第6話 お夕飯の支度をします

//SE 野菜を切る音

「(野菜を切りながら)あら、お客さん。ここは暑いですよ?薪を燃やしていますからね。」


「成程、土間ですか。民話に登場する事はあっても、実物を見ようと思うと今はなかなか難しいですものね。」


「あ、そんな!お客さんの手を煩わせるのは―。え?」

「な、成程……?分かりました。民話の世界を体験しよう、という実地調査ですね!でしたら、こちらを切って頂けますか。」

//SE 野菜を切る音


「どれもうちの畑で採れた野菜ですよ。山菜と一緒に天ぷらにしましょうね。」

//SE 天ぷらを揚げる音


「では、盛り付けますね。あとご飯と、お漬物も。」


「そして―はい!お客さんの釣ったヤマメです!串にさしておきました。これは、囲炉裏でじっくり塩焼きにしましょう!」

「では、お客さんは自分の御膳を持ってきていただけますか。私はヤマメとお野菜を持って行きます。」

//SE 風鈴の音

//SE 囲炉裏の焚火(以下、ずっと聞こえ続ける)

「では、ヤマメを待つ間に、お鍋をどうぞ。お客さんがお風呂に入っているうちに用意しました。」

(鍋の蓋を開ける)//SE 鍋が煮える音

「こちら、しかのお肉を使った鍋です!ふふふ、私、実はハンターでもあるのです。こうやって言うと、お客さんが皆驚くんですよね。」

「―はい、どうぞ。沢山食べて下さいね。鹿肉は初めて?クセがなくて美味しいですよ。お鍋の他に、カレーに入れても合います。焼くと硬いので、私は煮込む方が好きですね。」


「良かった。お口に合ったようで。」


「―私も?『食わざる者働くべからず』ですか。ふふ、ではお言葉に甘えて、頂きます。」


「はふふ……(熱い鍋を口に含んでいる)。」

「んふふふ。やっぱり、誰かと一緒に食べるご飯と言うのは美味しいものですね。」


「お客さん、お酒は飲まれますか?では―」


「じゃん!びっくりしました?囲炉裏の灰に徳利を埋めて、燗を付けるんです。」

//SE お酒を注ぐ音

「ビールに枝豆、も良いですが、囲炉裏が珍しい若い方にはこちらの方が喜ばれるんです。あ、けれど注意してくださいね?ほろ酔い気分で囲炉裏に手を突っ込んで火傷した人もいますから。」


「ふふふ!お客さん、気を付けると言ったって、そんなに怯えなくて大丈夫ですよ!ヤマメもまだ残っていますし、遠慮せず召し上がって下さい。お酒も、おかわりいかがですか?」

//SE お酒を注ぐ音

「え?(少し恥ずかしがる)すみません、では―」

//SE お酒を注ぐ音

「ふふ。お酌して頂けるなんて久しぶりです。頂きます。」


「―はぁ!美味しい!(はっと我に返って)失礼しました。また、はしゃいで……。うう、祖母が見たら雷を落とされてしまいます。」


「よく叱られました、お前はいつまでたっても子供みたいだって。もてなす側なのに、一緒にはしゃいでどうするんだって。」


「なので、いけない事ですけど……こうして、お客さんと一緒に囲炉裏を囲んで、一緒に食事を頂いているこの時間が、楽しくて仕方ないのです。」


「そろそろヤマメも食べごろですね。―はい、どうぞ。」


「―はい。では、ご相伴に預かります。」


「はっふはふ……。はい、とっても美味しいです。ありがとうございます!」


//SE 風鈴の音


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