第7話 事件
佑が家に戻ってきてから三〇分ほど経ったころ、幸がお母さんに連れられてやって来た。
「ごめんなさいね。夕食時に」おばさんはそう言った。
「いいえ、うち、夕食遅めだから。どうぞあがって」佑に母親が幸と幸の母親をリビングに招いていた。
「佑、幸ちゃんが来てるわよ」
佑はお風呂場で母親の声を聞いて、出してあったパジャマではなく、Tシャツと半ズボンをはいて出てきた。
「こんばんは。どうしたの」佑はちょっと照れながら幸と幸の母親に挨拶をした。
「チャーリーがいなくなったの」
「えっ。幸が取りに戻ったんじゃなかったの。僕が空き地でおもちゃを見つけたときには、チャーリーはいなかったから」
「佑くんがおもちゃをみんなに届けてくれたんでしょ。そのとき、チャーリーはいなかったの」
「うん。竹田さんに送ってもらって、すぐに空き地に戻ったし、まだそんなに暗くはなかったから、見落としたってことはないと思うんだ」
「そうなんだ。だれかが連れてかえっちゃったのかな」
「竹田さんにも聞いてみようか」佑は竹田さんがもう一度畑に戻ると話していたことを幸と幸の母親に伝えた。
「収穫したブルーべーリーを朝一で市場に持っていくから、畑に置いてある箱を積みに行くって言ってた。それに、となりの畑に肥料を入れて耕す、とも言ってたよ」
「ありがとう、ね。竹田さんにも聞いてみます」幸の母親はそういって、うつむいた。
幸の家はあまり地域の人と付き合いがない。幸が小学校へ入学するときに都会から越してきたのだが、学校の行事以外で地域に関わることがないのだ。
「明日、竹田さんにレアチーズケーキを届けようかと思ってたから、私が聞いてみましょうか」と佑の母親が提案した。
「でも、」
「いいですよ。私、明日はずっと家にいるだけだから。それに昔っから竹田のおばさんとは仲良しだから、何か気がつかれたことがなかったか、聞いてみますよ」
「じゃぁ、お願いしてもいいですか」
佑の母親は頷きながらレアチーズケーキを二ピース切り分けて、幸と幸の母親にすすめた。
「ブルーベリーのトッピングがあるから、豪華に見えるでしょ。クリームチーズと生クリーム、レモンを混ぜて固めただけのケーキには見えないでしょ」
「おいしそう。いただきます」元気のなかった幸が笑った。佑はちょっとほっとした。
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