彼女をNTRれてから始まった学園一・地域一の美少女との偽装恋愛は、エッチで常識外れな演技と、まだ見ぬ真のヒロインが紡ぐ、世知辛くも甘い物語の始まりでした。
「アオハルの敗北者」は「永遠の敗北者」よ ※一部不快に感じる表現があるかもしれません
「アオハルの敗北者」は「永遠の敗北者」よ ※一部不快に感じる表現があるかもしれません
~米永陽香の視点~
責めれば晴人君て、自分が悪いって思うよね。分かっていたわ。
勉強を頑張り、趣味を頑張ることは何も悪いことじゃないし、その上で、私のことも考えて時間を割こうとしてくれていた。
──知ってる。
あなたの性格を。だから利用させてもらった。
色々言ったけど、本当は凄く単純明快なこと──刺激が欲しかった。そしてトップに立ちたかった。
何のトップか――スクールカーストの女子のトップの座。それがほとんど。
晴人君が勉強に力と時間を注ぎ、みるみるうちに成績を伸ばして行ったことは、最初は「あれ? 世界が違ってきているなあ」とは思って寂しい気持ちにもなったけど、それなりに限られた時間で二人の時間を作って、デートして「あーでもないこーでもない」を話し合っていたし、その翌週に彼が釣りに出かけて、あたしとは会えなくても別にそれを申し訳ないなあと思う必要はなかったのよ。あたしはそこまで一緒に居てくれなくていいから。
あの時とは違うから──あの時は、父親が離婚して出て行って、学校でも友人たちとの風見鶏みたいな顔色の窺い合いの付き合いに疲れて、あたしがちょっとキツいことを言ったり、SNS上で「もう面倒臭い」みたいなことを呟いたことが発端だったから。
その時にずっとそばに居てくれたのは嬉しかった。
愚痴の言い合いをして、「もっと自由になりたいなあ」とか叫んでみたりして、隣で微笑んでくれている晴人君が居たから心強かったし、クラスの「はみ子」同士仲良く慰め合って傷を舐め合うことができたから、それで良かった。
けど今のあたしは違うんだ……
時代は変わった。
晴人君に去年の夏ぐらいから、「あたし、また告白されて──」って言ったこと、2回ほど? あったよね? あれはほんの一部。晴人君は「陽香が断ってくれたんならそれでいいよ」っ微笑んで言ってくれてたよね。
けど……本当はあの頃ぐらいからもっと頻繁にあったのよ。特に今のこの髪型にする前あたりからは本当に凄いの。
晴人君、あんまり周囲とコミュニケ―ションをちゃんとしていないから分かってなかったんでしょうね。
自分の価値が分かって来たわ。晴人君は勉強を頑張って良い大学に行く。それが自分の価値理解だと思うの。あたしは自分を見つけた。自分の真価が分かった。そして今を生きることにした。
その辺りからかな……晴人君も気が付きだしていたよね?
あたしたちの関係がすれ違い始めたことを。
だってきっと晴人君は遠い未来のことを考えて勉強しているんだよね? 良い大学に行って良い就職先に就くために──
でもね、今を生きるということは、それだけじゃないんだよ。
晴人君は大人になること、刺激的なことをすることからは逃げていたよね。あれはあたしからすれば、「ああ、今を生きていないなあ」って思えたんだよ。
あたしはあなたと中学校の時に、「高校に入ったら付き合って徐々に徐々に大人の階段上ろうね」って言ったのに、一緒に登ってくれなかったよね?
──あたしはもう、登ったからね。だから、今のあたしにとって晴人君は申し訳ないけどずっとずっと下の存在に見えてしまうの。
そんなことよりも、もっともっとやんちゃな、世間では『とんでもない奴』って言われるような跳ね馬を、あたしの前ではあたしの言いなりにして、意のままに操縦してみたい。
きっとあたしにはそれができると思うの。だってこんなに男たちから告白されるってことは、それだけ魅力があるってことに違いないから。
博君を誘ったのはあたしの方からよ。
彼は本当にあたしと晴人君が付き合っていたことを知らないわ。
そもそも普通科の生徒と、スポーツ科、野球部の生徒がコミュニケーションをすることなんてほとんどないし、博君に至っては学内の人間関係図を気にすることなど無用の人間だから……無頓着なのよね。
博君はあたしからすればトロフィー。
『女』としての実力を試し、この学校で最高の乗り物を乗りこなせる優れた魅力のある女であることを証明するための、象徴的存在よ。
それに比べて晴人君……今の私にとって、あなたにはなにも感じない。勉強じゃあトロフィーにはならないの。
賢そうで中性的な超美形男子。ほとんど美少女の領域。だけどあんまり意味がないわ。
美形も何日かしたら飽きるっていうの、地で行っちゃった。
それに……もし晴人君と男女の仲になると想像した時に、彼はうまく私をリードできるかなって思った。何かと鈍臭くて肝心な時に転ぶタイプの男の子。正直嫌な予感しかしなかったの。
それをカバーしてあげれるような女の子であればいいけど、やっぱり初体験はもっとリードしてくれるほうが素敵だし、晴人君を待っていたらいつになっていたか分からないしね。
晴人君、あなたではなにかと力不足だったのよ。ごめんね……
あ、でももし──
あたしがくたびれてしまうことがあったら、また晴人君の元へ行くかもしれない。晴人君なら、あたしがテヘペロするか、怒って泣いて、必死に謝れば許してくれそうだもの。
最後に伝わらない、私からの言葉をあなたに……
「アオハルの敗北者」は「永遠の敗北者」よ。
~米永陽香の視点・終了~
※※
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