニュースや災害情報など。とにかく一度目にしたTVの内容や、耳にしたラジオなどの情報について、ほぼほぼ記憶されているらしい。
そういえば以前「ショート動画だけは信用してないよ」と、不二田は言っていた。
「フェイクや印象操作が露骨すぎて疲れる。そこには正しい情報もあるとは思うが、選別するのが面倒くさいから、そもそもアプリとかは開かない。だって色々な結果が混在したら俺、頭おかしくなるじゃん。まーそんなこといったら、メディアに踊らされてる側の人間になっちゃうかもしれないけどね」とも。
そんなヤバい香り漂う「天才」であるところの不二田くんの楽しみは、「記憶の引き出し」を出したり引いたりして、繰り返し照合する事なのだという。
資料館や博物館に出向いては「真相はこういう事だったのか」とか「本当はそんな事があったのか」などと、自らの記憶と照らし合わせる事で興奮し、高揚する事で快楽を…。あぁ。控えめに言って「聞いた事すらない、マニアックを極めた独特な趣味」だと、学校で彼と関わる度につくづく思わされてきた。
それでも僕は彼の事が好きだ。胸を張って友人だ!と誇らしく言えるのは不二田くらいである。その圧倒的変人である不二田に、僕は「笹島タイト」失踪事件について通話をし、聞いてみることにした。
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