三枚のお札〜麗子山学園の挑戦〜
奈良まさや
第1話
「三枚のお札」〜麗子山学園の挑戦〜
第一話:残クレという名の地獄
山道を上がる一台のアルファード
エンジン音が重々しく響く中、関西弁の父親・健一(45)が汗だくでハンドルを握っています。助手席の母親・美智子(42)は震える手でスマホの残高照会画面を見つめ、後部座席の息子・大輔(17)は諦めきった表情でゲーム動画を見ています。
「おかん、ほんまにここしか道あらへんの?」健一の声に疲労が滲みます。
「アルファードの残クレ、あと280万も残っとるのに…大輔は高校中退やし、もうどうしようもあらへん」美智子の声が涙声になります。
大輔がイヤホンを外します。「おれ、別に更生施設なんか行きとうないって言うてるやん」
「お前、この一年で何したんや? ちょいちょい警察のせわなって、朝から晩までゲーム配信見て、コンビニバイトもクビになって。麗子山学園は『問題児100%更生』って謳うとるねん。もう最後の砦や」
麗子山学園エントランス
石造りの重厚な門構え。「麗子山学園」の金文字の下に「逆転人生保証」の小さなプレート。門の脇にはなぜか「残価設定ローン相談承ります」の看板があります。
受付ロビーで家族三人が待っていると、カツカツとハイヒールの音。現れたのは久美子学長(32)。まるで女優のような美貌に、高級ブランドのスーツ。完璧すぎる笑顔を浮かべて登場します。
「田中家の皆様、お疲れさまでした。私、学長の久美子です」
大輔、思わず見とれます。心の中で(めっちゃ美人…これが学長?)
久美子の目がキラリと光ります。「ありがとうございます。でも年上の女性ですよ」
大輔、顔を真っ赤にして慌てふためきます。
「当学園は特殊な教育システムを採用しております。入学方法
簡単です。説明しますと…山の頂上にある山小屋まで辿り着けば賞金250万円。捕まれば入学金150万円プラス月謝38万円の学園生活スタートです」
健一の目が輝きます。「250万円!ほんまですか? それ残クレより多いやん!」
「ただし」久美子の笑顔が一瞬凍りつきます。「これまで73人が挑戦して、成功者は…0人です」
第二話:三枚の札と読心術
準備室
大輔一人に久美子学長が三枚の古びた札を手渡します。
「特別ルールがあります。この三枚の札、人間に頼むことはできません。自然のものにお願いしてください。そして…」
久美子の瞳が異様に澄んでいます。
「私、人の心が読めるんです。嘘をついても無駄ですよ」
大輔の脳内に(この人怖いけど…でもめっちゃタイプやな)
久美子がクスッと笑います。「お世辞は嬉しいですが、まずは生き残ることを考えてください」
山道での迷走
重いリュックを背負い、山道を登る大輔。しかし道は入り組んでおり、30分も歩かないうちに完全に迷子になります。
「どこやねん、山小屋…GPS全然つながらへん」
遠くに煙が上がっているのが見えます。近づくと古い山小屋を発見。
「すいませ〜ん、道に迷うてしもうて」
出てきたのは人の良さそうな老人・田中爺さん(68)。
「おお、麗子山学園の挑戦者やな。わし、田中や。まあ入り」
山小屋の中の罠
田中爺さんが温かいうどんと手作り漬物を出してくれます。
「実はな、わしもこの山で商売しとるんや。海外のリアリティーショーマニアに、挑戦者の映像売っとるんや」
壁には小型カメラが複数設置されています。パソコンの画面には「LIVE配信中 視聴者数2,156人」の文字。
「でも今回は特別やで。あんた、ええ子そうやからな。久美子はんの読心術、マジでヤバいから気ぃつけなあかん」
大輔がうどんを食べていると、だんだん意識が朦朧としてきます。
「すんません、ちょっと横になっても…」
覚醒の瞬間
目を覚ました大輔。田中爺さんの表情が豹変しています。さっきまでの優しい顔が、したたかな商売人の顔に変わっていました。
パソコン画面のチャットが流れます。
『関西弁少年キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
『これはバズる予感』
『美少年ハンター回は名作』
田中爺さんがニヤリと笑います。「今回は売れるで。『関西弁美少年の恐怖サバイバル』や」
大輔、わざと寝返りを打ちます。すると老人の顔が瞬時に優しい表情に戻ります。
「おじいさん、お手洗い貸してもらえます?」
「ああ、奥の戸やで。この縄、腰に巻いといて。山で迷子なったら命に関わるからな」
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